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タイトルに偽りなしシリーズ

追放を繰り返していた男が前に追放した勇者(魔王討伐済み)と再会して「もう遅い」って言われ、かつての所業の報いを受けるってだけのお話

長編書こうとして書いては気に入らないで消し書いては消しして1年以上……気分転換に短編書こうとしたけどやっぱり気に入らなくて修正しまくって6000文字ちょっとの短編に一週間。やっぱり自分文才無いんだなぁって理解させられました。(´・ω・`)


注意:このお話はフィクションです。パワハラ、モラハラ、セクハラ、暴力行為や同意のない性行為に対し肯定的な事を示す意図はありません。念のため。

「ディーン! 貴様のような剣も魔法も中途半端な役立たずは我が『英雄の揺り篭』には必要ない! よってパーティーから追放させてもらう! これは貴様以外のパーティー全員の総意であり決定事項だ!」

そう言って俺は3ヶ月前に見習いとしてパーティーに加わった魔法剣士のディーンを突き飛ばした。ディーンはそのまま床に尻餅をつき、呆然とした様子で固まっている。

ここは冒険者ギルドに併設された酒場の中、時間は夕方と言う事もあり仕事終わりに一杯引っかけようとする連中により賑わっており、当然俺の行いはかなり目立っている。

ほとんどの者はこちらをニヤニヤしながら、あるいは興味深そうに見ているが、中には俺の行動が気にくわないのか顔をしかめる者もいる。見世物もいいところだがここはきっちり衆人環視の中で行わなければならない。『追放』の様式はしっかりと守らなければならないのだ。

「……!? ゼ、ゼータさん!? そんなっ! 俺、一生懸命頑張って……」

「はっ、どれだけ頑張ったとしても結果がだせなければ意味はない! 貴様の無能ぶりにはうんざりだ! もうギルドにも貴様の脱退届は出してある。貴様はもう『英雄の揺り篭』の一員ではない! わかったらさっさと消え失せろ!」

我に返ってすがり付くような目を向けながら話しかけてくるディーンを、俺は決定的な一言とともに蹴り付ける。その一撃はディーンを軽々とギルドの入口まで吹き飛ばし、ディーンの体は扉を抜け表通りにまで転がって姿を消す。

……実は派手に吹き飛ばしたけど蹴りのダメージ自体は大した事はない。足の甲で掬い上げるように持ち上げて投げたようなものだからだ。まあ地面に叩き付けられて転がったダメージはあるかもだが奴も冒険者、レベルアップにより上がった能力により擦り傷一つ付いていないはずだ。

「ふんっ、女々しい雑魚だ。おい! エリス! 受けてた依頼の精算だ!」

俺は見下したような視線をギルドの入口の方へ向け、ギルドの専属受付嬢の名を呼ぶと不機嫌そうに見える態度でギルドの個室へと向かう。

パーティーメンバーとエリスが個室に入り鍵をかけ、人目がなくなったところで俺は崩れ落ちるように席に付きテーブルに突っ伏す。

「もうやだー! ギルドからの依頼だけどもうやだー! めっちゃ良心が痛むんですけど! ディーン君めっちゃ頑張り屋さんで良い子だったんですけど!」

「まあ良い子だったからゼータさんに依頼が行ったんですけど」

「そんな正論、聞きとうなかった……!」

クールに突っ込むエリスの言葉に、耳を塞いでイヤイヤする俺。

「まー、しゃーないっすわ。ディーン君のご家族の呪いはディーン君本人が術者である魔王軍の残党の魔族を倒さないと解けないタイプですし、かといってディーン君にそれが出来るようになるまで鍛える期間を考えるとその間にご家族が衰弱死しちゃいますからねー。そりゃリーダーのスキルに頼るしかないっしょ?」

「ディーン君のご両親って元Aランクで財産の一部を新人冒険者の育成に出資してるんですよね? おまけにギルマスも現役時代にお世話になったとか。それはギルドから依頼も来ますよねぇ」

口々に仕方ないと慰めてくる仲間達。だが俺は知っている。お前らが表では俺と一緒にディーン君をイビっていたのに陰でこっそり彼をフォローして好感度を稼いでいたのを……!

貴様ら、もしかしなくても俺がザマァされても自分達は巻き添えにならないようにヘイトコントロールしてるだろう! おのれぇぇぇっ!


さて、何故俺がこんな不本意な事になっているかと言えば、まあ俺が先天的に持っていたユニークスキルに原因がある。


スキル:追放覚醒

レアリティ:ユニーク

効果:パーティーメンバーから対象を追放した場合、その素質を開花させ、能力を強化、相性の良いスキルを習得させる。

パーティー在籍期間が長い程強化率上昇。

在籍期間中、対象にパワハラ、モラハラ、セクハラを行う事でその回数に応じてより強化率に補正。また他のパーティーメンバーが参加する事で更に補正が+される。

このスキルの存在を知る者はスキルの対象に出来ず、在籍期間中からパーティー追放後、在籍期間と同じ期間が経過するまでに知られた場合効果はキャンセルされる。

追放する時は衆人環視の中で行い、必ず「(対象を)追放」「(対象は)役立たず」or「(対象は)無能」「(スキルホルダーにとって対象は)必要ない」のキーワードを入れた言葉を使う事。


はい俺に何のメリットもないスキルー!

でもね? このスキル、好奇心に駆られたギルマス命令で無理矢理実験させられた時に強化効果がエグい事が分かったねん。具体的にはほんの半月だけ所属させられた被害者の能力値が1.2倍、戦闘系スキル2つを習得と言うもの。

(おり)しも魔王復活により戦いが迫っていた時期。そこでギルドと国による俺を利用した戦力強化計画が持ち上がった訳だ。


例1。魔国との国境を守る守護騎士団。その最強騎士との呼び声も高い『閃光の』アルフレッド。彼は3ヶ月程イビり倒しました。そしてパーティー追放後3ヶ月経過後事情を知った彼の言葉がこれです。

『事情は分かりました。仕方ない事だと言う事も分かります。……でもそれはそれとしてムカつくんだよなぁ! いくら事情があってもイビられた事実は無くならんのよ! ……二度と顔を見せるな!』

はいおっしゃる通りです。


例2。国内最高の魔法戦闘能力を誇る宮廷魔術師団。その中でも最大火力、極大範囲の魔法を連発し魔軍を殲滅するヤベー女、『紅蓮崩天』ベアトリクス。彼女はだいたい半年くらいだったな……。そして事情を知らされた彼女の反応……うん、なんかお城の一角が爆砕したらしいよ?

怖いので城や宮廷魔術師団の派遣場所には近付かないようにしています。


例3。勇者。……国王陛下からの命令で一年間じっくりイビり倒した子は勇者様でした。それを知った時に俺は国外逃亡を試みましたが結局捕まりました。当時付き合ってた()が内通者と言うか最初から監視の為に近付いた国の諜報部の人間だとか聞いて無いです(血涙)。ちなみに勇者様は見事魔王を討伐し、近々凱旋する予定だとか。

……ねえ、俺ザマァされないよね? 大丈夫だよね?


そんなこんなで依頼料(一般人の年収の数倍)を受け取った俺は1人夜の街を歩いていた。仲間? あの裏切り者どもなら奥さんや恋人の所ですよケッ。俺はスキルの使用条件のせいで評判最悪なんでまともな恋人は出来ないんだよぉぉぉっ! 出来たと思った()は諜報員だったし!

いーもん! 金にあかせてエッチなお店で複数の女の子侍らせちゃうからいーんだもん! 相手がいる奴には出来ないだろ! 悔しくなんかないんだからね! ……あれ? おかしいな、目から水が出てきやがったぜ。へへへっ……

「ゼータさん」

そんな悲しみを忘れるべく花街の一角に入ろうとした直前、背後から俺に声がかけられた。

振り返った俺はそこに居た人物を見て思わず息を飲んで固まった。

絶世。そう表現しても良い美女がそこに居た。黄金の髪は淡い月明かりの下でもなお輝き、その目には人を魅了する強い意思の光が宿っていた。服こそ一般的な町娘が着るような安物だが、それが彼女の魅力を損なう事は無く、むしろ簡素な服だからこそそのスタイルの良さが際立っている。

だが俺が硬直したのは彼女が美人だったからではない。

「ク……クリス……さん?」

「はい、お久しぶりですゼータさん。魔王を倒したので会いに来ちゃいました」

そう言ってにっこりと笑いかけるかつてのパーティーメンバーであるクリス……彼女こそが魔王討伐の立役者、『勇者』クリステラであった。


クリスに誘われるままたどり着いたのは、かつてクリスがパーティーに居た頃に定宿にしていた宿屋兼酒場だった。

「懐かしいですね、ここ。私、ここのホーンラビットの煮込み好きだったんですよねー」

ニコニコと上機嫌そうに笑うクリス。一方の俺は顔がひきつりガチガチに固まっている。この笑顔に「ようやく貴様を地獄に送ってやれるぜぇ」と言う副音声が聞こえてくるのは気のせいだろうか。気分はもう死刑執行を待つ死刑囚である。

しかしそんな俺にクリスはクスクスと笑いながら告げる。

「そんな顔をしなくても大丈夫ですよ。追放されて1年後に国の方からゼータさんのスキルの事は聞きましたから。……そりゃあ最初はあんな事されて放り出されてちょっぴり恨んだりしましたけど、理由を聞いたら納得しましたから。何より私が魔王を倒して皆を守れたのは例のスキルで得た力のおかげなんですから」

おおお……聖女かな? いやクリスのパーティーメンバーに聖女は別に居たな。良かった……追放した勇者によるザマァなんて無かったんや……

「それにゼータは言い方は確かに酷かったですけど、ダンジョンでのミスとか戦い方での悪い所とかの指摘内容自体は間違ってませんでしたし、指導内容も苛烈ではあっても的確でしたよね?」

そりゃあ国王陛下からの命令での育成依頼でしたからねぇ。間違った事なんて教えられる訳がないんだよなぁ。

「なんだかんだであの厳しい指導があったから魔王との戦いをやり遂げられたと思っています。ありがとうございました」

そう言ってペコリと頭を下げるクリス。ええ子や……

「いや、こっちこそスキルの条件を満たす為とは言えすまなかった……セクハラでお尻とか触ったのはマジすまん」

そのまましばらくいえいえこちらこそとお互いコメツキバッタ状態。

そんなこんなでわだかまりも解け、お互いに近況や思い出話にふける。

「え! あいつらがフォロー入れてたの!?」

「はい、『ゼータがあんな態度を取るには理由があってな……詳しい事は俺達の口からは言えないが根は悪い奴じゃないんだ』って」

……あいつら……( つ д ; )

「あとセクハラ多めなのはおっぱいが大きい子が好みだからって」

……あいつら……( ゜д ゜♯)

話が弾む内に夜も更け、そろそろ酒場もラストオーダーの時間になる。そんな時、クリスが急に居住いを正し、真剣な口調で話かけてきた。

「ゼータさん、お話があります」

「お、おう……」

「私、最初はゼータさんの事、酷い人だと思ってました。でもなんだかんだでしっかりと指導はしてくれましたし、他のパーティーメンバーからも慕われてましたし頑張って付いて行こうって思ってました。だからこそ追放された時は悲しかったです」

返す言葉もねぇ……

「でも国から勇者だって言われて魔王軍との戦いに身を投じて、旗頭として戦っていたらゼータさんの厳しい言葉が浮かんで来ました。私の行動一つで多くの兵士達の運命が左右される……そんな時に私を支えてくれたのは仲間達の甘やかすような慰めじゃなくてゼータさんの厳しい言葉だったんです。私は特別な選ばれた人間なんかじゃなくてただのちっぽけな存在に過ぎない。そんな私に全員を救う事なんて到底出来ない。欲張らずに自分に出来る事をただやるだけ。前にそう言ってましたよね? その言葉のおかげで私は自分を保てたんです」

いえそんな意図はありませんただの罵倒でした。……でもここでそれを言ったら台無しな気がするんで口を閉ざしますけど。

「あの悲惨な戦いの中で私を慰めてくれたのはゼータさんの教えと言葉でした。今の私があるのは全部ゼータさんのおかげなんです。それで……その……」

そう言うとクリスは顔を真っ赤に染めてモジモジとしだす。……え? ちょっと待ってまさか……

「その、出来れば……これからもゼータさんには私の事を支えてもらいたくて……だから……」

……( ゜ω ゜; )ゴクリ

彼女はそう言うと腰のポーチからそれ(・・)を取り出し、俺に向かって突き出すように差し出して言った。

「……だから! 私の……ご主人様になって下さい!」

それは犬用の首輪だった。

………………(゜д゜)………………

「……は?」

「そう! ゼータさんから向けられたゴミを見るような目! 容赦なく人格を否定するような言葉! おっぱいに向けられる欲情の視線! なのにお尻を撫でる程度で手を出されない放置プレイの日々! あの日々を思い出しながら夜に()分自身を()め、自分が所詮ただのちっぽけな雌犬(存在)であると考える事で魔王軍との戦いのプレッシャーに打ち勝ったんです!」

へ、変態だー!

拳を握りしめ力説するクリスの姿に俺は顔をひきつらせるしかない。そうしていると冷静になったのか再び視線を俺に戻し、またモジモジし始める。

「それで……返事の方は……」

「ごめんちょっと用事思い出した」

目を反らして立ち上がる俺を、しかしクリスがガシッと掴んで止める。

「女の子にこんな恥ずかしい告白をさせて返事もせず何処に行く気ですか、ゼータさん♡(ニコォ)」

「うん確かに恥ずかしい告白だったねぇ!」

突っ込んだ俺は悪くないと思います。

そして俺は、勇気を振り絞ってその言葉を口にする。

「えっとその……悪いけど……ご主人様はちょっと……」

「あ、断わられたら街中で『捨てられちゃった……ご主人様に……ゼータさんに捨てられちゃったよぅ』って泣きながら全裸首輪姿を披露します……なんか想像したらちょっと興奮してきちゃいました(*´∀`*)ポッ」

「社会的に人を殺しにくるのは止めてもらえませんかねぇ!!!」

社会的立場を人質に取られては逃げられない。そんな事は分かっていたが、狂気が滲み出るようなHENTAIっぷりに本能的な恐怖を感じ、クリスの手をどうにか振りほどき、後退りしようとし……その瞬間、足から力が抜けガクリと地面へと倒れ伏す。

「な、何が……」

「……どうやら薬が効いてきたようですね♡」

「おい勇者ぁぁぁっ! 勇者としてそれでいいのかぁぁぁっ!」

「大丈夫ですゼータさん♡ そのお薬は身体の自由は効かなくなりますけど気持ち良さとか回数とかはむしろ増加するそうですよ♡ 本当なら初めてはゼータさんの方から襲って欲しかったんですけど逃げようとするならしょうがないですよねぇ♡(フーッ!フーッ!)」

目にハートマークを浮かべ鼻息も荒く俺へとにじり寄るクリス。

「いや大丈夫な要素一個もないよね! 落ち着け、いまお前は正常な状態じゃない! まずはゆっくり話し合おう!」

「ふふふ、逃げようとしたくせに何をいってるんですかぁ? 今更そんな(・・・・・)事を言って(・・・・・)ももう遅い(・・・・・)です♡ 私をこーんな変態さんにしちゃった責任を取って下さいね♡」

お、俺は勇者なんかに屈したりしない! 体は自由に出来ても心まで自由に出来ないんだからなっ!

そうして俺はクリスに担がれ、二階の部屋へと連れ込まれるのだった……


────────────────────


勇者が極秘裏に王都に帰還した3日後。勇者クリステラとAランク冒険者ゼータの婚約が発表された。

結婚式はその1年後に行われ新郎新婦の仲睦まじい様子が国の内外に披露された。また、あれほどの功績を立てたにも関わらず、常に一歩後ろに退いて夫を立てる勇者クリステラの姿は当時の価値観から理想の妻の姿とされた。

余談だが結婚式で彼女が身につけていた革製のチョーカーがこの後に王都女性に人気のファッションアイテムになり、現在の王国におけるプロポーズ時にチョーカーを差し出し「あなたに首ったけ」と示す風習の元となったそうな。

>>ヒント

効果:パーティーメンバーから対象を追放した場合、その素質を開花させ(・・・・・・・・・)、能力を強化、相性の良いスキルを習得させる。


アルフレッド

「……(くっ……何故コイツの顔が頭から離れない……違う! 俺は、俺にはそんな趣味は……くっ! これ以上俺を惑わすな!)二度と顔を見せるな!」


ベアトリクス

「……そう、アイツのスキルってそう言うのなの……それはそれとしてワタクシにあんな真似をしてただですむとでも? ふふふっ、たぁ~っぷりと立場と言うモノを調教して上げないとねぇ? どんな声で鳴くのか楽しみだわ♡ ……貴方達? 何故ワタクシを止めようとするのかしら? ええいっ! 邪魔をするなアイツはワタクシのモノだぁっ!(ちゅどーん)」


ディーン

「(諦めきれない……もう一度ゼータさんに会って直談判を……あれ? あの人は憧れの勇者クリステラさん!? 何でゼータさんと一緒に……え!? クリステラさんがゼータさんの事を!? そんな!? 僕だってクリステラさんの事を……へ、部屋に入っちゃった……な、中で何を(ゴクリ)……ああ、そんなクリステラさん……)(ゴソゴソ)ハァハァ……うっ!」

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 面白かったです。意外な展開でした!  新ジャンルだと思います。  連載なさるなら是非読みたいです!
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