傷ついても愛 十話
学校の前で母につかまった。
「いい加減にしなさいよ。」 母
「そっちこそいい加減にしてよ。」
「あんたが学校に行くと 困るのはあの男だよ。
大人しく私たちの言う事きかないとあの男は学校に来れないんだから。」
・・・・・・・
その言葉に足がすくんだ。
とりあえずこうしてみつかってしまったし
またここでもめるのも恥ずかしかったから
私は仕方なく母のことばに従った。
横目に学校を見ながら
私はどうして家に戻るのだろうと思った。
それでも今日は彼に会えたから……
私はまだそんな気分でいた。
愛おしい人・・・・・・・
彼を守るためには 学校に来てはいけないんだろうか
でも・・・・
毎日彼に会うとしたら 学校しかない……。
私はいったいどうするべきなんだろう。
その夜から吐き気と下痢と熱にうなされた。
口にものを入れると水でさえも激しく嘔吐した。
苦しかった。
ジッとしてると彼のことばかり考えていた。
携帯を取り出して彼にメールをしようとしたら
圏外になっていた。
「あれ…なんで圏外?」
母が携帯をとめてしまっていたことに
具合の悪さに すぐには気づかなかった。
「おかしいな……」
強烈な具合の悪さで 脱水症状を起こして
入院することになった。
ついてない・・・・
病院の真っ白な天井を見つめて 24時間点滴にしばられた。
彼に会えないならこのまま死んでもいいよ
病院は私を気弱にしていく………
彼は…今頃何してるかな……
私に少しか会いたいって思ってくれてるかな……
腸に細菌が入ったのと同時に 肝機能が低下してると診断されて
私の入院は長引いた。
吐き気がおさまった頃には わけのわからない脱力感で
トイレに歩くのも辛くなった。
このまま死んじゃったりして…
本気でそう思うほど 具合が悪かった。
そんなある日のこと私は眠っていて…付き添ってくれてる
初音さんが誰かと話してるのを聞いていた。
夢の中で聞こえるその声は……
「おじょうさまの先生ですか?」
「はい。入院してると聞いたので……突然押しかけて…
あの…このことはご両親には……」
「わかってます。おじょうさまが
あなたに会われて元気になるなら…今眠ってますけど…
おかえりになる時 ここに電話下さいね。」
初音さんはそういうと廊下に出ていった。
彼だ……
嬉しくて目を開けたくなったけど…少し寝たふりをした。
彼の指が私の頬に触れる…そして額にかかっていた髪の毛を整えた。
それから指は唇に触れて…それから耳たぶに触れた。
「恵美…寝てんのか?」優しい声にますます目が開けられない
鼻先に彼の冷たい唇が触れた。
心臓がものすごい速さで脈打っている。
それから頬へ……そして唇に触れた。
目を覚ましたら現実に戻されそうで…このまま寝たふりをしてたら
もっと幸せな気持ちになるような気がして
私は必死に寝たふりをしている。
耳たぶを噛まれた時は 思わず体をよじった。
「フフフ・・・寝ててもここは弱いのかな……」
そうあの甘い時を過ごしてた頃
彼が耳たぶを噛むと 私はくすぐったくて声をあげた。
私はその快感を必死に耐えている。
「早く…よくなれよ……。」
点滴されている腕を指がなぞる。
「可哀そうに……こんなに青くなって……」
点滴が漏れた青く変色した腕に 彼の唇が触れる。
その時 初音さんが戻ってきた。
「大変です。社長が戻ってきますから…早くお帰り下さい。」
「わかりました。ありがとうございました。」
「おじょうさまにお伝えしておきますね。」
「いえ…このことは彼女にも言わないで下さい。
もし知ってまたご両親ともめるといけないから……」
「そうですか…きっとあなたに一番に会いたいと思いますけど…」
「また時が過ぎてそれからでもいいです。」
「わかりました。また来る時はさっきの電話に連絡下さいね。」
ドアがひらいて彼が出ていった。
またきっと…来てくれる…
私は確信していたから……そのまま最高に幸せの絶頂のまままた夢の世界へ戻っていった。