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第4章 変わらぬ断罪 第5節



第4章 変わらぬ断罪 第5節




それからの日々は充実した日々でした


ヴィー様との蜜月…コホン


ええ、楽しい毎日を過ごしていたのです、


向き合うべきことがあるのは理解はしていました


…でも同時にどうにもならないのではないかという思いも


忘れようとしていたのかもしれません


でも、それ以上にヴィー様との会話の中で気が付くこともありました


いつもわたしを優しく見守ってくれている両親


繰り返すたびに容姿は変わりますがあの瞳の奥に宿るものは何も変わりません


それにアンナとイリスの二人も、


目覚める以前のあの二人は何処か距離を感じるものがありましたけれど


あれは彼女たちなりの気遣いでもあったのでしょう


公爵令嬢、殿下の婚約者として生きようとするわたくしに対しての。


ちゃんと見ていてくれている方はいたのです


わたしはそんなことにも気が付かずにいたのですね


そう気が付いてわたしは少し…いえ、少しではないのかも?


甘えてしまったのでしょう


…はしゃいでいたとも言えなくはありませんが


「ヴィー様っ!」


「またですの…ちょっとエリーもう少し離れなさいな」


「いやですわ」


笑顔でそう言いながらヴィー様の腕をとるのです。


もともと家が政敵で殿下の婚約者のライバルでもあったことは皆の知ること


わたくしに何かあれば次に殿下の婚約者となるのはヴィー様でしょう…本来ならば


…今はわかりませんが


学園では挨拶はすれども、こうして表立って一緒にいることは避けていましたもの


いったいどうしたのかと学園では話題にはなっておりましたが気にはしません


ざわつく皆を気に留めることもなく今日もヴィー様との時間を大切に胸に刻むのです




####################################




「そうですわ!わたくしヴィー様と行きたいところがありましたの」


それは前回に訪問した所


隣の席のソフィさま、今回はルイーズ様でしたけれど


ルイーズ様に教えてもらった劇場ですわ


「ひゃ、わ、私も行くんですか?」


「ええ、もちろんですわ、また…いえ

 初めてですわね、ええ、慣れていないものでお詳しいでしょ?ルイーズ様」


「え、ええ、劇場には何度も行ってますけど…え?

 エリザベート様とヴィルヘルミナ様のお二人…と?私がですか」


「もちろんわたくしのお付きのアンナとイリスに、ヴィー様のお付きの方もですが

 ええ、あなたもですわよ」


「む、むむむむむ…」


ルイーズ様が小刻みに首を左右に振って何やら言おうとしておられます


「むむ?」


「むりですっ!」


そう言いながら教室を飛び出していかれました


…困りましたわね


その様子を見ていたのか


「お嬢…あんまり無理言ってやるなよな」


アンナが近寄りそう言います


「そうですの?きっと楽しんでいただけると思ったのですが…」


少し呆れたようにアンナが言います


「お嬢が最近ルイーズ嬢によくかまうから少は慣れてきたと思うけどさぁ

 貴族とも取引のある大商会のお嬢様と言え、普通に庶民なんだから

 公爵令嬢に侯爵令嬢だぞ、しかも上から数えて1番と2番じゃねーか

 勘弁してやれよ」


…もう一度一緒に見たかったのですが


そう言われてしまうと仕方がないのでしょう


「わかりましたわ…ルイーズ様はあきらめましょう

 でもそうすると…

 どうしたらいいのかしら?」


「あのなお嬢、それこそ公爵令嬢なんだから言えば何とでもなるだろ?」


ますます呆れた表情でアンナに言われました


「では…アンナ、チケットの手配やらお願いしてもよろしくって?」


「はぁ最初っからそれでいいんだよ、で何か見たい芝居であるのか?」


たしか以前もこのくらいの時期でしたから大丈夫でしょうか


「ええ、あ、そうですわルイーズ様が戻られたら聞いておきますわ

 お誘いできないのは残念ですが、それくらい、いいでしょう?」


「ああ、聞くだけな?いいか?聞くだけだからな」


なんでしょうこの子供にでも言い聞かせようとするような態度は…


「わかっておりますわ、ルイーズ様に嫌われたくはないですから」


「へぇ、お嬢が嫌われたくないってね」


なんだかニヤニヤするアンナの額を手にしていた扇子でペシッとすると


…ふふふ、ヴィー様とお揃いですのよ


「もう、いいから席に戻りなさいな」


「ってーな、お嬢」


額をなでながら席に戻るアンナは何処か…

 

ほんの少しですが嬉しそうに笑みを浮かべていました


…あの子変な癖があったりしないわよね


その後授業開始の鐘とともに戻ってきたルイーズ様に


…こちらが申し訳なくなるくらい頭をおさげになられていましたが


今やっているお芝居の事を聞き


もちろん機会があれば一緒にお芝居に行く約束も取り付け


その日を楽しみに過ごすのです




###################################




観劇を終えわたしが今回も悪役令嬢に感銘を受けていますと


「あれは…わたくし?

 わたくしがお芝居になりましたの??」


それ以上にヴィー様が面白い…けふん


わたしが想像していた以上に感動された様子でした


「エリーわたくし天啓を受けた気分ですわ」


天を見上げ何か祈りにも似た表情でこうおっしゃいます


「ええ、ヴィー様ならきっとそうおっしゃることと思っていましたわ」


以前わたしがそこにヴィー様の存在を感じたように


ヴィー様には何か悪役令嬢に感じ入るものがあったのでしょう


暫くその場で天を仰いでいらっしゃいました


「お嬢様、往来の邪魔になりますので行きますよ、ささ」


いつものお供の方に腕を引かれて馬車に乗り込む間もどこか放心しておられましたが


…まぁそのうち目覚めることでしょう、


お芝居にヴィー様と面白いものが見られてわたしは大満足な日だったのです


ほかの日にも


ヴィー様をつれてルイーズ様の商会に訪問したとき


…帝都をこうして歩くのも初めてでした


突然の訪問で商会中の皆さんが大慌てでしたけれど


「エリザベート様!ほ、本日はど、どのようなご用命でしょうかっ!」


あら、どことなくこの小刻みに震えながらお話しされる様子は


ルイーズ様に似ていらっしゃいます


恰幅の良い身なりもシャンとしていらっしゃいますけど何処か小動物的な雰囲気がありますわ


「ええ、近くを散策していたのですけど

 こちらルイーズ様のご実家の商会でしょう?

 いつもお世話になっておりますから、ご挨拶にとお伺いしたのですけど

 …ご迷惑でしたかしら?」


「と、とんでもない!

 エリザベート様にヴィルヘルミナ様をご迷惑などと!」


「ほら、お嬢~やめときなって言ったじゃねーか」


アンナがまた呆れたように言いますが


「でも歓迎していただけていますわよ、ね?ヴィー様」


「わたしに振らないでよ…」


…困惑されているヴィー様もたまりませんね


「エ、エリザベート様、ど、どうしてこちらに」


あら、ルイーズ様もいらっしゃいましたわ


「ふふ、お二人並ばれるとよく似ていらっしゃいますわね」


…特に小動物的なところとか


「そ、そうですか…うぅ」


困惑しながら見つめあっているお二人は仲のいい親子なのでしょうね。


その後は商会の中を案内してもらい、


隣国の珍しいものや、


ヴィー様とお揃いの小物などを見繕ってもらいながら


最後にこれも隣国の、珍しいお茶をごちそうになって商会を後にしたのです


「お嬢、うちらだけならいいけどさ

 立場があるんだから、思い付きで動かないでくれよ?」


「エリ様ダメ」


アンナとイリスに苦言を…とはいえどこか楽しそうに、言われますが


「ふふ、いいのです、楽しかったでしょう?、ね、ヴィー様も」


「そ、そうね、たまにはこうやって帝都を散策するのも悪くはないわね

 珍しいものもありましたし。

 あ、でもエリー、ルイーズ様にはきちんとお詫びしておくのよ

 ずっと震えていて、見ていてかわいそうだったわ」


…あの方が震えているのはいつもの気もしますが


「あら、お優しいのですねヴィー様、わたくし妬けますわ」


「な、何言ってるのよエリー!」


こんなに楽しい日々を過ごしていいのでしょうか


わかってはいるのです


終わりが来ることは


でも今だけは今回だけはこのまま過ごしたいと


抗うべきものを思考の隅に追いやり気が付かないふりをしていたのです






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