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激愛  作者: Lavia
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欠けた心 九話

嗚咽の響く部屋はもう真っ赤な夕日が入って来た。



「明日も青空が見られるね。

一緒に見ようよ……。」



「先生…」




「これからもずっとずっと・・・

二人で空を見よう・・・・。」




「バカじゃない?」

恵美は嗚咽に混じった声でそう言った。




「俺と一緒に生きていこう。」




恵美が大きな目をさらに大きくして



「やめてよ…」と言う。



「おねえちゃんのこと忘れられないくせに……

私を千夏だと思って抱くんでしょう?

無理…私には無理……

そんなこと言う資格ないのに……

でも無理なの……」




「あの時…三年前のあの時

すでにあの時 もう恵美は俺の中で恵美だった。

だけど千夏を裏切っているようで

そんな自分を許せなくて…いつも葛藤していた。

千夏を愛するなら必死に恵美を千夏の変わりにと

思いこませていたけど……

俺の中で生きて抱きしめられて

まっすぐに愛をぶつけてくれる恵美は…

俺にとって一番の存在になっていたんだ…。

だけどそれは千夏を裏切ってるという

罪悪感と紙一重だったんだ……。

俺もマジ辛かった……。

恵美のまっすぐな愛がいつの間にか俺を

一人の健康な男にしてた・・・」



恵美の嗚咽は止まらなかった。



「おまえが学と仲良くしているのが

余計に耐えられなくて

嫉妬している自分を軽蔑した。

あの中で恵美に似合うのは学のような子だと

思ったし…それがいいと

必死になって思うようにしてたけど…

俺には資格がないからって……

その葛藤から俺は逃げたんだ……。

愛してる女を置き去りにして……そして

忘れようと必死だったけど……」



恵美を抱きしめた。



「忘れられなかった。

向こうの青い空を見ながら

恵美に見せてやりたいとか…子供たちの

笑顔が最高に可愛くて

恵美にも教えてやりたい……

星がきれいだと

一緒にみたいって……

離れても想うのは恵美だった……。」




「先生・・・・・・」




「こっちに来て…会いたいと思ってたけど

今さら会う資格なんてないって…

だけど千夏の墓で恵美に再会したのは

きっと千夏が会わせてくれたからだと思った。

都合のいい考えかもしれないけれど

千夏も俺と恵美を許してくれてるって感じたんだ……。」



骨ばった恵美を強く抱きしめた。



「あの時俺にまっすぐ愛を注いてくれたように

かたくなだった俺の心がいつしか

恵美で一杯になったように

これからは俺がその愛以上のものを

恵美に注いでいきたい……。

そうさせてくれ……。

もう間違いたくないんだ……。

俺の人生に必要なものが…足りないものが

やっとわかったから…

時間をかけてゆっくり…

恵美の心を元気にしたい……」



恵美は子供のように声を上げて泣き出した。



「う・・・う・・・・・・」




「愛してる・・・。

愛してる・・・。

何千回でも・・何万回でも

恵美のために・・・そう言える・・・・。

運命なんだ・・・。

あの出会いの日から

俺と恵美が結ばれる運命だったから・・・・

今がある・・・。

違うか?」



「待って…ヒック…ヒック…

私はまだ…言ってないこと…ある…ヒック…」




恵美は俺の胸に顔を埋めて



「私は…ニ回も…赤ちゃんを…赤…ちゃ…

母親としても……ヒック…女としても…ヒック…人間としても…」



その後の言葉をかき消すように

俺は恵美の乾いた唇を奪った。



「ン………」時折苦しげに恵美が唇をずらすけれど

息を吸おうとしてる恵美の唇をまた奪った。




「ン~~…センセ…」




俺たちの愛に名前をつけるとしたら・・・・

それは



激愛



だと…思った……。




二人のなかの全てが溶け合うように

唇が感じ合う。



  愛してると・・・・・



欠けた心はお互いの心が合わさったように一つになった。



「もう…離さない……。」




「陽之介・・・・・」

恵美が先生と言わなくなった。



それが返事だと俺は確信した。



「幸せになろうな・・・・みんなの分・・・・

きっと応援してくれる・・・・」



激しいキスはいつしか 甘いキスとなり 乾いた恵美の唇が

柔らかく潤いだしたのを感じた。


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