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第5章 断罪からの離脱 第1節


第5章 断罪からの離脱 第1節



「――・エリザベート・ヴァルトシュタイン公爵令嬢。

これ以上、君の振る舞いを見過ごすことが、できない」



……ああ


もう、殿下のおっしゃる言葉も、


わたしには…



あれから何度目でしょうか


ヴィー様との甘い日々の終わりを告げる言葉


受け取り方によっては


新しい始まりを告げる言葉と言えなくもありませんが


言葉の意味的には、終わりの言葉の方が合っているのでしょう。


この半年と言う期間を何度繰り返しても


ヴィー様との日々は


新鮮な驚きの連続で


公爵令嬢と侯爵令嬢の二人ですもの


礼儀作法など貴族のマナーなどは


十分すぎるほど身についておりましたが


二人して帝都散策しながら庶民の生活に触れる


それだけで驚くような体験ばかりで


…楽しい事ばかりではありませんでしたが


本来ならば決してこの先知るようもなかった


そう言った事も多かったでしょう


わたしたちはあくまで貴族の令嬢


この先、夫となる人の支えとなる事はあっても


この国を憂うことはあっても、


その行方に直接携わることはない


それが、わたしたちの立場なのですから。


「よって、ここに宣言する。

君との婚約は――破棄、だ」



ありがとうございます


今だからこそ、そう思うのです


あなたの婚約者とならずに済むことで


わたしが得たものは


あなたの隣では決して得ることが出来なかったものばかりなのでしょう。



殿下の後ろに控える護衛へと視線を向け、


何かを言いだす前に、きつく睨みつけます


すると、ズレた眼鏡をクイッっとするだけで、


大人しいものです。



殿下のお隣のピンク頭も


あなたに国母が務まるようにはとても思えませんが


それはきっとこの脚本を書いた誰かが考えること


もしかするとあのピンクも只の役割に当てはめられている、


だけなのかも知れませんわね



「エリザベート。君はこれまで、この者に対し数々の嫌がらせを行ってきた」


「学園内での中傷、孤立化、器物破損、階段から突き落とそうとした件……」



空虚な罪状に揺れ動かされるわたしはもうここにはいないのです


そして…その言葉を鵜吞みにする学友もいないと、


信じる事も出来るようになりました


周囲のざわめきに聞こえてくる声にも


信じられない、あり得ないと、エリザベート様ならその程度で済まないわ、など声が混じります


…毎回同じ方かしら?いずれ突き止めることとしましょう


でも嬉しと、そう素直に思います


わたしはただ日々を、精一杯楽しんでいただけなのに


最初の頃には聞こえてこなかった皆の声がわたしに自信を与えてくれます


わたしは間違ってはいない…そう胸を張っていいのだと


「何か言い分はあるか」


「ええ、何もありませんわ

 その方が都合もいいのでしょう?」


背筋を伸ばし胸を張り


殿下の後ろに居るであろう誰か、に


皮肉交じりで言い切ります


何度も繰り返すうちに


この芝居そのものを成立させないようにするには、と


行動に出ることもありました


この場にわたし自身がいないとどうなるのか


…遅れてきたわたしに合わせて断罪が始まるだけでした


パーティー自体に出席しなければと


心配する両親を説得し屋敷に居たこともありました


…屋敷に護衛の者が来てこの場に連行されましたわ


あの時ほど両親に申し訳ないと思ったことはありませんでした


パーティー自体をめちゃくちゃにと


会長である弟を拉致してみたり


ヴィー様と二人でお揃いの赤いドレスを着て

 

悪役令嬢コンビで男爵令嬢をざまあ?してみようとしたことも


…ああ、思い出すと今でも笑顔がこぼれますわ


あれほど楽しいこともそうありませんでしょう


ええ、他にもいろいろと楽しん…試してみたりしたのですよ?


それでも、この断罪は


まるで巨大な渦の中心へと、


すべてを巻き込みながら飲み込んでいくように


一つの結末へ収縮していくのです



「もういい。これ以上の弁明は不要だ」



弁明などしていませんのに


この場で殿下方に違和感を感じておられる方はどれだけおられるのでしょう



知らずに上げられた幕ではありますが


幕を下ろすそのくらいの役割は請け負いましょう


「お騒がせいたしましたわね、みなさま

 身に覚えのない事ではありますが殿下がおっしゃることですもの

 しっかりとした証拠も証言も用意されていることに違いありません

 皆様にはご心配をおかけして心苦しいのですが

 せっかくの卒業パーティの場

 これ以上、

 この場の主役である卒業生の皆さまの邪魔をするわけにはいけませんもの

 わたくしはここで失礼させていただくことにいたします。

 どうか皆さまには、最期まで楽しんでいただきたく存じますわ」


周囲をゆっくりと見渡しそう言うと


 「では、みなさま。ごきげんよう」


その場で一礼し、会場を後にするのです




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