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第4章 変わらぬ断罪 第4節



第4章 変わらぬ断罪 第4節



「あの、エリザベート様、いつまで腕を組んでおられるのですか?

 わたくし、動きにくいんですのよ」


サロンに向かう途中、


渋るヴィー様の腕にぎゅっとしがみつきまして


そのまま二人掛けのソファに腰掛け今に至ります


「そんな他人行儀な…いつものようにエリーとお呼びくださいな」


「先程は驚いてつい…言ってしまいましたけど

 わたくし、普段そのような呼び方していませんわよ?」


「あら、お嬢様、お屋敷では、

 何時もエリーとお呼びになっているではありませんか」


いつの間にかヴィー様の側に控えていたお付きの侍女がそう言います


…彼女もこの学園の生徒でしたけれど何時から居たのでしょうか


「な、何を言っていますのっ!」


ヴィー様は慌てて否定なさろうとされますが


「ええ、ぜひ今後もエリーと、どうかお願いいたしますわ」


腕を組んだまま、にっこりとわたしは言うのです


「ええ、まあ。エリザベート様がそうおっしゃるのなら…」


「エリーです」


「…エリー」


「はい、ヴィー様」


それだけで、胸の奥が少しあたたかくなりました。


「あなたたち、これ…どうにかしてくださらない?」


部屋の隅に控えるわたくしの側使えの二人に向けて


ヴィー様が話しかけます


「いや、わたしらも…どうなってんだか…なあ?」


「うん、エリ様へん」


アンナとイリスでしたわね、


そうでしょう、わたし自身ヴィー様をお見かけした瞬間


本能のごとく捕まえたくなっただけで…


あまり何も考えてはいませんでしたもの


「でも、お嬢の事だからな…最近はおとなしかったけど

 我慢できなくなったんじゃないか?いろいろと」


こちらのアンナも相変わらず失礼なことを平気で言いますが


距離感と言いますか…


わたしにだけ、これまでの記憶があるからこそ


また一から関係を築きなおすことに、


どこか躊躇いもありましたが


どうやらそんな距離感も気にするほどでは無くなったのかもしれません


「エリ様、ちょっとあれだから」


イリスがぽつりと言いますが


…以前より辛辣になっていませんこと?


「いいではないですか、わたくしヴィー様にお会いしたかったのです

 たとえ…昨日お会いしていたのだとしても

 わたくしにとっては、少しだけ…

 少しだけですが…長い時間に感じられたのですわ」


わたしが置かれている状況を説明せずに


皆の事を説得できるような言葉は、


どうしても浮かびません。


少し歯切れの悪い言葉になりましたけれど


わたしの言葉に耳を傾けるヴィー様は


何かを感じ取られたのかもしれません


そして勢いよくこう言われたのです


「ふん、要するにエリー、

 あなた、さみしかったのですわね」


ものすごく簡単な言葉でまとめられてしまいました


「え、ええ、そういわれると…その通りなんですけれど」


思わずわたしも驚いて返します


そんな簡単な一言にまとめられるのも…


「まったく、エリー、あなたはいつの頃からか

 頭で難しい事ばかり考えるようになりましたわね

 昔のあなたは考えるより体が先に動いていましたのに」


えぇ…わたくしそんなでしたかしら…?


「いきなり飛びついてくるのは…少し懐かしい気もしましたけど

 あなた、訳の分からない行動をしている割には

 何処か冷静に、何か別の事ばかり考えているでしょう?」


その言葉に少し、胸がどきりとします


「きっとそれは、わたくしたちには言えない事なのかもしれません

 けれど、このような無茶な行動に出る前に

 もう少し素直に頼って下さってもいいのでは無いのかしら?」


ヴィー様の言葉が胸の奥まで染みわたっていきます


わたしは素直ではなかったのでしょうか


「わたくしは…素直に思いを言葉にしてもよいのでしょうか…」


言うべきではないと、


その思いはあるはずなのに言葉が漏れてしまいます


「エリー、あなたは公爵令嬢として、殿下の婚約者としての立場があります

 でも…でもねエリー。

 あなたはわたくしの友人なのです、それは役割でも立場でもない

 このわたくしが、あなたと共に紡いできたものなのです」


ああ、この方は、わたくしではない、


このわたしを見ていてくれていたのですね


だからこそ、わたしはこの方に、


これほどまでに心惹かれてやまないのでしょう


「ヴィー様っ!」


思わずと言うより、確信犯的にヴィー様に抱き着きます


「うぎゅ、エリー…

 だからその突然抱き着くのをやめなさいっ!」


「ええぇ、今のいい感じの話で抱き合うところではないのですか?ここは」


「あなた…わたくし真面目に話をしてましてよ…」


「わかってます…わかっているのですわ…」


わたしはヴィー様にすがるように体を預けるのです


「少しだけ…このままでいさせて下さいまし」


「まったく、仕方ありませんわね、今だけですわよ」


そう言いながらヴィー様の手が


子供でもあやすかのようにわたしの頭をなでるのです


「お嬢様、ナイスツンデレ」


「あなたねっ!はぁ、台無しですわ…」


そんな、ヴィー様と侍女の言葉の意味は分かりませんが


以前と変わらぬ会話に安心するのでした




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