春の雪 四話
流れる季節の中で
俺は一年に一度 恵美を見つめる。
彼岸の日に家族とやってくる。
恵美は一年そして一年と 少しづつ千夏に近づいてきた。
美しい色彩の花束を抱えて
まるで
そこに千夏がいるようで
俺は 何度も抱きしめたい衝動にかられた。
そして三人が帰ってから
俺は千夏の墓の前に立つ。
今年の俺の話を千夏に語りかけるんだ。
そして・・・・
もうすぐ千夏を抱きしめるよ
愛する人の顔を忘れずにいられるのは
一年に一度
ここに現れる
もう一人の千夏
俺の中で 恵美の存在が千夏に変わっていた。
千夏を抱きしめたい
キスしたい
甘い声で喘がせたい………。
「千夏待ってろよ・・・・
もう少しで……俺は・・・・・。」
俺がもし恵美を自分のものにしたら
あの憎き千夏の両親は
また俺を憎むのだろう…………。
でも…もう俺には失うものもない
「待ってろ。もう少しで
俺たちまた結ばれる時がくるよ」
墓に供えられた美しい花束を
俺がもってきたアイスバーグに入れ替えた。
毎年
俺はいつもそうするんだ。
千夏の好きな花束に取り換えて墓を後にする時
出口のゴミ箱に
恵美が持ってきた花束を投げいれる。
「来年も来るからな~」振り返り 千夏と葵の墓を後にする・・・・。




