永遠の別離という結末 九話
事故現場の電話ボックスはもう撤収されていた。
朝…ここで見かけた粉々のガラスの破片に
交っていた血の色は……千夏のものだったんだ。
俺は四つん這いになってその破片を探した。
破片を見つけたら千夏が
「見つかっちゃった」そう言って俺の顔を見て笑ってくれるような
そんな…願掛けをして……
「なっち…ごめん……俺が遅れたばっかに…
寒かったろ…電話が通じなくて不安だったろ……
ちょっと遅れたけど……
怒ってたら…給料出たら好きなもの買ってあげるから……
だけど…高いもんは…高いもんは……
うっ……な…何で…何で…
嘘だって言ってくれよぉ……。」
涙と一緒に鼻水も凍った地面に落ちた。
「なんで…こんなことに……」
恵美に渡したメモは 千夏の手には渡らなかったんだ……。
俺が仕事うけたばっかりに……
携帯の充電をしてなかったばっかりに…
俺と
俺と出会ったばっかに……千夏は……千夏は……
春の雪が俺を濡らした・・・・・。
手が真っ赤にかじかんでも…千夏を見つけたら
きっと俺をあたためてくれる……
「助けて…俺…どうしたらいい?
おまえがいなくなったら……俺どうしたらいいんだ……。
何を…何を待って……おまえを
どのくらい待てば……また会えるんだ……。」
人だかりができていた。
だけど俺は必死に千夏を…千夏の痕跡を探す…。
「痛かっただろ……葵も……可哀そうに……
ごめん…大事な日に……俺のせいだ……。
俺がおまえたちを殺してしまったんだ……。」
大声で泣きわめいて俺は冷たい地面に
突っ伏した。
「誰か・・・誰か・・・
俺を殺して下さい!!俺を…殺して!!!」
大声で泣きわめいた。
「誰か~~~~誰か~~~
殺せ!!!殺せ!!!」
しばらく大声でわめいていたら
両脇を抱えられた。
「離せよ!!!離せって言ってんだろ!!!]
俺は足をバタバタさせた。
「殺せって言ってんだよ!!!」
両脇を抱えられたまま車に押し込まれた。
「頼むから……お願いだから…殺して下さい……」
俺は膝を抱えて大声で泣いた。
車は静かに走り出した。