第1話 火災ニュース
テレビのリモコンの電源を入れた。
あっ――と口から言葉が漏れた。
テレビにニュース番組が映っていて、国際サミットについて解説をしていた。
友香里は目が釘付けになり、テレビの音量を上げた。
昔から、こういう国際的な問題や、事件について知るのが好きだ。いや、それについて知って、解決できないかを考えることに喜びを感じていた。
テレビを見る視界が狭くなるが、気にならなかった。
「……凄い」
このニュースによれば、発展途上国についての協議だった。学校でも習ったなぁと昔のことを思い出す。
学校では、国際連合の機関で募金をやっているとか、ユニセフとか聞いたことがある。
募金したことあったかなぁ、と窓の外を見た。
いつにも増して雪景色が広がっている。
まだ、春の訪れは遠いと思いながら、台所へ行き、お湯を沸かす。
友香里はまだ高校生だが、春から大学生になるかもしれない時期だった。
友香里はカレンダーを見ると、合格発表まで残り四日だった。
合格発表がまだなのに、着々と大学生になる準備を始めていた。
家には、真新しい艶々のカバンをふと眺めて笑みが溢れる。大学の入学式用だ。
スーツも新調した。ちょうど良いのが見つかって母親に「似合ってる」と褒められた時の嬉しさを、カバンを眺めながら思い出していた。
お湯が沸騰している音を聞き、急いでその場に駆けつける。良かった……ちゃんと沸かせた。安堵してカップラーメンの準備をしながらも、耳はニュースを追っていた。
ニュースでは、発展途上国での、経済・貧困問題について話されていた。
国の財政が厳しく、教育や医療に十分なお金が回せないなんて……とどこか遠い話のように感じられた。
更に、インフラ(道路・電気・水道)が整っていない……学校で習ったことばかりだ、と改めて痛感する。
外国からの借金を返せないことを聞くと、個人間での借金を返せなかったらかなり怖いのに、国となると……思わず顔が青ざめた。
『現在、我が国では学校に通えない子どもが多くいます。教育支援と債務返済の猶予をお願いしたい』
ここで議論されていることは、「借金を一時的に止めるか」「援助を無償にするか、貸付にするか」「資金の使い道をどう管理するか」の三つの点だった。なるほど、と思わず唸った。借金をなんとかして支援の効果を最大限に引き上げたい、ということだろうか。
棚からカップラーメンを取り出し、お湯を注いだ。勢いよく吹き出してくる煙に思わず、一歩後ずさりしそうになった。
『続いてのニュースです』
テロップには『白露神社で火災 本殿の一部焼ける』と書かれていた。
『昨夜、白露神社で火災が発生しました。警察と消防によりますと、火は本殿の一部を焼き、およそ二時間後に消し止められました。この火事によるけが人はいませんでした。出火当時、神社には人はおらず、消防は電気系統のトラブルの可能性も含めて原因を調べています。白露神社は地元では初詣などで親しまれており、今後、祭事への影響が懸念されています』
……アナウンサーの声は落ち着いていて、いつものニュースが流れているように感じる。しかし……友香里にとってはそうではないらしい。
彼女がまだ三歳ぐらいの頃、突然、家から抜け出したことがあった。
その時のことは……よく覚えていないから分からないけど、両親はただ遊びたかったんじゃないかと言っていた。
彼女がいなくなったことにすぐに気づいた両親が探していたら、公園で裸足で遊んでいたらしい。もしも……両親が気づくのが早くなかったら、と思うとゾッとする。あの時、無事に見つかったのも神様のおかげかもしれない。そんな思い出のある神社の火災は、他人事とは思えなかった。
大学受験生になった時、模試で結果が振るわないままだった。迎えた本番、最高得点と最低得点を同時に更新する結果となった。おかげで、行きたい大学へは行けそうだった。
最後の定期テストがあったが、一科目だけ追試疑惑があり、神頼みしていた。結果は免れ、ほっとした。
白露神社といえば、自分の家から一番近い神社だった。神社はそこしか行ったことがなかったから縁がある、と思う。神様には恩があったから、心配になる。
彼女は……願いを叶える力がある、と信じていた。どうしてこう思ったかは覚えていない。ただ、願いが叶うことが多いと感じられるからだった。
神様には恩があるからこそ、彼女は……神様と友達になりたい、と願っていた。




