永遠の別離という結末 十話
「落ち着いたか?」
イスに深く腰掛けて俺は茫然と天井を見ていた。
連れてこられたのは警察署
俺はパトカーに乗せられてきた。
「ほら…飲め……。」
湯気のたったココアをテーブルにおいてその人は座った。
「あ………」
「久しぶりだな・・・・。」
千夏と巻き込まれた喧嘩の時に世話になった刑事だった。
「すみません……。」俺はうなだれた。
「大丈夫か?彼女だったんだろ……?」
「え?」俺は 顔を上げた。
「可哀そうに……。さっき…ほんとにさっきだぞ……。
両親と妹と帰っていったぞ……。」
俺は立ちあがった。
「なっちは……死んでなんかいないよね・・・・・。
何かの間違いだよね………。」
刑事は俺にココアをすすめた。
「まず あったかいの飲め・・・・。」
俺はあたたかいココアをすすった。
甘いココアが喉を通って胃に落ちた。
「駆け落ちするんだったんだってな……。
両親が言ってたぞ……。妹がおまえからもらったメモを
風呂に入っていた千夏さんに読んでいたのを
とりあげて家族総出で厳戒態勢をとる手はずになってたらしいけど……
なぜかその時間よりかなり早い時間に出て行ってしまったらしい……。
両親は 事故の電話で飛び起きたと……混乱してたな…。」
「最初に待ち合わせしてた時間に出て行ったと思う……。」
「そっか……。妹が読んであげてたおまえの手紙は
千夏さんには聞こえてなかったんだな……。
なんて言ってやったらいいのか……。」
「苦しんだ顔でしたか・・・・。」もう声がかすれてきた。
「顔はきれいだったよ……。眠ってるみたいだった。
お腹に……子供がいたんだってな……。
咄嗟にかばったったんだろボストンバックで……
本当に…気の毒としか言えない……。
おまえらはおまえらなりに幸せになろうとしてたんだ…よな…。」
「俺…なっちと会って…生れてきてよかったって…
自分を好きになったんだ……人生に希望が見えて
人を守りたい…ってそう思った……。」
「わかるよ。
おまえみたいな将来きっと俺たちが追うような人間になるだろうって
思っていたけど…おまえはずい分変わったよな。
きっと…大丈夫…きっと前を向いて彼女の分まで
頑張っていけるだろう?」
俺は首を振った。
「刑事さん…俺に拳銃かして……。
頭撃ったら…すぐになっちに会いに行けるだろう……。」
「バカだな…
後追ったって会えないんだって……
俺の死んだばあさんが夢枕教えてくれたぞ……。」
刑事がココアを飲みほしてゴミ箱に捨てた。
「……俺……どうしたらいいんだろう……。」
「早く立ち直れ。
きっと時が…立ち直らせてくれるから……。」
俺はしばらくその場でまた 大声で泣いた。