灰色の空 ニ話
「小山内…おまえどうするんだ?」
担任が言う言葉はいつも同じだった。
「何もしません……。
卒業したら…どこかで雇ってくれるとこで
仕事をして…それでいいです。」
「もったいないな。
国立だっていけるんだぞ?
就職の方がおまえには難しいぞ。」
「先生~私は若いんだから……
今しかできない仕事だってあるし…
大丈夫ですって~」
「小山内……。
おまえ自分を大事にしろよ。」
「ありがとう…先生……。
でも…いいんです。
こんなできそこないの人間は…高望したら失望するだけです。」
「小山内…おまえはできそこないなんかじゃないだろう?」
「死んだ人間にも勝てない・・・
できそこないです。
誰にも愛されないし…誰も愛しません。」
担任は困った顔をした。
「いつも気にかけてくれて先生……
ありがとうございました。」
私は頭を下げた。
志摩ちゃんも私立の大学に推薦で決まっていた。
彼氏も一緒の大学でとても喜んでいた。
私は自分が哀れだったから
志摩ちゃんの純愛を見ながら心を癒していた。
「めぐ……私ね…途中から
めぐのことわからなくなったの……。」
「途中?」
「中学の頃 クラスは別だったけど私 めぐと
友達になりたいってずっと思っていたの。
高校に行って同じクラスで嬉しかったけど…途中でめぐが
急に大人になっちゃって……ついて行けなくなった。
だって何も話してくれなかったから……寂しかったよ。」
私は志摩ちゃんを抱きしめた。
「私は志摩ちゃんが大好きだよ。
今は志摩ちゃんを見てると心が和むの……。
好きな人のことで 喜んだり泣いたり 志摩ちゃんは輝いてるよ。」
「私はめぐが心配なの。
相変わらず何も話してくれないし……
どんどん遠くに行ってしまうようで…本当に心配だよ。」
「ありがと…心配してくれて…
志摩ちゃんだけだよ……。」
「何言ってんの。私の彼氏だって真紀子だって美和だって…
王子だって…みんなめぐを心配してるんだよ。」
「そっか・・・・。
ありがとう・・・・。みんなにもお礼言わなきゃ…」
「お礼なんか…友達じゃん……。
めぐにも幸せになってほしいのに……。
めぐが本当に悲しそうに見えて…心配なの……。」
私は志摩ちゃんのシャンプーの香りがする
髪の毛に口づけした。
「志摩ちゃんの幸せ見てたら
私も幸せな気分になるよ。」
「めぐだって幸せになる権利あるんだからね……。」
私は志摩ちゃんを抱きしめた。
「幸せになる…権利か……」
他の人とは決してつかめない
私の権利・・・・・・・
彼が消えて 私の空は灰色に変わった。
時が過ぎて 私は自分で自分をボロボロにしていった。
彼がいなくなって私はあの日 死んだんだ・・・・・。
心が半分なくなって……
彼を追いかけていなくなったキレイな心を待ち続けて
私はどんどん汚れていく。
進がホストで稼ぎが増えて 中央区のマンションに越すことになった。
卒業したら私もそこに住むつもりでいた。
そして就職先はもう 進が決めてきてくれた。
「そこのオーナーは俺のいいお客なんだよな~
おまえはいい女だから絶対もうかるぞ~~」
「じゃあそこでいいわ。」何も詳しい話も聞かずに就職先に決めた。
金をたくさん稼いで…自立する……。
それには手段は選ばない。
私は夜の世界に身を任すつもりでいた。
進が店の客と どんなことを店を出てしているのかは
想像はついたけど それもどうでもよかった。
他の女を抱いた体で 私を抱いても
その時だけ夢中になれるならそれでいい……。
穴のあいた心を 進が忘れさせてくれた………。
誰でもいいんだ……
愛を望まない男がいい・・・・・・・私はそう思った 。