第3章 断罪の前日 第4節
少し暗めなので短めに
第3章 断罪の前日 第4節
……硬いですわ
最初に感じたのは、そんな感触でした
……まさか!
勢いよく身を起こすとそこは見覚えのない部屋
ですが夢から覚めた時の様に、装いの変わった自室と言うわけではなさそう
「エリ様おはよう」
「ええ、おはようござい…
あの、ここは?」
「救護所」
貴族の学園なんですから、
もう少し良いベッドを用意しておいてもいいのではないのかしら…
あたりを見るとなるほど、初めて来室したようにも思いますが
間違いなく、ここは救護所なんでしょう
あのような人体模型がある場所なんて、救護所か理科室と相場が決まっています
「それで、どうしてわたくしはここに?」
その時ちょうど救護所の扉が開きルチアが鞄をいくつか抱えて中に入ってきました
「お、お嬢起きたのか?」
「ええ、わたくし、眠っていたのですね」
「びっくりしたよ~、急に気絶するんだもん」
「うん、びっくり」
二人には心配をかけていたみたいです
「そう。でしたのね、それはご迷惑をおかけしまして」
「いいって、そのためのウチらなんだし」
何か大切な話の途中だったような気もするのですが、
思い出そうとすると頭が少しズキリと痛みます
「もう下校の時間だから、馬車呼んでありますよ、鞄もほら」
ああ、ルチアが抱えていたのはわたくしのカバンもあったのですね
「エリ様あるける?」
「ええ、眠ったおかげか体調は問題ないですわ」
そういって、ベッドから身を下ろし
ふと、窓の外を見ると少し薄暗くなっていました
「問題ないなら、馬車寄せまで送りますから」
…そうですわね、
今日はもう何も考えたくないですわ。
「それじゃあ、せんせー、帰りますね~」
ルチアの声に驚き視線の先を見てみると、
何時からそこに居られたのか、初老の白衣を着た先生がおられました
「ええ、エリザベート様、お大事に」
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馬車へ向かう道中、
「あの、あの後ソフィ様は…」
「お嬢を心配してたけど、眠ってるだけってわかったから、
授業に戻ってもらったぜ、
明日お礼でも言っときな、保険の先生呼びに行ってくれたのソフィ嬢だからな」
「そうなんですのね、それでしたら何かお礼の品を」
「そんなんいらないって、ありがとっていうだけで大丈夫だよ」
「しかし…」
「特待生って言ったって庶民なんだから、
公爵令嬢から正式にお詫びの品なんてなったら余計に大変なことになるぜ」
「そういう、ものでしょうか…」
「そうそう、何事もほどほどにってね」
「ルチアがそう言うなら…」
何か大げさではないお礼の品をお渡しできるといいのですが、
「それと、お話は変わるのですが、その…
ヴィー様は本日お会いしなかったのですが、
学園をお休みされていたのでしょうか?」
「え?誰だって?ヴィー?」
「あ、あの、愛称なんですけど。
こう、髪を縦に巻いた、金髪の、
ちょっと、こう、高笑いなどをされるような…方なんですが」
「?ノエル知ってる?」
「聞いたことない」
…どういう事でしょう、
この夢では、愛称も違って、金髪に縦ロールではないのでしょうか…
いえ、容姿はともかく
幼少のころから一緒にいるこの二人にとっても
ヴィー様は幼馴染のようなもの、知らないはずがないのですが
「殿下の婚約者になった頃から、
ライバルとおっしゃってよくわたくしに絡んでいらした方なんですが…
お二人もお会いしたことあると思いますのよ?」
「う~ん、心当たり無いです、
ちっさいころからお嬢と一緒にいますが…
そんな失礼な令嬢いましたか?」
「私もしらない」
……
バタンと、ひざから崩れ落ちます
どういう事でしょう
ヴィー様が…いない?
そんな…
きっと会えると、夢が変わってもまた会えると
そう約束いたしましたのに…
「お嬢っ!またかよ。お嬢っ!」
「エリ様!エリ様!」
二人の呼ぶ声で何とか意識を失うまでにはなりませんでしたが
「もう目の前だから馬車まで運ぶぞ」
「うん」
あの方の声のおかげで、わたしがどれだけ救われたのか、
この夢もあの方がいるからこそ、
また会えると思うからこそ耐えられてこられましたのに…
目の前に大きな暗闇が立ちふさがるように
わたしはもうこの夢でなせることはないとそう思ってしまったのです




