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第3章 断罪の前日 第3節



第3章 断罪の前日 第3節



馬車を降りるとそれはいつもの景色とはやはりどこか違う風景


でも、そこにある


この場所を取り囲む空気などは、


変わらぬままそこに在るように感じられます。


石畳を校舎に向けて歩く生徒たち、それを見守る先生や、警備の者。


何も変わらない朝の学園の景色だと、そう思いたかったのです


今日はヴィー様は…


おかしいですね、姿が見えません


いえ、必ずここでお会いするわけではないのですから…


夢から目覚めると学園のこの場所で必ずお会いしていましたから


今日もここでお会いできるものと、そう思い込んでしまっていたようです。


しかたありませんわね


「おはようございます、エリザベート様」

「ごきげんよう、エリザベート様」

「おはよう、エリザベート様」


「ええ、ごきげんよう」


挨拶を交わしながら、校舎へ向かいます、


ヴィー様にお会い出来なかったことが、


思ったより胸を痛みつけていたのかもしれません。


教室は何処に行けばいいのか考えるのを忘れていました


周囲の同じ色のリボンをつけた生徒が向かう方を見ると


…以前と変わってはいないようですわね


そう楽観視していたわたしを出来るなら思いとどめたかったのです



##########################################




教室の扉をくぐると


ざわざわとなんだか周りが騒がしくなります


何かありましたのでしょうか?


それほど気にせず、教室の中央のわたくしの席に向かうと


「エ、エリザベート様っ、おはようございますっ、わ、私に何か用でございましょうかっ」


見知らぬ生徒がわたくしの席に座ってお隣の方と歓談しておられました


「いえ、その席は、わたくし…」


「エリザベート様っ!このものが何か失礼をっ!、辺境子爵の令嬢なので、

 知らずに何か失礼な事をしてしまったのなら…」


周囲にいた少し高貴な感じがする令嬢が慌ててこちらに向かって声をかけてきます


「いえ、ですからその席は…」


ざわざわと、周囲の喧騒が広がっていきます


…どうしたのかしら、ただ席を空けてほしいだけなのですが


そういえば、この席のお隣に居られる方も、庶民と言うよりは何処か高貴な方に思えますね、


どうしましょうか、なんだか話が通じなくて困りましたわ


そのとき、バンっと教卓を何かでたたくような音が響き渡ります


「どうした、何を騒いでいる」


あれは数術の教師の方ですわね、今日の一限目は数術でしたかしら?


「リヒテンフェルト嬢、どうした、何か問題でもあったのかね?

 なければ自分の教室に戻りたまえ、もう授業が始まる時間だ」


リヒテンフェルト嬢…わたくしのこの夢での家名でしたわね…


いえ、ちょっと待ってください…


今の言葉ですとここは、わたくしのクラスでは…ない?


瞬間、頭の先まで真っ赤に血が昇り、そのまま消えてしまいたいほどの羞恥に包まれたのです



#################################



お昼にサロンにて、



「あーはっはっはっ」


「ルチア笑いすぎ」


「だってよ~、くっくっくっ」


…恥ずかしすぎて隠れてしまいたいです


あれから数時間過ぎたと言うのにまだ顔の火照りがとれていないような気がします


あの後慌てて教室を飛び出したわたくしは、見かねた教師が


「おい、何処に行くんだ、お前の教室は向こうだろ」


と、言われるまで自分の教室の場所が分からず立ちすくんでいたのです


ちょうど授業開始寸前であり、教室にいたものが大半でしたので、


間違えた教室の方々と、廊下ですれ違った数人にしか


見られていなかったのが幸いでしたが


…それでも恥ずかしいものは恥ずかしいのです


「お嬢、どうしたんだ教室間違えるなんてさ、

 まだ隣の教室ならわかるけどよ~、

 間違うか普通?中央階段の反対側だぜ?」


「エリ様寝ぼけてた?」


そうなのです、わたくしが間違ったわけではないのです


わたくしはいつも通りに、ええ、それが油断でしたのでしょうが


今までと同じ教室に向かっただけなのです


それなのに…それなのにですわ!


なんで!今回は!教室の並びが左右逆ですのよっ!


わたくしがわるいんじゃないんですわっ!


「エリ様顔面白い」


「ノエルそれ、あーはっはっはっ」


ちなみにさっきから大笑いを続けているのがルチア、


言葉短くわたくしを貶めているのがノエル


この夢でのお付きの二人ですわね


「…あのぉ…それで…なんで、私がここに連れてこられているんでしょうか?

 あ、いえ、嫌とかじゃなくって、何で…かな…って…」


そうでしたわ、サロンに移動するとき


おもわずお隣の席にいた


この小動物じみたこの方の腕をつかんで連れてきてしまったのですわ


「ええ、それは…」


どうしましょう、何も考えていませんでしたわ


「今のお嬢は多分何も考えてないぜ?、あ、いや、考えてはいるんだろうけど」


「エリ様ソフィの事気に入った、かも」


「二人は、少しわたくしに対してして失礼ではありませんの?」


あまりのいわれ様に、つい少し強めに言ってしまいました


「…ああ。そうだったな、エリザベート様、少し調子に乗った」


「エリ様ごめん」


…空気が一瞬で少し冷たいものに変わりました


「いえ、謝って欲しかったわけでは…」


今回の名前は…ソフィ様でよろしいのでしょうか、


少し離れた席で小刻みに震えていらっしゃいます


悪いことをしてしまいましたわね


「元はと言えばわたくしの行動が原因ですから、

 責めているわけではありませんのよ、

 でも…恥ずかしくて死んでしまいそうなわたくしの心情も

 少しは慮ってくださいまし」


「そうだな、笑いすぎた、…昔のお嬢みたいで嬉しかったんだ」


昔のわたくしって、そんなに笑われることをしていたのでしょうか


「エリ様今日は懐かしい感じがする」


わたくしは何か昔と、それほどに変わったというのでしょうか


「ソフィ様」


「ひゃいっ!」


声をかけると椅子の上を飛びあがったかのように


背筋を伸ばして返事をなさります


「無理やりお連れして、申し訳ございませんでした」


「い、いえ、あ、頭をお上げくださいエリザベート様っ!」


「ご迷惑をおかけしたのですもの、お詫びして当然ですわ」


「わ、私は大丈夫ですから、大丈夫ですから」


…どうにもこの方と接すると何故だかぎゅーっと抱きしめたくなりますわね


それはさておき、


そうですわね、この3名がそろっているのもちょうどいい機会ですし


少し確認してみましょうか


「それで、皆に少しお聞きしたいと言うか、ご存じでしたら教えてもらいたいのですが」


「どうかしたのかお嬢?改まって」


どこか少し察したような表情のルチア


「ええ、その…殿下の事なんですが…」


少し緩み始めた空気がまた冷たいものに変わります


「…殿下の何が聞きたいのですか?エリザベート様」


先ほどの緩んだ態度から、


普段の側付きとしての態度を前面に出しつつルチアが聞き返します


「何と言いますか…その、

 最近一つ下の学年に編入されてこられた方がいらっしゃいますでしょう?」


ただの言葉のはずなのに、うまく声になりません


「その方と…その…殿下」


何故だかこれ以上の言葉をうまく紡ぐことが出来ません


これ以上言葉にしていいのか、声に出してしまっていいのか


これ以上の言葉を発すると、なにか、


まるでわたくしを構成するなにかが全て壊れて抜けていくそんな気がして


「お嬢!」


「エリ様!」


「わ、私、ほ、保険の先生を呼びに行ってきます!」


「ソフィ嬢頼んだっ」


意識の遠くで声が響きます。


それ以上はいけないと、


わたしの中に眠る何かが、


わたしの思考に、


静かに蓋を下ろしたのでした



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