さまよう心 八話
「ママ・・・」
私はベットの横に座って居眠りする母に話しかけた。
「ん?何どうかした?」
母は慌てて私の顔を見た。
「帰っていいよ・・・・。
仕事大変なんでしょう?」
ひさしぶりにまともな話しのできる娘に
驚いたのか
母はにっこりと笑った。
「大丈夫よ・・・・。ごめんね・
もっといてあげたいのに……。
こんな時間しかいられなくて……」
「ごめんなさい・・・悪い娘で。」
「何を言うの・・・・。
大切な娘なんだから・・・・。
私の方こそあなたが我慢してるの気づかなくて
いつもあなたを一人にしてきて・・・・。」
「今日は…高校の先生に会ったの
子供が病気でずっと入院してるんだって……
すごく可愛い子でなんか…癒された・・・・」
「そう・・・・。」
「今日は長く外にいたから疲れちゃった…。
早く寝るから…ママも私が寝たらすぐ帰って
家でゆっくりしてね。」
「ありがとう」
ママはそう言うと私の背中を優しくなぜた。
そのまま私は眠りについて・・・・・
夢を見ていた。
青い空の下で私は走っていた
彼のように子どもたちに囲まれて走っていた。
笑ってる私
そんな夢を見るのは久しぶりだった。
目がさめかけた時・・・・病室のベットの明かりが目に入った。
しくじった・・・まだ朝じゃない・・・
私は寝つく時 暗闇が怖かった。
誰かがいないと夜眠ることができなくて
薬飲んだのに……
ガッカリしながら目を開けると
私の目のまえに・・・・彼がいた。
「え?私…まだ夢見てるの?」
思わずそう口走った。
彼は笑いながら私の額に手を置いた。
「やだ・・・・なんでここにいるのよ・・・・。」
私は顔まですっぽりと布団をかぶった。
「帰って・・・・。
会いたくなかったのに・・・・・どうして来たの?
同情なら いらない……お願い…帰って……。」
心臓が苦しくなった。
心がもう片方を呼んでいる・・・・・。
「お願い・・・こんな情けない姿・・・
忘れて…見なかったことにして………。
それが私にとっての一番の願いだから……」
息切れして胸が苦しくなった。
会いたかった・・・世界で一番会いたかった
そう言って抱きついたら
一瞬だけでもこの闇の世界から解放されるのに・・・・・
「うん・・・」そう言って彼は優しく微笑んだ。
山岸先生の言った通り彼は少し変わった気がした。
帰らないで
その瞬間 さまよっていた心が欠片が
一つに戻った気がした。
「帰って・・・・」もう一度言った。
帰らないで・・・・心が叫んだ・・・・。
「わかったよ」そう言った彼に少し傷ついた。
どっちなの?
でも彼は・・・席を立たなかった・・・・・。