灰色の空 九話
まとまった金を渡すと 進は帰ってこなくなる。
断りきれずにもうずいぶん進に貸してしまった。
私はフロンティアと言う店で 杏樹という名で働いていた。
そこのオーナーを進から紹介されて
ずいぶん世話になっていた。
引き抜きは何度も来てるけれど オーナーに恩もあって
それにこの店が けっこう好きだった。
「杏樹ちょっといいか・・?」
ある日 オーナーに呼ばれた。
「クリスはどうしてる?」
「最近 帰ってきませんけど……。」
「ちょっと聞いた話だが…かなり金に困ってる様子だとか
おまえも貸しているのか?」
「あ…はい…もう150万くらいになります……。」
オーナーが頭を抱えた。
「バカだな……。
あいつ悪い女にひっかかってるみたいだぞ。」
「客ですよね・・・・。」
「クリスのいたホストクラブのオーナーからも聞いたが
店にもかなりの借金とか同僚ホストからも
借金してる様子だぞ。」
「店?オーナーに前借した分を返すって
最初にお金を貸したんだけど・・・・・」
「女に貢いでるらしい……。
女のバックには……ちょっとヤバいのがついていて
かなり街金とかにも借金しまくってる様子だぞ。
杏樹…もうクリスは終わりだから
しっかり断った方がいいぞ。」
私もおかしいとは思っていたんだ……。
それから半月した頃
仕事から帰ると 進の靴があった。
私は背筋に冷たさを感じながら 部屋に入っていくと
部屋の中がめちゃめちゃになっていた。
「キャ~~~」私が悲鳴をあげると
進が飛んできて
「ごめん…ごめん…探し物してたんだって……。
こんなに散らかすつもり…なかったんだけど・・・・
ね…めぐ…金貸してよ……。」
半分座った目が私を恐怖感でいっぱいにした。
「もう無理だから…150も貸したのよ?
いつかえしてくれんの?」
私が言うと進は案の定 狂ったように笑った。
不気味な笑いが部屋中に響き渡った。
「金ないと・・・・殺されるよ・・・・」
「どうして?そんなことになっちゃったの?
何にお金つかってるの?
働いてないの?進は働くの好きだったじゃん……」
「おまえが俺をしっかり捕まえてないから
こんなことになったんだ。」
進は私を壁に押しやった。
恐怖感で体が震えた・・・・・・・。