五話
「先生…先生…死んじゃう……」
あまりの激しいキスに興奮しすぎて私は 彼から唇を離した。
「苦しい……ハァ・・・ハァ・・・」
息を整える私を彼が優しく抱きしめてくれた。
「すみません…上手に…ハァ…キスできなくて…
初めてで…どこで息を吸ったらいいのか…ハァ・・・ハァ・・・」
「ごめん…ごめん…
最初からとばしすぎたね……。」
彼が私の髪の毛を優しく撫ぜてくれた。
「先生…」
「あ…ここでは先生は禁止にするかな。
なんか悪いことしてる気がして落ち着かない…」
「なんて…呼んだら…?」
「溝端 陽之介…恵美の好きなように呼んでいいよ。」
あ~夢みたい…夢ならさめないで~
「先生…あ…でも先生の名前…呼びづらいです…。」
「いいよ~なんでも~新しい名前つけてくれていいし…」
「ん~~~~」私は頭を抱えた。
「大事なことだから少し考えます。」
私がそう言うと 彼は笑って
「その間に着替えてくるよ。冷蔵庫にジュースがあるから
勝手に出して飲んでていいよ。」
そう言ってリビングのらせん階段を登っていった。
「あ~なんて呼んだらいいのかな……。
今までの恋人が呼ばない呼び方がいい…。
私だけしか呼ばない名前……。」
彼の顔を思い出す。
もうそれだけで胸がときめく……
色っぽい つり目のちょっとキツネ顔の彼……
その時 なぜかおねえちゃんの恋人の手紙を思い出した。
”Konta”
私はその瞬間…決めていた。
おねえちゃんの恋人と同じ名前にしよう……。
「こんた・・・・こんちゃん・・・こん・・・」
どうしてだろう……
つり目の彼に無理やり こじつけておねえちゃんの恋人と同じ名前にした。
いいよね?おねえちゃん……
そう彼を呼んだら 少しだけでも
おねえちゃんに近づけそうなそんな気がしていたんだ あの時……。