繋がれる手 六話
陽之介の押してくれる車いすに座って
私は感動していた。
「いつの間に?」
「驚かせたかったんだ~ビックリしただろう?」
「うん…すごく…」
「まだ…まだ…驚くよ……。」
「え?」
ホテルの人に
「よろしくお願いします。」
そう言うと 陽之介はチャペルのドアを開けて入っていった。
「え・・・・」
「新郎様はあちらでお待ちになりますから……」
ってことは私は一人で入場なのね…。
その時だった
「では…おねがいします。」
ホテルの人の声がして私は振り向いた。
そこには燕尾服を着た父が立っていた。
「パ…パパ・・・・・?」
「きれいだぞ。すごくきれいだぞ。」
「もしかしたら……賛成してくれたの?」
「あたりまえだ。
娘の幸せを願わない親はいないだろう……」
「ママは?」
「待ってるよ。
彼の誠実さに…おまえをまかせたんだ。
いい男だな。
それに気づくまで…ひどいことをしてしまった。
もっとちゃんと向き合ってれば……
でも…これが運命なんだよな。
きっと千夏も喜んでくれているから……
幸せにしてもらいなさい。」
涙がまた落ちた。
「お嫁さん…お化粧が落ちてしまいますよ。」
ホテルの人がまたファンデーションを叩いてくれた。
「では…新郎さまもお待ちかねですから…」
父が車いすを押そうとした時
私が
「パパと一緒に歩きたい」と言った。
「大丈夫か?」父が心配した顔をした。
「パパとヴァージンロード歩いて
彼のところに行きたい。」
私は立ちあがった。
扉が開いて オルガンの音
まっすぐ前には キリストさまと神父様
その前には 愛する陽之介の姿
参列者の席には 母が・・・・。
その後の席には 初音と・・・・それから
志摩ちゃんや真紀子……
数人の高校生の時仲良しだった仲間が6人来てくれていた。
「キャ~~~!!!」
みんなが手を叩いてくれた。
嬉しかった・・・・。
こんなに幸せなことはきっと一生忘れない
絶対忘れない……。
足元がもつれるけど そのたびに父がしっかり支えてくれる
「ありがとうパパ……。」
ママの横を通り過ぎる時 私は母に抱きついた。
「ありがとうママ……。」
母は声をあげて泣いた。
そして陽之介に父が 「よろしくおねがいします。」と言って
私の手を陽之介の手と
しっかり握らせて頭を下げた。
私は 溝端 陽之介の妻になることを
神の前で誓った。
愛し抜くことを
みんなの前で誓った。
真っ白なベールをあげて 陽之介と見つめ合った。