彼の存在 六話
それからしばらくして私は学校に戻った。
彼のいない学校には 何の思い入れもなかったけど
でも彼のいた形跡を探しながら
私は視界に彼の姿を想像する。
顔が思い出せなくて
スーツ姿の後姿を殺風景な視界の中に想像した。
「めぐ?聞いてる?」志摩ちゃんに背中を叩かれた。
「え?ごめん…」
「最近変だよ・・・・。それでね学とはどうなったの?」
「学?ううん~あれからそんなに話してないかな~」
「うちの彼が言ってたよ。
学はかなり本気だって~~~」志摩ちゃんに彼氏ができた。
「うれしいけど…今はちょっと重いかな……」
「贅沢ね~みんな王子と付きあいたいのに……」
学にも早く違う恋を見つけてほしい
私には今 重すぎるから
「なんか~~軽い恋がしたいな~~~
一回きりでいいの……全部忘れられるような恋
自分が自分じゃなくなるような軽い恋がしたい~~」
「軽い恋???ずい分わかんないこと言うのね~
めぐって大人ね~」志摩ちゃんがどついた。
そう・・・・
その瞬間だけ 彼を忘れられるなら
でも彼のことは一瞬忘れるだけで
またずっとこうして彼を想うだけでいい時間を過ごして
でも辛くなったら
他の男にすがるんだ・・・・・。
志摩ちゃんが言ったように
大人の恋すぎるかな
そんな毎日が過ぎていく
会えなければ会えないほど
彼への気持ちで心がいっぱいになっていく・・・・・。
どうしてるの?
あなたもこの星空を見てますか?
私を思い出してくれてますか?
まだ私の半分の心は彼を見つけてはいない・・・・・・。
あれからおねえちゃんの部屋にははいらなかった。
仏壇も素通りした。
親とも必要以外の会話をしなかった。
初音さんとちょっと会話する程度
休みの日は自分の声がどんな声か忘れてしまう……。
だけど…それでよかった……。
彼に会えないなら……このまま忘れ去られて雪に埋まってしまいたと思った。