さまよう心 五話
死にたい
私はそう思うようになった。
生きる気力を失った私は
食事さえとれずに衰弱していた。
きっとあと二週間・・・・・
この状況が続けば 私は楽になると思った。
「めぐ・・・お願いだから食べて・・・・・」
母が泣いても
父が叱っても・・・・・
ただうつろに寝たり起きたりを繰り返して
とうとうまた入院した。
悪夢の変わりにおかしな夢ばかり見た。
彼の夢が多かった。
悲しい夢
気持ち悪がられて 罵られる夢
キレイな女の人に取られる夢
そのたびに私は泣いていた。
夢か現実か私にはわからなくなってしまった。
点滴の針を抜いてしまうから
体を固定された。
介護士と母と初音さんが24時間そばにいて私を監視した。
「ママ・・・・」
「どうしたの?めぐ……」母は私の手を握った。
「お願い…死なせて……。
もうこの世に想い残すこともなくなった…」
「何言ってんの。まだ21だよ。
これからきっと新しい人生が見つかるかもしれないでしょ?」
「もういいんだもん……。
彼以外の人を好きになれないから進を
殺しちゃったんだもん。」
ママはため息をついた。
「どうして姉妹で同じ男を愛するの?
あの男じゃなきゃ…ダメなの?」
「運命だから・・・・
おねえちゃんも私も彼を愛する運命だったんだよ。」
私は顔をおさえた。
「ママ…ごめんね……。
言う事効かないで・・・・・・。」
「どうしてなんだろうね……」
静かな時が私と母の間を過ぎていく・・・・。
陽之介きっと驚いただろうな
失望したかな
あの時私を捨てて正解だって想ってるだろうな・・・・。
「死にたいよ・・・・・」
涙が伝わって枕に落ちていった。
私の言葉だけが病室に虚しく響く。