十一話
「千夏くんの妹さん!!!
いや~大きくなったね。」
大仏さまが近づいてきた。
「え…私を知ってるんですか?」
「僕が会った時は まだ君はこんなくらいだったかな。」
自分の腰くらいを手を合わせた。
「優秀な生徒で わが校の誇りだったんだよ。
きみは おねえさんにそっくりだね。」
また言われた……
「よくいわれますが 私は姉のように優秀ではないんです。
だからちょっとプレッシャーなんです。」
「そうだね きみはきみだからね。
そうか あの時の小さい子がうちの生徒か……。
ご両親はお元気かな?」
「はい。忙しくしてますけど。」
「そうか。それはよかった。
おねえさんに負けないように頑張ってくれ。」
「はい……。ありがとうございます。」
私は理事長に頭を下げて 彼の前を通って
ドアを開けた。
外に出る時
「溝端先生 お見合いの話 考えたくれたかな?」
大仏の声に私はドキンとして 出るふりをして
ドアを少し開けて中の様子を伺った。
お見合い?
「せっかくですが…まだ結婚は…考えられなくて…」
彼の声がする。
「もう先生も家族を持ってもいいのにな…。
先方さんは是非って言ってるから なんとかその気になってほしいな。」
「ありがとうございます。
もうすこしいろいろやりたいこともあるので…」
私はホッと胸をなでおろした。
「そうか…また声かけてみるよ。」
「すみません……」
彼は頭を下げて こっちに向かってきたから
私は慌てて 廊下を走りだした。
途中 つまずいて転ぶ・・・・・。
かっこわるい・・・・
慌てて立ち上がった。
立ち聞きしてたのわかったかな・・・
「ケガしなかったか?」 後から彼の声がした。
私は恥ずかしくて 真っ赤になった。
「盗み聞きした?」彼が私を覗き込んだ。
私は魔法にかかったように
「はい…」と答えた。
彼は 私を見て優しく微笑んだ。
「先生・・・私のこと知ってますか?」
思わず聞いてしまった。
先生は キョトンとした顔をして
「全然知らないよ。」と言った。
じゃあ…どうして私と先生は 見つめ合ったの?
あんなに引き寄せられるように……。