表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

「無能な管理者」の回路図〜勇者パーティを追放したら、世界をインフラから最適化しすぎて神話レベルの文明が完成しました〜

作者: ちいもふ
掲載日:2026/05/31

 この世界は、あまりにも欠陥けっかんが多い。



 魔法の詠唱えいしょう速度は遅く、魔力消費の効率は最悪。


 おまけに勇者と魔王という二つのシステムが、資源を浪費しながら無限に泥仕合を繰り返している。



 俺は律。


 世界の保守管理を任された「管理者」だ。


 と言っても、神のような大層な存在ではない。


 ただ、現場せかいの配線が気に食わないだけの、職人気質うらかたのエンジニアに過ぎない。



 辺境の村に身を隠した俺は、まず村の主要インフラである「水車」の改装に着手した。


 村人たちは魔法の力を借りて石臼いしうすを回していたが、あまりに非効率だ。


 村外れの廃坑はいこうに転がっていた導力鉱石を拾い集め、魔法回路を図面に従って再構築する。


 回路の構成は極めて単純だ。


 複雑な詠唱などいらない。


 物理的な制御と、導力回路を効率よくつなぎ、最短距離でエネルギーを伝達させる。


「律さん、また不思議なものを作ってるの?」


 村の少女が不思議そうにのぞき込む。


 手元の魔力制御棒を回し、最後の回路を閉じた。


「ああ。ただの『最適化』だ。これからは、魔法を唱えて石臼を回す必要はない。川の流れが石臼を回し、余剰なエネルギーは蓄電池に変換される。これで製粉作業のスピードは三倍になる」



 翌日から、村の生活は激変した。


 村人たちは「神の加護」だと涙を流して喜んだが、全然違う。


 俺は村のあちこちに、魔法と論理を組み合わせた「自動制御ライン」を組み込んだ。


 耕作の自動化、水資源の効率的な分配、そして村をおお防壁バリアの省電力化。



 数ヶ月後。


 村は周辺諸国が驚くほどの経済圏を築き上げた。


 うわさを聞きつけたのは、かつて俺を「無能」と切り捨てた勇者パーティだった。


 彼らはボロボロの装備で村に現れ、構築した防壁システムを前に立ち尽くした。


「おい、律! ……どういうことなんだ? なぜ魔王軍の斥候せっこうが、村を避けて通るんだ!」


 勇者アルヴィンが、忌々いまいましげに、俺の胸ぐらをつかもうとする。


 だが、防壁が瞬時に反応し、強烈な電磁パルスで彼らを弾き飛ばした。


「……学習能力がないな、アルヴィン」


 俺は冷めた目で、地面に転がるかつての仲間を見下ろした。


「お前たちがダンジョンで無駄な魔力放出をして、俺を『不要』だと笑った瞬間から、世界のシステムは崩壊に向かっていた。頼みの魔法回路は、俺が裏で手入れをしなければ数日で焼き切れるショボいものだ」


 手元の管理者端末――村の全インフラを統合した回路図を掲げた。


「俺は世界を直しているだけだ。お前たちが壊し続けた世界の配線をな」


「俺様は勇者だぞ! 絶対的な守護者だ!」


「ああ、ただのお飾りか。勇者スキルは、不採算部門として凍結処理した。もうこの世界から、魔力供給ラインはカットされている」


 勇者パーティが青ざめる。


 俺が指を鳴らすと、彼らの聖遺物が灰の如く霧散する。


 アイテムの回路も、俺が遮断しゃだんした。


 勇者アルヴィンたちは力を持たない、ただの無知な人間へと成り下がった。


 俺は一瞥いちべつもくれず、管理者端末で次の領地の回路図を開く。


 世界のバグは多い。


 直すべき箇所は、まだ山ほど残っている。


「帰れ。……村の労働効率を下げる邪魔者には、用がない」


 背後で、風車が力強く回転し続けている。


 世界が最高傑作になるまで、俺の仕事は終わらない。

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。


 「魔法」という曖昧あいまいなものを、「回路」や「制御」といった現場の論理で構築したらどうなるか。


 疑問から、律という男が生まれました。


 彼の作る「最高傑作」のインフラが、どう変化していくのか。


 設計図の続きを、またどこかで描けたらと思っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ