白いうさぎ 八話
「あ…やっとあと五分だね。」
私は時計を見てそう言った。
「五分?もう五分しかないんだ……」
王子はそう言うと自分の時計を見た。
「しかって…もう疲れたわ……早く教室入りたい……」
人の気配に顔をあげた。
彼が向こう側から歩いてきて私と目が合った。
一瞬 絡み合う視線
王子が会釈したから 私も慌てて会釈した。
「授業遅れたんだ?」そう言うといつもの冷たい彼に戻ってしまった。
「はい。」王子が返事をした。
彼はそう言うと去っていった。
私は彼にしがみつきたかった。
愛してる…あなたは私だけのものじゃないの?
今日は絶対 絶対 愛してもらうから……
「小山内さん?」 王子に呼ばれてハッとする。
「え?」
「溝端先生に今 見とれてた?」
「あ…え?違うから~~いつもオーラが冷たいなって思っただけ~」
慌てる私・・・・。
「でもさ かっこいいよね。
男から見ても あのかっこよさには自分もあ~いうの憧れるよ。
男子からは大人気だけどね。」
「そうなんだ~」 意外だった。
「あ…もうそろそろ教室もどろっか……」私が歩き出そうとしたら
「なんかせっかく小山内さんと
話せたのに 残念だな~現実に戻るみたいで~」
王子が背中でつぶやいた。
「え?」
私が王子を振りかえると王子は大きなため息をついた。
「どうしたの?」
「まだ小山内さんと話してたかったなって~」
ちょっと恥ずかしくなった。
「話しかけてくれればいいのに……。」
「マジ?いいの?」
「それはいいよ~クラスメートなのにおかしいじゃん~」
「そしたらさ…俺も めぐ って呼んでいい?」
ドキンとした。
「あ…別にかまわないけど…王子ファンに殺されたくない……」
「殺されそうなら…俺が守るし……。」
なんか意味深な会話をしてる気がした。
「守ってもらったらなおのこと危険かも……」
志摩ちゃんが怒りそう……
「めぐ・・・・」王子が呼んだ。
「ん?」私もなんだかドキドキしてる。
「うわ~~めっちゃいい~~」王子が叫んだ。
「ついでにさ…俺のことも学って呼んで。」王子が私を見つめた。
「そ…それはマズイとおもうわ。
ホントにうち殺されるから……。」
王子の手が私の手をとった。
え・・・・
お姫様の手にキスをするように王子が私の手をとった。
「俺が守るから。」
そう言うと手の甲に乾いた唇でキスをした。
心臓が飛び出そうになった。
「俺とつきあってほしいんだけど……」
王子の声が大きくて 誰かに聞かれなかったか不安になった。
「あ…うちは…そんな……。」
「俺を好きになってくれてからでいいよ・・・」
王子はそう言うと先に教室に戻っていった。
ハッとして私も歩き出すと 彼と目が合った。
彼は とても優しい顔で私を見つめていた。
聞いてた?
ほんとに優しい顔だった………。