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第2章 二度目の断罪 第6節


第2章 二度目の断罪 第6節


…男爵令嬢


その言葉を聞いて、わたくしは思い至る。


「はい、その…そんな噂を耳にして…」


いえ、予感はしていたのです


「それで…昨日の朝の様子をお見かけしたもので…」


あの断罪の時に、殿下の側に佇んでおられた


「すみません、すみません、わ、私、

 私なんかが、エリザベート様の心配なんて

 すみません、すみません」


あの方の事でしょうか


「エリ様たぶん聞いてない」


「はうぅ…」


「たまにあるから気にしなくていいぞ、」


…なんだかひどい事を言われているような気もしますが


あの方が…殿下と…ですか?


今までの夢…の中でも、


確かにそれらしい方と御一緒されているような所を、


お見かけしたような気がしないでもありません


けれど、わたくしと言う婚約者が決められている以上


何かあるはずもないと…そう


思っていたのでしょうか


わたくしが…殿下の婚約者では、なくなるなどと


考えたことなどこれまで一度も、


考えるべきだった?


この夢の繰り返しに向かい合うべきだった?


わたくしは…わたしは…


「…あの、マルタさんにリディアさん、エリザベート様は大丈夫なんでしょうか?」


「割と噂にはなってたんだけどな~」


「エリ様。前しか見ないから」


「まあ、いいんじゃないか~?、いずれは耳に入っていただろうし」


「マルタさんのその様子では、お二人もご存じで?」


「そりゃね、エリザベート様もいつ気が付くのかな~とは思ってたよ」


「エリ様にぶい」


「リディアも言うね~、にぶいっつ~か~、あまり周りのこと気にされる方じゃないからなぁ~」


「マルタ言い過ぎ」


「そう、なんですかね、私も今日初めて、名乗ってご挨拶したくらいですから…」


「だろ?なんつ~か、悪い意味じゃないんだけど、

 どうしても公爵令嬢とか殿下の婚約者、未来の王妃としての役割を演じておられると言うか…

 自分をその役に押し込めてるっつ~か…」


「うん、エリ様役者」


「私には、立派なお方だとしか…」


「まぁ、その話は…な?

 でもちょっと長いな今日は、お~いエリザベ~ト様~そろそろお昼の時間終わりますよ~」


「エリ様もどる」


わたしが知らなかったから、その罰とでも言うのでしょうか…


わたしが知っていたら何かが変わったのでしょうか…


わかりません、わからないのです


いったい、わたしはどうなってしまっているのか


「…わたしは…わたくしは、」


「お、もどったみたいだな、

 エマ嬢、もう少し時間かかりそうだから、先に教室戻ってな」


「はい…いいんでしょうか…」


「ああ、聞かれたくない話になるかもだからな」


「そう、ですね、

 お二人にも申し訳ありませんでした、

 私が余計な事を言ったばかりに…」


「いいよ、気にしなくても。いずれはこうなっていただろうからさ

 早くもどりな。」


「エマ、あとでね」


「はい、教室でお待ちしていますね」


ふと顔を上げてみるとサロンからエマ様が出て行かれるところでした


「あの、エマ様は?」


「ああ、エリザベート様、エマは先に教室に帰しましたよ、お昼の時間も終わりそうですし」


「うん、帰った」


「え?もうそんな時間ですの?わたくしたちも早く教室に…」


「それでいいんですか?エリザベート様」


…マルタがよくわからないことを言い始めます


「どういう、意味ですの?」


「私たちは公爵閣下から、エリザベート様の好きな様にやらせて、

 それを支えるように言われてますからね、

 お嬢の判断に従いますけど…でもそれは、

 お嬢が考えることを放棄することを、

 うちらがほっておく事とは違うんですよ」


少し厳しさの増した表情で、マルタがそう言います


「お嬢、さっきエマ様がされた話覚えてますか?」


マルタがお嬢と呼ぶのも久しぶりな気がします、


昔はいつも、


お嬢…と呼んでいたのに


いつの間にか呼ばれなくなっておりましたわね


「それは、もちろん…」


どうしたのでしょう、頭に少し靄がかかったように、先ほどのエマ様との会話が思い出せません


「お嬢、お嬢が今の立場だとか、将来の王妃になるため努力してるのも、

 うちらは近くで見てるから知ってるつもりだけどさ、

 でもそのせいで、見なくちゃいけないものも見えなくなってるんじゃないのか?

 …昔のお嬢…はもっと、」


少しうつむいたマルタの表情は何処か悔し気で後悔がにじみ出ている気がします


「エリ様変わった、でもちょっともどった…かも」


リディアが続けてこう言います


何か…何かがわたしのなかから抜け落ちていたような、そんな気はするのですが


それが何だったのか、わかりません


ただ、それは決して無くしてはいけない物だったのではなかったのかと


でも、今のわたしは、それに気が付くことができずにいたのです


「…わたくしは…公爵令嬢のエリザベート・クラウゼンハルト

 それが、わたくしなのです…」


力なくそう言うことしかできません


わたしはどこかで間違っていたのでしょうか…


その罪が今の繰り返すこの夢なのでしょうか…わかりません



###############################



その後言葉少なく教室に戻るわたくしたち


先生には注意されるもののそれほど遅れたわけでもなさそうでした、


「先ほどは失礼いたしました」


小声で、エマ様に話しかけます


「い、いえ、私の方こそ…」


それ以上会話は続きません…授業中、ですものね


そういえば…本日、殿下のお姿を見ていませんがお休みでしょうか


今までも、公務などでお休みされることも多かったですし…


サロンでの会話ですこし…ほんの少しですがわたしの心の中に不安がよぎります


いえ、殿下をお疑いするなんで…


わたくしにあるまじきことですわ


…チクリと何か違和感が胸を刺します


わたくしらしくない……


わたしは、そう感じていることに気が付きます。


わたくしとは、いったい…


何か、何かが引っかかるのですが、


それが何かが言葉に出来ません


やがて本日の授業も終わり、


マルタとリディアに見送られ帰路に就きます


結局、エマ様とはろくに会話もできず


マルタとリディアの二人とも必要以上の会話をすることもありませんでした


…これでよかったのかしら


どこか後悔にも似た感情が押し寄せてきます


いえ、明日もまた会えるのですもの


お話くらい、また、すればいいのです


そう、それが間違いであったと、


気が付くこともなくわたくしはまた…



#############################################



それからの日々は、拍子抜けするほど順調でした。


何度目かもわかりませんが


もともと記憶力がいいことが幸いし


…もし、もしですが、


わたしが、もう少し、物覚えが悪かったらと…


少し思うのです


きっとそうすれば、改めて皆様の事を知るために交流を深めていくことで


さらなる違和感にも気が付いていたのかもと…


そう思わずにはいられないのです


名前や外側の変化だけで


皆さん同じなんですもの…すぐ馴染んでしまうのです


なぜならもう何年も共に過ごしてきた学園ですもの


違和感が無ければ。


あるべき場所に身を落ち着けると、


完成された日常は、何事もなかったかのように進みだしました


そうしてわたくしは、


そんな日々を、


取り戻してしまったのです。


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