愛するという事 八話
「失礼よ!!何するの先生だよ!?」 私はそう叫んだ。
一瞬母は ひるんだけれど
また怖い顔で彼を 睨みつけた。
「なんであんたが先生なんかやってんの?あんたみたいにクズが
この学校で生徒に何を教えてるの?
うちの千夏がなるはずだった夢を なんであんたが叶えてんの?」
「千夏と一緒に将来を見てたから。」彼の表情は氷のようだった。
「なにが…?あんたになんの将来があったのさ。
喧嘩に明け暮れたチンピラのくせに 気どった顔で先生なんて
それも恵美の近くにいるってどういう事なの?」
機関銃のように母が怒鳴り続ける。
「あんたが余計なこと恵美にいったんでしょ?
恵美はいい子だった 千夏と同じ
あんたに出会うまでは二人ともいい子だったのに
恵美まで変えてしまうの?私たちへの復讐のつもり?」
「ママ!!ひどいわ。先生には関係ないじゃない。
私とママたちとのことでしょ?もう帰ってよ!!
仕事忙しいんでしょ?今まで見向きもしなかったくせに
朝のことで動き出したんなら またおねえちゃんのせいだ!!
あんたたちは 私のことなんてどーでもよかったんでしょ?
先生のせいにしないでよ。」
私はテーブルの上にあったプリントを母に投げつけた。
「恵美!!!」母が私の頬を殴った。
「サイテー……死んだ人の部屋を片付けたって私の部屋なんて
片付けたこともないくせに………
だから嫌いなのよ!!あんたたちも……
おねえちゃんも!!私は生きてんのよ!!!私を見てくれたことあった?
見てないじゃん!!!」
「とにかく…理事長先生にお話してくるわ。
溝端は教職員にはふさわしくない。この立派な校風には似合わないって……。
私はあんたを陥れるならなんでもやるわよ……。」
「じゃあ…殺しますか?
あなたたちが父を死に追いやったように…手をよごさずに
周りからゆっくり追い詰めますか?」
彼の顔は完全に冷酷な顔に変わっていた。
「千夏と子供を殺したのも…あなたたちです……。
俺から大事なものを奪ったのは……あなたたちですよね?」
母がキーーーーッと顔をくしゃくしゃにした。
「恵美 学校やめなさい。
違う学校に転校しなさい。」
「な…何言ってんの?」
「この男がやめないなら 学校に来させる意味もないわ。」
担任も困り果てた顔をしていたが
「まずはご家庭でもう少しよく話合って下さい。
私も今回のことを校長と理事長に伝えますから……」
そう言って彼と母の間に割って入った。
ママなんて大嫌い・・・・・・。
私から……大事なもの奪ったら許さない……。
私は こんなに親を憎いと思ったことはなかった。




