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第2章 二度目の断罪 第3節

第2章 二度目の断罪 第3節


「少しは落ち着かれましたのかしら?」


「…お恥ずかしいところを」


「まったく…いったい何がありましたの?あんなに取り乱したエリーを見るのは初めてですのよ?

 いえ、失礼、エリザベート様ですわね…」


わたしはあのままヴィー様に案内される形で


庭園の隅に立っているガゼボにやってきました


ようやく落ち着き話ができるようになったのですが


あらためて彼女をよく見てみると、金髪縦ロールは同じでしたけれど


顔などはやはり別人でした


ただ、彼女の醸し出す雰囲気は、やはりわたしの知っているあの方そのもの


でも今は…恥ずかしい…


わたしはどうしてしまったのでしょう


侯爵令嬢・殿下の婚約者として


このような振る舞いをするなんて…恥ずか死にそうです


「いい加減こちらを向いてもらえます?」


はっ、あまりの恥ずかしさにまた下を向いていましたわ


「いえ、本当に申し訳なく…」


「それで…いったいどうしたというのですの?私に話せることなのかしら?」


言ってしまいたい…すべて言ってしまいたい気持ちはあります


だけど…こんな話を言ったとしても…


わたし自身がまだ理解できていないというのに


そうしてまた思考の海に浸かろうとすると


「ちょっと!聞いていますの?

 でも、まあ、あなたの弱みを一つ握ったと言えば悪くはないですわね…ふふふ」


「…ヴィオレッタ様、悪い顔になっていますよ」


彼女の後ろに控えている方が彼女を注意します、


制服を着ておられますが…確か彼女のお付きの方が同じ学園にいらっしゃいましたわね


「なによっ、ちょっと言ってみただけじゃないっ!」


「ヴィー様、いえ、ヴィオレッタ様。また旦那様にお伝えしますよ?」


「うぐ…わかったわよ、っとにもう!」


きっといつもと変わらないやり取りなのでしょう言葉の隅からそう伺うことができます


「それで…そろそろ落ち着きましたの?」


「ええ、本当に申し訳ございませんでした」


ようやくわたしも面を向いて話をすることが出来そうです


「それで…いえ、言えない事でしたらいいのですわよ?…気にはなりますけど」


「えっと、少し夢見が悪くて…ヴィー…ヴィオレッタ…様ともう会えないような気がしていたところ…

 先ほどお会いできたもので…つい、感極まってと言うか感傷的になってしまいまして…」


ヴィオレッタ様で合っているのかしら…先ほどお付きの方が言ってらしたけれど…


「まぁ、まあ、おかわいいらしい理由です事、それであんなに取り乱すなんて…あなた…」


「…ヴィオレッタ様、またお顔が」


「なによ!もう。こんなこと言われたら、おかしな顔にもなりますわよっ!」


…あれ、やっぱりわたしの知ってるヴィー様とは違うのかしら?


「と!に!か!く!、あなたの理由はわかりました、このことは私の胸の中にだけしまっておきますから

 今日はもう、帰宅なさいませ

 鏡…は、ありませんけれど随分とひどいお顔をしておられますわよ

 それに、朝の事を目撃している生徒もいましたし…」


「ヴィー様、女性に顔がひどいというのは…」


「もう!あなたは黙りなさい!」

「とにかく、エリーのお付きの…名前、何だったかしらあの二人」


「リディアとマルタですよ、お嬢様」


「そう、その二人をこちらに寄越すように伝えておきますから

 少し休んだら帰宅するように。

 殿下にもそれとなく今日はお休みと伝えておきますわ」


まるで喜劇のお芝居のようなやり取りのように


小気味良い会話を交わされるお二人に少しあっけにとられるも


ああ、でもこの優しさは変わらないわ


「ヴぃー…ヴィオレッタ様、お手数を、おかけしてしまい…」


「もうっ!ヴィーでいいですわ!

 その代わり、わたくしも今からエリーと呼ばせていただきますから!ふんっ」


「お嬢様、見事なツンデレです。グッ!」


なぜかお付きの方がヴィー様にとても良い笑顔を向けておられます…


「ほんっと、あなたはもう、だまりなさい!!」


そんなやり取りにどこかほっとします


「ヴィー様、ありがとうございます」


…少しは、笑顔で言えたかしら


わたしの…夢


夢でお会いしていたあの方とは違いますが、なにひとつ変わらない優しさに


わたしは胸をなでおろすのです




####################################




しばらく休んでいる間にやってきた二人


彼女たちがマルタとリディアでしょうか…


初めて会うはずですのに、なんとなくどちらがリディアでマルタかわかります


そんなことを考えているとも知らない二人は


「エリザベート様、お具合のほどは?」


おそらく彼女がマルタでしょう、活発なように見えて気配りもできる


彼女にはずいぶん助けられてきましたわ…この彼女がそうとは言えませんけど


「馬車、呼んどいた」


そしてこちらがリディアでしょう


言葉は少な目でクールに見えますが彼女の優しさにも助けられてまいりました


どうか…どうかこのお二人も


変わらないでいていただければ…


二人に案内される形で馬車に乗り込むとそのまま屋敷に帰ります


馬車が去る前に、二人には、


先生に、学園を休むことをお伝えするよう、


ヴィー様に、改めてお礼の言葉を、


と、お願いしておきます。


そうして馬車に揺られ帰宅すると


「おかえりなさいエリー、無理してはダメよ?このまま部屋に戻って休むようにね?」


母…が心配そうに迎え入れてくれます


父…はこの時間でしたら登城されている事でしょう、国の重要なお役職に就いておられるはずですもの


弟は…まだこちらではお会いしていませんでしたけど、朝も先に出かけていたみたいですし


時期的にそろそろ生徒会長を引き継ぐ頃でしょうから、きっと忙しいのね


メイドに先行され部屋に戻ります…


そういえばこの屋敷の部屋の配置も同じなのかしら…


装飾品とか壁のつくりは違うみたいだけど…


少しきょろきょろしていると、


「どうかなされましたか?」


心配げに、前を歩いていたメイドに顔をのぞかれます


少しびっくりするものの


「え、ええ、大丈夫ですわ…あんなお花飾っていたかしらとちょっと見ていただけですから」


「あれは今朝入れ替えたばかりですからね、お嬢様が起きられる前でしたが

 少し慌てていらっしゃったから気が付かれなかったのでは?」


「ええ、そうでしたわね、朝は少し考え事をしていて見ていませんでしたわ」


そう会話をしていると部屋の前にたどり着きます


やはり部屋の場所は同じみたいだわ


メイドが扉を開け部屋に入ると、朝は気にしている間もなかったけれど


家具や装飾品が違うだけで配置は同じ…


「ねえ、あなた…」


「はい?お嬢様」


この方も容姿は違いますけど…


いつものわたしの専属メイドと同じ方なのでしょうか…


「いえ…いまさら、こんなことを聴くのも…あれなんですけど」


「?」


「あなたの…その…お名前は、何だったかしら?」


「え?お嬢様…今まで私共の名前なんて気になどされていなかったのでは…

 あ、いえ、申し訳ございません」


…確かに言われてみれば、彼女たちが当たり前にいるものですから

名前とか気にしたことが…なかったかもしれません


「あの…名前も知らないのもこれから…その…不便かと思い直しまして…」


「?、いつも通りに指示していただければいいのですけど…お望みでしたら

 私は、アニーと申します。

 他の者も、聞かれると喜ぶかもしれませんよ?」


「え?どういうことかしら?」


「うちにいるものはみんなお嬢様の事大好きですからね、名前を呼ばれたらみんな喜びますよ」


「え??」


わたしはほとんど意識していなかったというのに急にそんなことを言われると混乱します


「あ、でも、お嬢様の専属は私ですからね!あまり他のメイドに優しくしないでくださいね」


いつもと違い、年相応な柔らかな笑顔で言う彼女に少しあっけにとられるも


いつの間にかわたしの着替えに、ベッドメイクまで終わらせているのだから


この…アニーと言うメイドも優秀なんでしょう


「では、お嬢様。ゆっくりお休みください。また後程、様子を見に来ますので。失礼いたします」


先ほどのフレンドリーな様子とは違い、いつもの硬い表情に戻ると部屋を後にするのでした


ふう、緊張しましたわ…


名前を聞くのがこんなに疲れるなんて思いもしませんでしたわ


考えてみれば、普段わたくしは皆から紹介される側


自分から名前を聞くことなんてありませんもの


そう考えるとヴィー様、名前は違いましたけど、愛称が同じで助かりましたわ


さて、ベッドに横になり少し状況を整理いたしましょう


わたしのあの夢…いえ、あれは夢ではなかった


もし実際に経験したことだとしたら…


ブルルッと体が震えます


考えたくないですわ…わたくし2度も処刑されたのですの?


身に覚えのないことで…いえ、本当に身に覚えがなかったのかどうかは


はっきりとはわからないのですが…


あの卒業パーティの時、上げられた罪状、


殿下の隣におられた、あの男爵令嬢…でしたかしら


あの方にわたくしが何かをしたと…おっしゃっていましたわね


もし…もしですが…このままいくと…


先ほどより大きくなっていく体の震えを、必死で抑えるよう両腕で押さえつけ 


深くベッドにもぐりこみます


恐怖が全身を覆い尽くし、もはや思考は限界を迎え、


わたしは逃げるように深い眠りへと落ちるほかありませんでした。


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