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第3章 断罪の前日 第5節



第3章 断罪の前日 第5節



声だけが聞こえてきます


「……」


それは、この迷宮にとらわれているわたしを救うものではなく


「……」


その声は、苦悩、歓喜、葛藤、困惑、悶絶、焦燥と、誰かの叫びなのか


「……」


わたしくしの運命をもてあそび踏みつける呪いの声なのか。


わたしにはわかりません


ただわかるのは


わたしには抗うことが出来そうにないと、それだけなのです



##########################



「おはようございます、エリザベート様」

「今日はどうなさりますか?少しはお身体を動かさないと病気になりますよ」


案外、意識ははっきりとしているのです。


けれど、


この身体を起こすための気持ちだけが、


どうしても、わたしの中から見つかりませんでした。


話しかけられていることはわかるのです、


言われている意味も分かるのです


けれど、言葉がのどを出ないのです


あれから幾日過ぎたのでしょうか


心配する両親、弟、


アニーと他のメイドたちも、


ルチアとノエル、それにソフィも連れてきてくれましたわね


…公爵家の屋敷と言うことでずいぶん怯えて震えていらっしゃたけれど


心配する皆には悪いと思ってはいるのです


わたし自身、ヴィー様にお会いできないと言う事が


これほど胸に痛みをもたらすとは思わなかったのです。


思い返せば…ヴィー様とは…


わたしは、なぜそれほどまでヴィー様にお会いしたかったのでしょう…


そうですわ


おそらく初めて断罪の場から連れ出されたときに聞こえた声


あの時の声がヴィー様でした


突然の出来事に困惑しているうちにホールを連れ出された時に聞こえてきたのでした


あれで少し、ほんの少しですが気持ちが柔いだのです


その後、夢から覚め…いえ、認めましょう、


これは夢ではないと、何処かこれは夢であってほしいとそんな思いがあったのでしょう


何処か自分の事ではないと、そう思って、思い込もうとしていたのかもしれません


断罪の後、わたくしは処刑…されたのでしょうか


…少し体に震えが走ります


どうにも、断罪の場を退出してからの記憶が霞がかったようになるのです


考えたくはありませんが


わたくしは断罪され処刑されて…


その後目覚めると、おおよそ半年前に戻っていると


…なぜそんなことになっているのかはわかりませんが


ともかく目覚めて混乱したまま、その後学園に向かうと、


ここでお会いしたのでしたわね


もちろんこれまでにも幾度となくお会いしていたのですけど


あの時はどれほどヴィー様に会えて嬉しかったのでしょうか


知らない世界に投げ出され


知っているとわたしを心から安心させてくれた方


その後も、


2度目の断罪、…処刑…目覚め、


今思い出しても恥ずかしいのですけど


この時は思わずヴィー様に抱き着いてしまったのですわね


…柔らかかったですわ


混乱するわたくしを優しく抱き寄せていただき…ましたかしら?


ええ、まあ彼女が優しい方であるのは間違いありませんから


その優しさにどれだけ救われたことか


その後の断罪の場でも


わたくしの為にあんなに声を荒げになられて


扇子をピシッと殿下に向けられ全く怯むこともなく大胆に


凛々しかったですわ


その後少し締まらないのもヴィー様らしく。


…そう言えば卒業パーティーに遅刻してこられるなんて


派手好きのヴィー様らしくは無かったですわね


弟も姿を見ないままでしたし。


何かあったのでしょうか


そして…今回の目覚め


そこまで考えると、身体の震えがいっそう大きくなります


ヴィー様…どうしたのでしょうか


目覚めて学園に向かった初日の…あの出来事で


…わたくし…恥ずかしい思いばかりしていないかしら?


学園の皆様の事はほとんど把握出来ていませんけど


あれほど、目立つ方なのですもの


今までと容姿が変わっていたとしても、


ルチアとノエルの二人が知らないのでしたら


今回のこの世界にはヴィー様は…


学園に行けば確かめることもできるのでしょうが…確かめることが怖いのです


何故でしょう、


今までも容姿や名前の差異はあれど、


変わらぬ日々が待っていましたのに


例外と言えばアニーですけど…


あの様子では何か知っているようには思えませんし


たまたまなのでしょうか…それを確かめるにはまた断罪…


震える体を両腕で抑え込みます


いやですわ、


もういやなのです


このまままたこの時間を過ごしていけばまた断罪…処刑へと


そんなまるで脚本の手直しされたお芝居を何度も再演するようなこと


いえ、これが本当にお芝居であれば


わたくしは何も考えずに、


与えられた役割を演じるだけで、何も考えなくていいはずなのに


…役割


少し何か引っかかりを覚えますがそれが何かはわかりません


もし…もしですが


わたくしに何らかの役割があってそれを演じることを与えられているとしたら


再演され続けるお芝居の中でわたくしがその役割から外れるとしたら


この再演も変わってきたり…


とげの様に、胸に引っかかる言葉を繰り返し反芻し


今のわたしには思考を続けていくことしかできないのでした



######################################



深い思考の海に沈んでいると…遠くから声が聞こえてきます


「エリ様まだダメ」


「起きてはいるんだよなぁ、食事もちゃんと摂ってるって言ってたしな」


「…あの…私付いてきてよかったんですかね?」


「あ、何言ってんだソフィ嬢、心配だっつーから連れてきたのに」


「はいっ!あの、心配は心配なんですけど、私のようなものが公爵様のお屋敷に…」


「大丈夫だって、旦那様は今いないし」


「いやっそれっ余計ダメな奴じゃないですかっ!」


「ちゃんと許可は取ってるよ~、この間も来ただろ?」


「ううぅ…」


「ソフィ大丈夫」


「ノエル様、そんな笑顔で言われてもぉ」


「これだけ騒いでても反応ないからなぁ、おーいお嬢~聞こえてるか~」


聞こえてはいるのです、ただ聞こえているだけなのです


「つかさ、お嬢は、殿下の事より、何てったかな

 馬車に乗る前に聞いてた名前?」


「ヴィー様言ってた」


「あーそんな名前、一応さ、金髪で、縦ロールの生徒がいないか、

 他の学年も含めて探してみたんだけど

 今どきそんな髪型いないよなぁ」


「そうですね、お芝居の中の悪役令嬢とかならそんな髪型もしていそうですけど」


「お、ソフィ嬢芝居とか見るのか?」


「はい、父の商店の方で劇場とか劇団の方に出資していたりするので、

 よくチケットをいただくのです。」


「おお~、さすが皇国一の大商会のお嬢様」


「いえ、そんないいものでは…

 あ、興味がありましたら、お譲りしますよ、チケット」


「私はいいかな~途中で寝ちゃいそうだし、ノエルは~?」


「エリ様起きたら一緒に行く」


「あ、はい、でしたらエリザベート様と二人分用意しておきますね

 …はやく意識がはっきりしてくださるといいのですが…」


「まぁともかくその悪役令嬢風なヴィー様?

 の名前出してから、おかしくなったんだよな」


「だぶんそう」


「私はその時いませんでしたが、

 どういう人なんですかね、その悪役令嬢のような方」


…ぼんやりと聞こえる会話に少し引っかりを覚えます


「…悪役…令嬢」


知らず呟いていたようで


その言葉が何故かかけた歯車がかみ合ったように


すっとわたしの心に入り込んできたのです


「…お嬢?」

「エリ様?」

「エリザベート様っ!」


少しずつ前が開けていくように思考が止み


うつろ気だった視界に3人の姿が映っていきます


「メイドか誰か呼んでくるから、ノエルと、ソフィ嬢はお嬢を頼むっ」


そう言うとルチアが部屋を飛び出します


「えっと…わたしは…」


「心配した」


そう言うとノエルが左腕にしがみついてきます


「よがっだでずぅぅう」


その後ろでソフィが声にならない声を発しながら涙を流しています


暫くすると、アニーと白衣を着た医者でしょうか。二人を連れたルチアが戻ってきます


「お嬢様っ、お加減は?大丈夫ですか?」


矢継ぎ早に質問するアニーに


「落ち着きなさい、迷惑をかけたようですわね」


「ほんとですよもうお嬢様は、心配したんですからね…」


憶えている限り常に笑顔を絶やしたことないはずのアニーが少し涙目になり言います


…よほど心配かけていたようですわね


「ルチア、ノエル、そしてソフィも。心配をおかけしました」


「ほんとですよお嬢、もう勘弁してくださいよ」


「うん心配した」


「よがっだでずぅぅう」


…ソフィは泣き止むのかしら


その後お医者様の診断を受けると、


「体力は落ちているようですが、

 無茶をしなければ日常生活に戻ってもらっても構いませんよ」


と、一応健康との診断をされ、


夜には帰宅した両親にも泣いて安心されて


少しバタバタするもなんだか懐かしい気のする夜が更けていったのでした


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