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第4章 変わらぬ断罪 第9節



第4章 変わらぬ断罪 第9節





「わたくし決めましたわっ!」


校舎へ続く石畳の通路の途中


あの方の姿を見かけた瞬間、駆け出し


金髪縦ロールをなびかせ


…わたくしをお待ちになっていたのでしょうか


口元に扇子を当て高笑いを始めようとした


ヴィー様に、そのままの勢いで抱き着き


続けてこう宣言したのです


「わたしは楽しむことにしたのですっ!」


「うげぇ、エリザベート様…ぐるじぃです…」


「何も考える必要なんてなかったのですっ!

 わたしは、わたしの思うように楽しめばよかったのですわ!」


「こうしてまた、ヴィー様もおられるのです、

 きっと毎日が楽しいに決まってますわっ!」


ええ、こちらでも会えましたもの


ざわつく周囲を気にも留めずにわたしは一方的に話し続けます


「訪れるかわからない未来より、確実に在る今

 これを楽しまないでどうするのです」


「いつか終わりが来るのかもしれません、

 でも、ヴィー様と、

 いえ、ヴィー様だけではなく、

 皆と過ごす毎日が楽しいものになるのならば

 もし、先の無い未来だとしても、

 後悔することなく過ごしたい、そう思うことが出来たのですわ!」


「…あら?ヴィー様?どうかなされました?」


一方的に話すわたしに呆れたのか、ヴィー様の反応がありません


「エリザベート様…そろそろヴィー様をお放しくださいませんと、

 意識を失いそうです」


いつの間にか居たヴィー様の側付きの侍女…


この方もそう言えば毎回同じ方のような気がします


何度お名前を聞いても


「…とんでもない、エリザベート様に覚えていただくほどの名ではありませんから」


と、教えてもらえないのですが…


いえ、そんなこと考えている場合じゃ


「ヴィー様!」


思わずヴィー様を抱きしめていた腕を離します


「い、息が…苦しかった…ですわ」


ふらふらするヴィー様を侍女が受け止めます


「申し訳ございませんわ、つい、

 ヴィー様をお見かけした嬉しさそのままに飛びついてしまいましたわ」


「なにが、つい…なのかわかりませんが…エリザベート様」


「エリーですわ」


にこりと微笑みながら圧を掛けます


「…エリー様」


「エリーですわ」


にこりと微笑みます


「…エリー」


「はい、ヴィー様」


とても良い笑顔でお返事します


「よかったですわね、お嬢様。

 これでご自宅だけでなく外でもエリーとお呼びできますね」


相変わらずヴィー様の侍女がポロリと暴露します


「あ、あなたは黙りなさい!」


侍女とヴィー様の小気味良い言葉のやり取りも


このお二人は変わらぬのだとわたしを安心させてくれます


わたくしたちが少し落ち着いたように見えたのか


騒がしかった周囲も徐々に落ち着きを取り戻しました


「それで、…エリー、

 先ほどは何か色々とおっしゃっておられましたが…

 あまりよく聞こえませんでしたもので

 なにを仰っていらしたのかしら?」


「ふふ、そうなのです

 わたくし、ヴィー様ともっと

 いろいろ楽しみたいとそう思いましたのっ!」


「いろいろ?楽しむ?」


「ええ、」


「よくはわかりませんが…

 そうは仰いますけど…お互いの家の事とかありますでしょ?

 わたくしとしましては…エリーが望むのでしたら…」


「そう言ってくださると思いましたわ!

 家の事なんて大人に任せておけばいいのです

 それに、わたし達が爵位を継ぐわけではないでしょう?

 あ、ヴィー様はうちの公爵家にお嫁に来るのでしたわね」


わたしは嬉しさを隠そうともせず、


ヴィー様の腕をとって会話を続けます


「な、な、」


「うちの弟も、最近はツンツンしてますけれど

 あれでおねーちゃんにべったりですから

 でも、ヴィー様なら文句も言わせませんわ」


「わ、わた、わたくしべ、べつに…」


「あら、別に隠さなくても昔から知ってますわよ?

 殿下の婚約者に選ばれなくて、ほっとしていたことも

 でも立場的にわたくしに文句を言わなければいけなかった事も」


「な、な、何言ってますのよ!!!」


「ふふ、おかわいらしいですわねヴィー様は」


慌てるヴィー様の腕を引きながら校舎に向かいつつも続けます


「ああ、なんて素晴らしい未来でしょう!」


…そこにわたしはいませんが


それでも、見ることの叶わぬこの先の未来が


そう想像したような、


明るいものであればと…


「これで、わが公爵家も安泰ですわ、ね、ヴィー様」


決して心情は悟られるわけにはいかないと


わたしはヴィー様に微笑み言うのでした




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