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激愛  作者: Lavia
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さまよう心 七話

「いいお天気ですね~

恵美おじょうさまは 夏が大好きでしたね。

もう空が真っ青でしょう?」


初音さんは私に話しかけながら車いすを押す。



私も空を見上げて夏を感じた。



少しだけ気分がよかった。

青は大好きな色だった。


濃けば濃いほど心が癒される・・・・・。




車いすの子供と目が合った。



人懐っこい目が私に微笑んでくれたけど

私は顔の筋肉が強張ってうまく笑えなかった。



 そういえば私…どのくらい笑ってないだろ



「あら~可愛いおじょうちゃんね~

二歳くらいかしら~こんにちわ~」


初孫が生まれた初音さんが

膝を折って子供に声をかけた。


子供は満面の笑みを浮かべていた。



モデルのような本当に可愛い赤ちゃんで

私もその子にくぎ付けになっていた。



「あ・・・・小山内・・・さん?」車いすを押している女の人が言った。



私は驚いて 顔をあげた。



  山岸先生?・・・



「小山内さん!?どうしたの!?」


驚いた様子の山岸先生が私を覗き込んだ。



私は顔をそむけた。



「私も子供が病気なの・・・・。

それでここに入院してるのよ……。

もうずっと……こうしてここで季節を感じてるの。」



「おじょうさまのお知り合いですか?」初音さんが聞いた。



「ええ…高校の時 小山内さんとは

関わりがなかったのですが一応教師だったんです。」


山岸先生は少し疲れた顔で笑った。




「あら…おじょうさまの・・・」初音さんが頭を下げた。




「可愛いおじょうちゃんだこと~」



山岸先生の子供はニコニコ笑って私を見ていた。




初音さんは自分も孫がいることもあって

先生の子供と遊びだした。



「彼・・・帰ってきてるの知ってた?」 先生の言葉にドキンとした。



「テレビで見たけど ほんと輝いてたわ・・・・。

彼が子供たちに囲まれて笑ってるの見たら…ほんとに

彼は人生を楽しんでるってことがわかったわ。

あんな彼を見てたら 彼の選択は間違ってなかったんだってやっとわかった…」



私はその言葉を聞きながら青い空を見上げた。



「ここで見てた彼は・・・いつもなにかを憎んでて

関わりすぎると氷のように心を閉ざして……

だけど…この間見た彼は 格好はワイルドだったけど

熱さが伝わってきた…。きっと幸せなのよね……。

私は彼を幸せにはできなかったってことよね・・・・。」



  私もだっていいたいの?



「娘が病気だって知って 自分の選んだ道が間違いだったのかって

いつも悩んでいる。私が間違わなかったら娘は

こんな小さな体に針を刺される毎日じゃなかった…

だって生まれてこなかったんだもん……。

クヨクヨしたって仕方ないんだけどね……

小さな体で治療に耐えてる姿見るたびに胸が潰されそうになる……」



先生は悲しそうに笑った。



初音さんがあやすと女の子は声を上げて笑った。



脇にぶらさがっている点滴に 針を固定する包帯が痛々しかった。



「それでもこの子は生きたいって言ってるんだもんね…

私の選んだ道…私の可愛い娘…

だから…笑ってなくっちゃ私も……

彼を見てそう思ったわ。」



先生の話を聞いてたら泣きたくなった。



女の子はにっこにっこ笑って 病気だなんて思えない笑顔だった。



「先生・・・」私はようやっと声を出せた。



「ん?」山岸先生はニッコリ笑って私を見た。




「愛する人がいるって幸せなことですね……。

娘さんはママの笑顔のため

ママは娘さんの笑顔のため……

一緒に頑張ってるんだもん……」




「そうね・・・。

自分の命より大切な宝物だから……」




「娘さんの笑顔最高ですね・・・」



「うん…ほんと・・・」

先生はそう言うと泣き出してしまった。

私もこらえきれずに泣いてしまった。



青い空が・・・

先生の子供の笑顔が 少しだけ私を癒してくれた。

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