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激愛  作者: Lavia
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春の雪 一話

そのまま千夏を追いかけて 雪の中をさまよった。


まっすぐ行くのではと言われた会場には

千夏の両親の会社の人間が数人 葬儀の用意をしていて


「今日はご実家に戻られましたよ。」と言われた。



大きなホールには立派な祭壇と次から次へと届けられている

花輪が両脇にならんでいる。



千夏が好きだったアイスバーグが

祭壇に埋められて行く・・・・・・。




  うちにも千夏を待ってアイスバーグが待ってる



テーブルにかざってきた花束を思い出した。



本当なら今頃 花束に感動してくれた千夏と

初めての夕飯を囲んでいることだろう。




斎場を出て千夏の家に向かった。



雪が降り積もって足元が雪だらけになっている。



祭壇の白い色…そして目の前に降り積もっていく白い雪



千夏の好きな色で…俺の視界は覆われて行った。



俺を拒んでいる大きな屋敷・・・・

でも今の俺には 千夏に会いたい



それだけしかなかった。


インターフォンを鳴らすと エプロンをした女の人が出てきた。




「どちらさまでしょうか……」



「あ…千夏さんの友人で 溝端と言います。」



「どうぞお入りください。」



拍子抜けするくらい簡単に豪邸に足を踏み入れた。




「あ…家族の方は?」



「お疲れで…今休まれています……

どうぞ…こちらに……。」




俺の心臓は飛び出そうだった。



千夏との現実がすぐそこに…迫っているから

俺は現実を受け入れなければならない……



逃げ出したい気持ち



だけどどうしても千夏に会いたかった。

千夏に会わなかったら



俺は一生後悔して生き続けなければいけないから……。



会社の部下たちがリビングにつめていた。

明日の打ち合わせか みんなでプリントを見ながら

確認作業をしていたが

俺に気づくと一斉に頭をさげた。



俺も立ち止って頭をさげた。



キッチンにいた女子社員たちが お茶をもってやってきた。




「こちらです・・・・」




和室には美しいアイスバーグに飾られた祭壇と

そして一枚の布団が敷かれていた。



  千夏じゃない・・・・これは絶対に悪い夢なんだ



俺はその部屋に足を踏み入れることがなかなかできなかった。



「どうぞ・・・」女の人に声をかけられて

足を踏み出した瞬間に 体を後ろ側に倒されて俺は床に転がった。




いきなりのことで一瞬ボーっとしてると


「何しにきた!!??」 千夏の父親が仁王立ちになっている。



「あ…千夏に…千夏に会わせて下さい…」


俺は土下座した。



「なんでおまえはこいつを家にあげたんだ!!」


案内してくれた女子社員を怒鳴りつけた。



「そんな…さっきからお友達がたくさんいらしてましたから…」


女子社員は今にも泣き出しそうだった。



「こいつを外に出してくれ!!」父親が叫ぶと

さっきまで打ち合わせをしていた数人が俺を取り囲んだ。




「お願いします!!千夏に…千夏に会わせて下さい…

じゃないと俺…これからどうしていいのか……

お願いします!!一目でいいから…千夏の顔を…見せて下さい……」




「おまえのせいだ・・・。おまえが千夏を殺したんだ。

おまえがいなかったら千夏はこんなことには

ならなかった……。」




「すみません…。だけど俺たち…愛し合ってるんです。

誰に反対されても 二人で一緒にいたかったんです。」




「おまえらが結ばれなかったのは 神様も許さなかったからだ。

帰れ!!!もう千夏を…これ以上千夏を

まどわさないでくれ。ここまできたら千夏を…ちゃんと天国に

行かせてやらないと…おまえに会ったら千夏は成仏できないんだ!!!

早く連れて行け!!!」




「お願いします!!!」




「さぁ…」右わきを抱えた人がそう言って俺を持ち上げた。



「お願いします!!一目だけ…千夏に……

千夏に会わせて下さい!!」何度も何度もそう叫んだ。




しかし数人の力によって俺はまた無情にも

雪が降りつもる玄関の外に

出されてしまった。



しばらくして

「靴です・・・・」そう言って俺のまえに靴が置かれた。


力なく顔をあげるとさっき話した男の人だった。



「風邪ひきますよ。これ・・・・」



そういうと俺に……黄色のひよこのぬいぐるみをくれた。



「恵美おじょうさまが眠っている千夏おじょうさまの

布団の中にたくさんのぬいぐるみを入れて

怒られてたんです……。さっき僕がおじょうさまを確認したら

手の下になってこのひよこがまだ残ってたんです。」



俺は黄色いひよこに頬づりをした。


「千夏……千夏……」涙と鼻水がひよこを濡らした。




「とても安らかなお顔です……。

美しくて幸せそうで……そんな顔のお嬢様を想像してあげて下さい。」




そう言うとその人は家の中に戻っていった。

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