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激愛  作者: Lavia
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灰色の空  十話

「おまえさえ…俺をしっかり捕まえてくれれば…

おまえが全部悪いんだ……。」



「ちょっと…何言ってんの?なんで私が出てくるのよ……」



「おまえが俺を愛さないからだ……。」



タバコと酒がまじった悪臭が進の口から出る。



「おまえが…愛してくれないから…寂しかったんだ……。」



「だっていつも言ってたじゃん?

束縛するな…俺に特別な女はいらないって……

勝手なこと言わないでよ…客とかと好き放題やってて……。」




頬を打たれた。



「うっせんだよ……。

おまえを抱く時 なんで俺が俺の名前を呼ばせんのかわかるか?

おまえは俺に抱かれながら他の男の名前を呼ぶんだ……

この屈辱おまえにはわかんねーだろーな……

おまえは夢中だからさ……。

他の男の名前を言いかけて……

俺はそのたびに…その名前に嫉妬する。

これだけ何百回もおまえを抱いてんのに……おまえはいまだに

その名前を…言いかけては俺の名前を呼ぶんだ……。

俺にだってプライドがあっからな……。」



進の膝が私の腹に入った。


「う・・・・やめてよ・・・・」



「いつ俺を愛してくれんのかと…期待したけどよ……

おまえは俺を愛するのあの字もなく……

今度は仕事に没頭し始めて……本気にならないおまえは…

うまく客を転がして…あっという間に

俺よりずっと稼ぐようになったんだよな・…」



そして膝が腿に入って私はうずくまった。



「すす…やめてって…痛いから……」

私は必死に進に訴える。



「全部…テメーのせいだ…

テメーが俺の…俺のプライドも人生もめちゃくちゃにしたんだ!!」



今度は頭の上に衝撃が走った。



それから私は進の暴力にさらされた。

最初は必死に手で自分を守ったけど…守ることもできないくらい

体が心がズタズタになっていって

最後は打たれても痛みさえ感じなかった。



地獄の時間が過ぎて やっと進が私から離れてテレビをつけた。



もう進は壊れてしまっている。



半分しか見えない視界が明るくなって

画面はニュースを読むアナウンサーが写っていた。



  助けて…これ以上やられたら…死んじゃうよ……



しかしアナウンサーは非情に淡々とニュースを読んでいる。



次のニュースにうつったのは 海外の貧しい地で

復興のために働く外国人の姿だった。



  おめでたい人達ね…自分の国にもこうして死にかけてる奴がいるけどね



それからスタジオに絵が写った。

悲惨な貧しい国の現状をつたえながら

アナウンサーが声にした。



「溝端 陽之介さんにおこしいただきました。」



  み…みぞばた…よ…う…のす…け…



愛おしい名前の響きに私は必死に閉じかけた目を開けた。



テレビにうつった

その人は真っ黒い顔をして眩しいくらい白い歯で笑っていた。



  陽之介・・・・?


その時 進がまた私の上に馬乗りになった。



  殺される・・・・



愛しい人の声を聞きながら 私は固く目を閉じた。


進はぐったりとしている私を裸にしていった。



「やだ…やめて………」


テレビの中にいる愛する人の前で…こんな姿を見られたくない…

だけどもう体は自分では何もできないくらい

動かなくなっていた。



ただ悲しいことに哀れな快感だけは…私を別の世界に引き込んで行く



「やりがいのある毎日です。自分で選んだ道を

後悔はしていません……。これからもきっと……関わって生きていきたいです。」



彼の声を聞きながら…彼に抱かれている錯覚に陥った。



「愛してる……愛してる……ヨウ……」



そしてすべての動きがとまって恐ろしいくらいの静けさが

私を恐怖感に導いていく……。


次の瞬間に何が起こるのか……

これで私の人生は閉じられるのか……

どんな痛みを最後に感じるのか……




「おまえって…サイテーだな……。」



恐ろしく低い声で進が言った。



テレビの音は天気予報に変わっていた……。



私は深呼吸をして 最後の時を待つ・・・・・・。




進がキッチンナイフをちらつかせていた。



  刺されるんだ……



最後に彼にもう一度だけ…会いたかったな……

でも…テレビで彼を見れたのは神様からの最後の贈り物だったのかも……



目を閉じた・・・・・




「ウッ!!!!」進の声がしてその瞬間

生ぬるいものが体中にかかった。



  え・・・・・・?




そして次の瞬間 進の体が私に覆いかぶさって来た。



  血・・・・・・




「キャ~~~~ッ」



進はうめき声をあげながら苦しんでいる。



「すす・・・・進!?何したの!?」




「お…れ…だって…おまえを…ずっと愛して…いた…

おまえが…離れるのが…い…やで…ずっと…ずっと…嘘ついて……」



鼻先に感じる生臭さにはきそうになる



「進!!病院!!!早く・・・・どけて・・・・」




「めぐ…あ…い…し…てる……」




まだ血が流れているのに

進は動かなくなってしまった。



  助けて・・・・



進の返り血を全身に浴びて 私は恐怖感でいっぱいになっていた。



「助けて・・・・助けて・・・・・

死にたくない・・・・彼に…・会いたいのぉぉぉ~~~~」



私はそのまま気を失ってしまった。

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