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第12話:「※ただし、イケメンに限らない(後編:ひとつの「うそ」が、終わった日)」

放課後の校舎。静まり返った音楽室。

クラリネットの音が、かすかに廊下へと漏れていた。



──奏者は、西村美鈴。



窓の外は、夕陽と校庭の影が交差している。

演奏中、美鈴はふと目を閉じた。



(もう、誰のせいにもしたくない)



誰かに“届かない”ことを、恐れていた自分。

誰かを“選べない”自分。

その全部を、音に込めて吹いた。



最後の音が消えた時、音楽室の窓の向こうで、ひとり立ち尽くす人影に気づく。



──野中蓮だった。



彼は何も言わず、ただその音に耳を傾けていた。



1週間後の放課後

騒がしかった掲示板の前は、今や静かだった。



印刷された紙は風に揺れていたが、誰もそれを剥がそうとはしなかった。

ただ静かに、それが“時代の終わり”だと、全員が理解していた。



玲央の姿は、校内のどこにもなかった。



蓮はゆっくりと昇降口を出る。

その先に、待っていたのは涼子と拓真。



「……お前、本当に変わったな」



拓真が笑う。

涼子は少し照れたように、頷いた。


蓮は少し肩をすくめて、冗談のように言った。



「……変わったっていうより、ようやく“自分のこと”に気づいた感じ」



誰も否定しなかった。


校舎の影が長くなる。

その道を歩く蓮の隣に、美鈴が並ぶ。


ふたりの歩幅は自然に合っていた。

言葉はなかったけれど、違和感もなかった。


ふと、美鈴がクラリネットケースを軽く揺らして言った。



「聞いてくれて、ありがとう」


「……なんか、届いてた気がしてた」



蓮は少し驚いた顔をして、笑った。



「うん。……ちゃんと、届いてたよ」



ふたりの間に、ようやく“同じ温度の沈黙”があった。


2階の教室の窓から、涼子がそっとふたりの姿を見つめていた。

その表情に、もう未練はなかった。



「……行ってらっしゃい」



拓真は涼子の隣で、無言でその背を見守った。


生徒会室

結衣は書類を片付けながら、窓の外を見ていた。



「これが、あたしの選んだやり方だもん」



誰に言うでもなく、そう呟いた。


そして──校門へ伸びる通路。

蓮と同じ歩調で帰路へ向かう。



「明日も、また音聞かせてよ」


「……そのつもりだよ」



校門の前。

それぞれの想いを胸に、ひとつの学園の1日が終わっていく。

彼らが過ごしたこの物語は、

どこか遠くにある“誰かの物語”かもしれない。



でもそれでも──



※ただし、イケメンに限らない。



それは、誰かの皮肉じゃない。

もう、ちゃんとした“事実”になった。



― 完 ―

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