傷ついても愛 五話
「先生・・・私学校に来たいの……。」
涙が溢れた。
クラス中が可哀そうだとかひどいとか騒然としていた。
「わかってる。俺たちもそうしてもらうのが一番だと
思っているからわかってもらえるように頑張ろう。
今日は帰った方がいい。
わかるよな?」
いつも厳しい体育の先生が優しく言った。
私はうなずいて 帰り支度を始めた。
「心配かけてごめんね。」教室を出る時 みんなに頭をさげた。
「俺たちもできることあったら応援するから。」学がそう言った。
みんなも大きな声で
「頑張れ~~」と言ってくれて私は嬉しくてもう一度頭を下げて廊下に出た。
とぼとぼと先生たちに両脇を抱えられて
廊下を歩いた。
「とりあえず 職員室に行こう。」
体育の先生が言った。
彼に会いたい……
ハッとして
「溝端先生は・・・・・?」私は先生に聞いた。
「今・・・・理事長室で小山内の両親と話してるよ。」
「うちの親と!?」その言葉に私は理事長室に向かって走り出した。
「おい!!小山内~~~!!」
逃げ足は速いんだ。
また彼を追い詰めに来たの?
どうして・・・彼の高校入学やおとうさんの異動や・・・・
人生狂わせることたくさんしてきたのに
まだ彼を苦しませるの?
おねえちゃんは幸せだったって言ってた。
こんたに会えて毎日が楽しかったって言ってた
それなのに・・・
それなのに
どうして彼だけ苦しめるの・・・・・・?
私は最後の階段を二段抜かしで登って 一番奥の理事長室のドアを
思いっきり開いた。
両親は背中を向けて
彼と理事長は驚いた顔で 私を見た。
「何しに来たの!?」私は怒鳴った。
彼は私の顔の様子に 茫然としていた。
「ちょ・・・・何その顔は・・・・。」母が声をあげた。
「パパに殴られたから・・・そんなことも
知らないの?」
父も唖然としていた。
「おまえすぐ飛び出して行ったから……
わるかった……目にあたったのか……病院に連れて行かないと…」
父は動揺している。
少しだけ可哀そうになったけど
今はそんな場合じゃない。
「先生をどうするつもり?」
「やめていただかなければ 学校への寄付金もやめるし
恵美を他の学校に転校されると言ってるだけ。」
母はもう…狂った鬼のようになっている。
「会社経営をしてる常識人とは思えないわ…。
社長はエライから人の人生も狂わせていいんでしょ?
寄付金やらないとか 先生をやめさせるとか……
脅しでしょ?そんなことばっかやってきたからね……
おねえちゃんが罰を受けて死んだんだわ!!」
「め…恵美……あんた親に向かって……
千夏が死んだのは私のせいなの?」
「そうよ。あの時幸せになりなさいって背中を押してあげたら
今頃 おねえちゃんは幸せだった
愛する人と愛する人の子供に囲まれてきっと笑ってた。
パパだって
ママだって
可愛い孫に囲まれて幸せだったろうし
私だって千夏にそっくりな妹じゃなくて……
小山内 恵美として…普通に生活して…普通の恋をして
自分だけ愛してくれる人と結婚して…家庭を持って………
今より何百万倍…何千倍幸せだった!!
こんな悲しくて切なくて苦しい思いしなくていいんだもん……」
腫れた目の視界は半分でも・・・・
私の視界にはあなたしかいない・・・・・。
あなたを守るためなら…なんでもできる……
だからそばにいて
近くにいて一番遠くにいる人でも……
私の視界の中にいてくれるだけでいい………
それ以上は望んだりしないから・・・・・・・。