春の雪 九話
俺の言動で 不安定になる恵美が心配だった。
それが俺のせいなのはわかっていても 俺にはどうすることもできない。
恵美が長い髪の毛を短くしてきた時
私は千夏じゃない恵美だよ
必死に俺に主張してる姿が痛々しかった。
恵美を千夏にしよう
そう考えてきたのに……
これ以上深入りしないで
千夏がそう言っている気がした。
俺と出会わなければ 千夏は今頃 夢だった教壇に立って
子供たちとの毎日で輝いていただろうし
隣には違うもっとしっかりとした男がいたのかもしれない。
俺と出会って幸せだったのか?
何百回・・・いや何千回繰り返してきた言葉
俺の一生は千夏とともにあるべき
今までは そう思ってきた。
同僚の山岸先生とは もうずいぶん前からの
大人の付き合い
俺を縛りつけないとこが結構よかったけど・・・やっぱ女。
自分だけを見てほしいと俺にそう言う。
無理だよ・・・・
俺には忘れられない人がいる。
恵美が俺と山岸先生の関係に気がついた。
冷えた体で眠っている恵美を見て
もうこれ以上…振りまわすのはやめようと思った。
愛しさで一杯になって俺はまた
恵美を抱きしめる。
山岸先生と結婚する なんて嘘をついて
また…恵美を泣かせた。
俺は恵美を泣かせては抱きしめる。
なんてひどい男なんだろう……。
恵美が千夏の似てる限り 俺の心には千夏と恵美が行き気して
俺を混乱させていくから……。
恵美が抱いてほしいと懇願した。
そこに横たわるのが恵美なのか千夏なのか・・・・
また俺を混乱させる。
自分がどんどん壊れて行く気がしていた。
もう終わりにしよう
俺はそう決意していた。
このままじゃ俺も 恵美もダメになる………。
一生千夏を愛し続けるって誓いながら 恵美が恵美になって
俺は恵美を愛しいと思うたびに俺は自分をひどい人間だと絶望していく。
俺はどっちを愛してるんだ・・・
「おねえちゃんの代わりに
私を見てくれたことある?」 恵美は聞いた。
俺は
「ないよ。」と答えるしかない。
絶望に満ちた恵美の表情に胸が痛む。
俺自身がわからなくなっていく
ここにいるのは恵美?それとも千夏?
いままでやってきたことが すべて裏目に出てきていた。
「やめて~~~ぇ!!私は恵美だもん~~!!」
恵美の悲鳴に ハッとする・・・・・・・。
もう終わりにしなければ……
これ以上恵美を巻き込むことはできないから・・・・・。
俺は一生 千夏を忘れない。
千夏だけを愛していくことに決めていた。
恵美を千夏の変わりにして 復讐するつもりが
恵美として…愛しくて抱きしめている自分に
俺自身が…どうしていいのかわからなくなっていく……。