表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】今度こそ、笑っていてほしいのです【コミカライズ計画進行中】  作者: みなと
過去に何があったのか

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/43

自業自得

ちょっと今回短めです

 国王に成り代われる可能性のある公爵家の後ろ盾は失った。

 そして神殿の後ろ盾も。

 更には、ユリエラの生家の後ろ盾までも失ったのだが、これらは全て彼の言動と行動の招いた結果。


 国内に貴族は数あれど、本来であれば彼らの後ろ盾ありきとして、国王就任が認められるといっても過言ではない。アルベリヒが国王として即位することは決定しているのだが、決定後に後ろ盾が全て彼を見放すと、誰が想像したであろうか。


「なかったことにはできないのですから、まぁせいぜい頑張っていただきましょうか?」


 ヴァイセンベルク公爵はしれっと、それを言って優しくエーディトの頬を撫でる。

 そうだ、今更なのだ。

 決定をほいほいと覆すことなど、王家としてできるわけもない。だが、この決定は後々にマイナスしか残さないものではないか。

 選んだのはアルベリヒ、止めなかったのは両親である国王夫妻。


「愛しい我が娘、何かあれば…」

「はい、お父様。エーディトは心得ております」


 にこやかに交わされている親子の会話も、ただ、アルベリヒは呆然と眺めることしかできなかった。

 そして改めて、エーディトはじっとアルベリヒ、国王夫妻に何の感情もない目を向けた。


「…改めまして、エーディト=ヴァイセンベルクでございます。殿下におかれましては私には決して触れぬよう。もしも、触れた時は…」


 淡々と告げるエーディトは、神子であり、そして公爵令嬢であることを、その場に居た王城関係者にしっかりと見せつけた。


「エーディト、」


 縋るように手を伸ばしたアルベリヒだが、エーディトのドレスの裾に触れようとしたまさにその瞬間、弾かれたように吹き飛ばされた。


「…だから、申しましたのに」


 淡々としたエーディトは、脅されていると言っても、どうやっても『神子』なのだ。

 それを、神子としての力を、知らしめた瞬間であった。


「わたしは、あなたを、拒絶する」


 一言ずつ区切って言われたそれは、エーディトからの『力』での拒絶に他ならなかった。


「なんで、だ」

「この拒絶を解除することもできます」

「なら!」


 ぱっと顔を輝かせたアルベリヒだが、次ぐ言葉に絶望した。


「解除した途端、わたくしの寿命はあれよあれよと縮まるでしょうね。もって何年かしら」

「そんな…」


 こんなはずじゃない。

 エーディトを手に入れたら、楽しく会話をしようと思っていた。

 無理矢理に手に入れたとしても、きっといつかエーディトの心は穏やかになっていってくれる。いや、そうしていけるという自信があったのだが、取り付く島もないということが分かっただけだった。


 触れることすら叶わない。

 会話をしようとしても目が合わない。


 エーディトに王宮の侍女をつけようとしてもこう返ってきた。


「不要です。わたくしは、わたくしの信じている者しか、いりません」


 侍女たちは憤慨するかと思ったが、エーディトから続いた言葉で全員がひっと息をのんだ。


「だって、王太子殿下に心酔している者が仮に傍付きになれば、何を盛られるのか分かったものではありませんものね」


 エーディトの目は本気そのもの。

 この王宮にいるものたちの何を信じればいいというのか、信じるに値するものが果たしているのかどうかすら怪しい。


 アルベリヒが、侍女が、「そんなことをするつもりはない」と言っても、届かない。

 届くわけがないのだ。

 信用に値する行動など、何もできていないのだから。


 王太子妃になることの意味は理解しているらしく、元々勉強好きであったエーディトはありとあらゆる知識を詰め込まれていった。

 それが、過剰だと分からずに。


 本人の体を蝕んでいく疲労感と虚無感。


 やればできる。だが、本来エーディトが暮らす場所ではないところでの生活。

 いくら気心知れている侍女や使用人を揃えているといっても、少しずつ綻びは出てきてしまうものだ。


 アルベリヒが超えることの出来ない『壁』があるうちは問題ないとはいえ、精神的なストレスや肉体的な疲労を軽減してくれるわけではない。

 就寝時間を迎え、ばったりと倒れることだって、何回もあった。

 教育係は文句を言ったそうだが、エーディトからはこう返された。


「まぁ、でしたら殿下にお伝えくださいませ。体の弱い王太子妃が役に立たない、と」


 一人目の教育係はそのまま伝えた。

 そして、呆気なく首をはねられた。


 それを見ていた二人目の教育係は、アルベリヒからこう告げられた。


「エーディトを、悪く言うな」


 狂人じみた目で言われ、迫力に負けてしまい、エーディトの体の弱さには誰も口出しできなくなったのだ。

 だって、彼女を望んだ張本人が今の状況を招いているのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ