彼の存在 九話
「俺さ~ここもう少しで終わるから待っといて~
そんとき肉まんやるからさ~~」
私もまだ男と話したい気分だったから
立ち読みをしながら男が終わる時間まで待っていた。
外の窓ガラスをトントンとして男が外に立っていた。
いつの間に・・・・・
「ほら…肉まん~~」
男が肉まんを差し出した。
「ありがと…」
私は袋から湯気の立った肉まんをとりだすと
男はすでに自分の肉まんにかぶりついていた。
「腹へってたんだ~~ぁ生きかえるぜ~」
「ここで働いてんの?」
「ここだけじゃねーぞ~これから着替えて
夜の街へくりだすんだぜ~」
「ホストしてんでしょ?」
「なぜわかった?」男の様子がおかしくて私は笑った。
「なんかドラマで見たのと同じ感じだから~」
「マジ??俺もいたについてきたんだにゃ~」
男の名前は
クリスと言った。
「クリス?ってさっき名札に栗島って書いてあったよ。」
「気にすんな~」
「おもしろい奴だね~~」ひさしぶりに笑った。
「気軽に笑うなよ~俺はホストでもNO1かNO2を争う男だかんな。
こうやって一緒にいてやるだけでも金かかるんだぞ~」
「へ~~ホントに~~」
そう話してる間に家が見えてきた。
「あ・・・うちそこだから~」
「え?どこ?」
私が指をさすとクリスは目を丸くした。
「あの豪邸のおじょうさまなん?べっくりしたな~~」
大げさに驚いた。
「豪邸に見えるだけよ。
中なんてクソだから~~」
「クソって可愛い顔して言うなよ~~」クリスが胸をおさえた。
「おもしろい人~
ひさしぶりに笑わせてもらったよ。」私は笑いすぎた目を拭いた。
「また会いにこい。コンビニは月火金日の一時から五時までだからな~~」
クリスはそう言うと足早に去っていった。
クリスか……
なぜだかまた会いたいって思わせるヤツだと思った。
その出会いが私を大きく変えていくとも知らずに……。