第2章 二度目の断罪 第5節
第2章 二度目の断罪 第5節
お二人が一緒にいて下さったおかげで
今回は迷うこともなく教室の席に着くことが出来ました
「では、エリザベート様。また後程」
「エリ様、あとでね」
「ええ、お二人ともありがとうですわ」
お二人も同じクラスで、席は…おなじですわね
どういう事なんでしょうか。
今の所、容姿や声は変わっていても話をしてみると、知っている方と瓜二つ
まだ名前まで確認できている方は少ないですけれど、
ヴィー様にお付きの方。マルタにリディア、それに…家族
家名はわかりましたけれど、さすがに両親に名前を尋ねるわけにもゆきませんし
弟、エミールは…しばらくお話をしたような記憶が無かったのですが
ふふ、あれは名前は違っても弟…ですわね、そろそろ落ち着くと思っていたのですが
まだ思春期なのでしょうか、わたくしと話をするのにまだ戸惑いが隠せていませんわ
むかしは、ねえさまねえさまとかわいかったですのに…もうすぐ背も抜かれそうですわね
そんな懐かしい思いにはせていると
「おはようございます、エリザベート様」
「ええ、ごきげんよう…」
隣の、庶民の特待生の方でしたわね
…どうしましょうか
「そういえば、エリザベート様」
「は、ハイ!」
急に呼ばれたことで驚いてしまいました
「ごめんなさい、私なんかが話しかけたことで…」
「い、いえ、わたくしの方こそ少しぼ~っとしていたものですから」
申し訳ないことをしてしまいましたわ
「あの、昨日の…ことなんですが…」
「昨日?何かありましたかしら?」
「あ、いえ、何も、何もなかったです」
「?」
昨日は…少し疲れて…おうちで休んでいましたわよね…
疲れて…?
はっ…その疲れた理由を忘れていましたわ
一気に顔が熱くなっていきます
そうでしたわ、わたしは、あんなに皆さんがおられる中で大声を上げて…
ヴィー様に
「はうぅ…」
ぱたんと机に突っ伏してしまうのでした…恥ずかしいですわ…
「すみません、すみません、エリザベート様。エリザベート様ぁ」
「みていません。なにもみていませんからぁ」
だんだんと涙声になっていくお隣の方声を聴いていますと
なんだかこちらが申し訳ない気持ちになっていきます
ゆっくり顔を上げてお隣を見ると、
ようやくわたしが顔を上げたことにほっとしたのか
涙をためた顔で、はにかむような笑顔を見せてくれます
「しつれいいたしましたわ」
「いえ、私の方こそ、余計な…」
「…いいですわね?あなたは、何も見ていませんしなにもしらない?そうですわね?」
言葉の途中に割り込むように少し強めに言ってしまいましたが…
少し脅かしすぎたのかもしれません。
そうでした、わたくし少し釣り目なとこがありますから、
少し怒った顔をすると皆さんを怖がらせてしまうのでしたわ
涙目で首をぶんぶん縦に振ってわかりましたと繰り返すこの方を見ていると
少し小動物に思えてきますわ…かわいらしいお方でしたのね
「こほんっそれで、あなたえっと…」
「あ、私エマです」
「そう、エマさんでしたわね」
「エリザベート様に名前を呼んでもらえるなんて、光栄です」
にこりと笑うこんなに親しみやすい方なのに、挨拶以外の会話をした覚えがない…ですわ
「それで結局のところ…」
なんて聞こうかしら…忘れろと言った手前、わたしから蒸し返すのも…
「あ、ただ、あの…お加減が悪そうでしたので。ちょっと心配と言うか…その…」
「あら、心配いただけたのですね、それはありがとうございます
みてのとおりほら、もう大丈夫ですのよ?」
「それならよかったですぅ、あの…いえ、何でもない…です」
なんだか歯切れの悪い言葉でしたけども
聞き返そうかと言うときに
授業の鐘とともに先生が入ってこられました
「お話はまた、あとで致しましょう」
「…はいぃ」
授業は…語学ですのね
ここまで普通に会話していて言葉が違っていたということもないのでしょうけど
こっそりと、他の授業の教科書を引き出し覗いてみますと
やはり算術などは変わりませんわね、教科書の見た目は少し違うようでしけど
歴史は、うん、これも以前と同じかしら人物の名前は違いますけど
起きている事象は変わりませんわ…年代も同じですわね
地理も、地形などは同じようですわね、違うのは名前
他も同じようなものですわね、法則そのものは同じですけどその法則を表す名前が違うとか
これなら以前と同じようにすぐ慣れるでしょう
本当に?
本当に慣れてしまっても…いいのでしょうか?
それではまた…あの…
少し体が震えます
このまままた今の世界に慣れてしまってこのまま過ごしていって…
そうしてまた…同じような違う世界に…
いやですわ。もう、こんな思いは嫌ですの…
授業中と言う意識が無ければ取り乱してしまいそうになりますが
わたしの、いえ、わたくしの築き上げてきたものがその慟哭を止めます
そうですわ、そうですわね…
今のわたしは、
今のわたくしは、公爵令嬢エリザベート・クラウゼンハルト
そうそれだけがわたくしなのです
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その後いくつかの授業をすごし
…今回は答弁に指されませんでしたわね
まだ把握できていないことが多い今、なるべく当てられるのは避けたいですわ
お昼休みはどうしようかしら…
いつもはどうしていたのだったかしら
そうそう、もう少しエマ様とお話ししなくてはいけませんでしたわね
エマ様もまだおられるようですしここはランチにでもお誘いして
「エリ様、お昼どうする」
リディアが声をかけてきます
そうですわね、一応、人には聞かれない方がいいかしら…
そうして横を見ると、ちょうどエマ様が席を立とうとしていたので
その腕をがしっと、腕を組むように捕まえまして
「ちょうどエマ様と少し仲良くなりまして、お話をしたいと思っていましたの
何処かサロンが空いていたら場所を取っておいていただけるかしら?」
エマ様がこちらを見てなんだか小刻みに震えておられるようですけど
「よろしいですわね…エマ様?」
ぶんぶんと首を振っておられるので肯定と言う意味でいいのでしょう
「エマ様はお昼は…」
「はい!わ。私はお弁当があるので!」
「そうですの?
でしたら、わたくしの分とあなたたちの分を、わたくしは軽い物でいいのですけど、何か皆で召し上がれるようなものもお願いするわ」
「は~い、私が食堂から持っていきますね、リディアはサロンの方を」
「うん、エリ様いこ」
「ええ、ほら、エマ様、行きますわよ」
うっかり、腕を組んだまま歩くことになり
なんだか売りに出される動物を引き連れているような気分ですけど
少し気になるのです…何かをこの方はご存じなのではないかと
あくまで感なのですが…今この方を離してはいけないと
そんな予感をかかえながら
サロンで改めてお話をすることにいたします
そこで何を聞くことになるのか想像もしないまま




