滝のように流れる汗の音
どどど……
「つまり、あなたは……」
目の前で土下座する夫に、上から私は言った。
「したってわけね?」
ど……どどばばばばば……
「何か言えば?」
どざーっ! どざーっ!
「べつにいいのよ? あなたは自由な一人の男のひとなんだから」
ど……
「でもね……」
私は腰掛けている食卓の椅子の足をギシッと鳴らした。
「もしまだ私たちを愛してるというのなら、それは許さない」
どど……っ
「家を出ていくというのなら、許すわ。そして二度と帰ってこないのなら、ね」
ど……どどど……どだだざばーっ!
「当然でしょ。あなたは私と家庭を裏切った。そうでしょ?」
ざざざばばばだばだばだば……
「浮気をするとはそういうことよ? あなた、その覚悟はあった? もしかして私のこと、舐めてた?」
ばばばばば……
ドドドドド……
ばしゃばしゃばしゃ……!
ずどおーーーーー!!!
「さようなら、クズ夫」
ざばっしゃーーーーん!!!
夫はすべて滝のような汗となって床に崩れ落ちた。
面倒臭い。これだけの量の臭い液体を片付けさせやがって。
「ただいまー! おかあさーん!」
娘が幼稚園から帰ってきた。
早く臭い液体を片付けておやつにしてあげなくちゃ。
「なにー? このみずー? くっさーい」
「大丈夫よ。ママが全部掃除するから」
「パパはー?」
「お仕事よ」