第4章 変わらぬ断罪 第1節
第4章 変わらぬ断罪 第1節
「――エリザベート・リヒテンフェルト公爵令嬢。
これ以上、君の振る舞いを見過ごすことが、できない」
……あら。
今、殿下はなんとおっしゃいましたの?
視線を向けると…あんなお顔でしたかしら、なんだか覇気の無い
この国の第一王子なんですから、そんなことでどうするのです
ええ、いつものですわね
さすがに覚えていますわ
覚悟はしていました、
でもやはり実際に聞くとなると少し体に震えが走ります
…そんなことでどうするのですエリザベート、そのための装いでしょう
「よって、ここに宣言する。
君との婚約は――破棄、だ」
ああ、やはり筋書き通りなのでしょうか
この後にくる言葉さえ同じなのでしょう
…いったい誰の脚本なのかしら
「おい、聞いているのか?」
この方はいったい何時までサイズの合わない眼鏡を使われているのかしら、
いくら学生とは言え殿下の護衛役なのですから、いい加減眼鏡の一つも買い替えなさいな
そして殿下の隣には
もちろんいますわねあのピンク頭
頭の中までピンクなのではないのかしら
下品なピンクのドレスに、高級そうな装飾に碧い宝石の付いたペンダント
宝石に負けていましてよ
あら、泣き真似でしょうか、よく見ると下品な笑いを浮かべていらっしゃるわね
周囲の方も、
見飽きた芝居を鑑賞するかのように、
何処か知っている話を見るかのような表情を浮かべておられます
ええ、これも筋書きなのでしょう。
そろそろですわね
わたしが声を上げるとしたら
…ヴィー様お力を…わたしに勇気を…
「エリザベート。君はこれまで、この者に対し数々の嫌がらせを行ってきた」
「学園内での中傷、孤立化、器物破損、階段から突き落とそうとした件……」
ここですわねっ
「おーほっほっほ」
扇子を広げ口元を隠すように笑いだすと
突然のわたくしの態度に驚くように、周囲がすこしざわめきはじめます
でも、殿下は無反応ですわね
「ええ、ええ。
おっしゃる通りですわ
すべてわたくしがやりましたことですが、
それに何か問題でもありますの?」
わたしは知っています
その罪状が、空虚な台詞でしかないことを。
日々を記録していく中で
わたくしが何かすることは無かった
わたくしの代わりに誰かが嫌がらせなどをするようなこともなかったと
今回は自信を持って言えるのです
ただ、罪状だけがこの場で挙げられている
そこに事実は関係なく、
ただ安い芝居を演じるためだけの台詞なのでしょう
ならばこそと、それを認めてしまえば…
ざわめきが大きくなります
「お嬢、何言ってんだよ」
少し焦ったように後ろに控えていたルチアが小声で言いますが
構わず続けます
「何か問題でもありまして?
そのお隣方、お名前は存じ上げませんが、
その方が周囲の忠告にも耳を傾けることもなく
自らの立場も理解できずに
立つべきではない場所に立とうとするのです
ならばそれ相応の扱いを受けるのが筋ではございませんの?」
ええ、まあ今思いついた台詞ですけど
「お嬢っ」
「エリ様」
せっかくわたくしが何もしていないことを証明するために
協力してくれていた二人には申し訳ないとは思います
でも、決めていたのです
もし、もし今回、
このパーティーの場で断罪が無ければ
わたしは殿下の婚約者としてこの先の役割を演じて行けるのかと
そう考えてしまったときに
それならばと
男爵令嬢と言うお芝居に出会えたのは天啓だったのかもしれません
わたしはヴィー様のお姿を演じることで
この場に対峙しようと、そう考えたのです
「何か言い分はあるか」
わたくしの言葉に返答するにはどこかズレた台詞
あぁやはり、わたくしが何か言おうとも、
この筋書きは変わらないのですね
喉から出そうになるセリフをグッと抑え込み
「わたくしは、公爵令嬢として、殿下の婚約者として
当然の事を示しただけですわ
そこは貴方ごときがいていい場所ではないとっ」
ピシッと音がするかのように手にした扇子を令嬢に向け
わたしは言い切ります。
変わらないのですね殿下の表情は
でも、お隣におられる男爵令嬢は何故か驚愕に目を開いておられます
そんなに驚くことでしょうか…
まさかあの方が?
いえ、あの方が脚本を書いたとしても
それでこの舞台を用意できるほどの何かがあるとは思えませんけれど…
「もういい。これ以上の弁明は不要だ」
殿下の声が、わたくしの言葉を切り捨てました。
ここまでしても会話が通じませんのね
「わかりましたわ。
殿下のお考えが変わらないのであれば
わたくしから言えることは何もありません」
毅然とした態度でひるまずに
言い切ることは出来たのでしょうか。
会場のざわめきは収まることもなく
三文芝居を見るようにつまらなさそうにされていた殿下の周囲のかたがたも
どこか動揺されているよう
とは言え筋書きが変わったわけではありませし、
わたくしが何か言い返すとは思われていなかっただけでしょうか
そうしてるうちに殿下の護衛の方が背後に立ち
わたくしの腕をとろうとされます
「離れなさいっ!
わたくしを誰だと思っているのです
逃げも隠れもするつもりはありませんわ」
職務に忠実なのはわかりますが、
もう少し女性の扱いを覚えた方がよろしくてよ
そして優雅に
…決してわたしの奥底にある動揺を悟られぬように
わたくしはゆっくりと会場すべてを見渡して言うのです
「それでは、皆さま
お目汚しをいたしました
わたくしはこれで、
失礼させていただきますわ」
そのまま会場に背を向け
「お嬢なんでだよっ!」
「エリ様ぁ」
ルチアの少し怒ったような声と
ノエルの泣きそうな声が聞こえてきます
そう言えばソフィ様はどうなされていたのでしょう
貴族が中心の会場ですものどこかの壁際で
また小刻みに震えていらっしゃったことでしょうね
ふふ、見て見たかったですわ
そうして会場の扉をくぐり
あの暗い部屋へと続く長い道を歩みだしたのでした。
お読みくださりありがとうございます
PV1000超えてました、感謝です
この辺りで半分超えたあたりで、
終章までは決まっていて後は文章にするだけなので
書き始めると文章が増える病が発症しない限り
一気に書き上げる予定です
今後の励みにもなりますので
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言ってみたかった\(^o^)/




