軟禁エンドを迎える夢小説の夢主に転生してしまった!?~夜だけ猫に変えられてしまうという奇妙な魔法を魔物にかけられてしまい、無愛想な薬師に助けを求めたはずが偽恋人になってました~
「嘘でしょ〜〜!!!!?」
嘘だ。こんなの有り得ない。
私、私……、アニス・マクレーンになってる!!!?
ベッドから起き上がった私は違和感を覚え、近くにあった壁に取り付けてある鏡を見た。
真ん丸な金色な瞳。丸みを帯びた顔立ちは幼く見える。銀色の長めの髪を一つに結んである。フリフリのドレスを着たらお人形のようになりそう。
ドレスを着なくても可愛らしいけども、お洒落っけがない貧相な格好をしているため、可愛さが半減されている。
アニスは冒険者だから仕方ないとは思うが。
そっと、自分の頬をつねってみた。痛い……。
「う……嘘だぁ!!! 誰か嘘だと言ってぇ!!!」
自分の違和感が現実なのだと突き付けられ、絶望して絶叫してしまった。
扉からノック音が聞こえた。
「あの、大丈夫ですか???」
どうやら心配して様子見に来てくれた人らしい。私はなんとか誤魔化した。
とりあえず落ち着こうと深呼吸をした。ベッドに腰を下ろす。
今の状況を整理しよう。まずは昨日のことから記憶を遡ろう。
私は、専業主婦でいつものように玄関で夫のお見送りした後、家事をしていたらチャイムが鳴ったので、インターホンのモニターをチェックすると配達員の方だったので出ると、いきなり腹部に激痛が走った。
何が起こったのか分からなかった。目の前にいる配達員は帽子を取る。ニヤッと笑った。
ゆっくりと激痛する腹部に手を当てると硬いものがある。その硬いものの正体を確かめようと恐る恐る見てみると……。
深く突き刺さった包丁。突き刺さった場所を中心に赤く染まっていく。赤いのは自分の血液だ。私は、配達員に刺されたんだ。
刺す意味が分からないと表情で訴えていたのか配達員は教えてくれた。
「これで、あの人と一緒に暮らせる。……あんたが消えれば慰謝料請求されることはないし、死体も見つからない場所に埋める予定。この時間帯は通りかかる人はいない。あの人と約束したもの。あんたが消えれば私と結婚してくれるって……だから、私の幸せのために、消えて」
その時、理解した。夫に浮気をされていたんだ。あまりにも平然としていたものだから気付かなかった。そういえば最近、携帯を肌身離さず持っていた。
たまにコソコソしていた時もあった。夫に限ってそんなはずはないと信じて疑わなかった。
ーー信じていたのに、裏切られたんだ。
目が霞む。涙からなのか、大量に血を流しすぎたからなのかは分からないが絶望と自分の無力さに失望した。倒れながら、私はゆっくりと目をつぶった。
そして、起きると、知らない部屋で寝ていたというわけだ。
これって、転生というやつ?
その転生先が私がよく知っているアニメの夢小説オリキャラ。しかも夢主だ。
……なんてこった。
この夢小説の結末はメンヘラエンドを迎える。多分……いやきっと、書いた本人はメンヘラエンドが好きなのだろう。
本来のキャラクターがめっちゃ病んでるんだもの。前向きキャラも違う方向に前向きだし、流石は夢小説だね。
そういうところが夢小説の面白いところなんだけど。
さて、気持ちを切り替えてアニス・マクレーンの記憶を遡ろう。
子爵家に産まれたアニスは上品な淑女だった。だが、人生を変える出来事が起こった。
両親が商談帰りに事故にあい、亡くなってしまった。その時は三歳だったのもあり、跡を継げる状態ではなく、強制的に孤児に送られる。
それからは子爵家がどうなったのか分からないけども、アニスの両親は意図的に殺されたんじゃないのかなって私は思う。
貴族会社って色々と厄介なところが多いし、悪巧みを考える人は普通に居ると私は思っている。
孤児院に引き取られ、十六歳になったアニスは孤児院の経営が難しいことを知ってしまう。
お世話になった孤児院を救うべく危険だけど、頑張れば頑張るほど報酬が貰える冒険者としての道を選ぶ。
冒険者として、なんとかやって行けるようになった一年後の今日、私は転生した記憶を思い出したーーということになる。
その後の話は、私が前世に読んだ内容だけど、魔物討伐の依頼でアニスがミスをして、魔物に攻撃されそうになる。その時に助けてくれるのが、この夢小説のヒーロー。アニメだとかなり人気が高いキャラだ。
それから一緒に依頼をしたりして、お互いは惹かれ合う仲となる。そう、そこまでは良かった。
ただそのヒーローが嫉妬深く、定期的にアニスのプライベートを聞いてきたり、異性ならまだしも同性とも他愛ない話をしていただけなのに嫉妬をして、怪我を負わせたりしている。
それが異性ならばもっと酷い。生きてるか分からないぐらい追い詰める。
アニスの心が病んでいった時だった。ヒーローがアニスを軟禁したのだ。
ヒーローの目的はアニスを孤立させ、身も心も自分無しじゃ生きられなくするためだった。アニスにはかなり優しかったから自然とそう思わせられる。
アニスはそんなヒーローの黒い部分は気付かずに軟禁されてるが愛されていると錯覚してしまう。
それがこの夢小説でのエンド。アニメとは全然ストーリーやキャラの性格が違いすぎるけども、夢小説とはそのアニメの自己満小説なのだから仕方がない。
夢小説のストーリーはこんな感じだけど、本来のアニメのストーリーは簡単に説明すると魔王討伐だ。闘技場で勝ち残った数名と聖女が数々の試練を乗り越え、魔王を倒す話。
アニメ事態が友情メインだ。キャラクター一人一人が個性的でイケメンだからなのか人気が高い。
近々、劇場版になるらしく、私は一日千秋の思いで待っていたのに……死んでしまった。
夢主に転生してしまったわけだから、原作の邪魔するのは気が引ける。幸い、メインキャラにはまだ会ってないからひっそりと過ごしてれば大丈夫だと思う。
ただ、この夢小説のヒーローというのがアニメのサブキャラ、訳あり冒険者として登場していた。
……その訳あり冒険者と関わらないようにしないといけないけど……、冒険者やってると自然と関わっちゃうだろうな。
冒険者を辞めて、他の道を探そうかな。
***
私は、就職先を探そうと街を探索していたら冒険者仲間に声をかけられてしまった。
今回の依頼は魔物が状態異常の攻撃をするのが多いらしく、私のように援護魔法(状態異常回復できる魔法)を取得している人を探していたのだとか。
たまたま街をウロウロしていた私に声をかけた。
最初は断ったんだけども……報酬がね、そこそこ良かったのよ。孤児院にも報酬で得たお金を贈りたいのもあるからね。
前世の記憶を思い出してても、アニスとしての意志を尊重していきたい。
そして、現在、魔物に攻撃された冒険者の一人に援護魔法をかけながら私も魔物に攻撃している最中だった。
アニスは、かなりの努力家だったのだろう。魔法取得も自分で調べ練習して取得していたり、体力面も毎朝ランニングして基礎体力をつけている。
それに、初級魔法を使っただけなのに、一瞬で魔物が丸焦げになるぐらいの威力。それはアニスが日々頑張ってる証拠ね。
背後に魔物が接近しているに気付かずに魔法をくらってしまった。
クラっと目眩がしたが、なんとか持ち堪え、背後の魔物目掛けて魔法を放つ。
魔物は消滅した。
念の為に自分にも援護魔法をかける。
「よし、これで依頼完了だ。ありがとなアニス」
「や、役に立てて良かったよ」
息を整えながらも笑顔を作った。
冒険者ギルドに行き、報酬を貰った。
酒場で呑まないかという誘いを受けたが断った。
周りに悟られないように平常心で裏路地に行くと、壁に手を付き、息を切らしながらも苦しそうに胸を抑えた。
「な……に、これ」
魔物の放った魔法は単純な魔法かと思ってたけど、これは時間差で魔法の効果が現れるんだろう。
援護魔法を使ったはずなのに、どうして……。
私、このまま死ぬの……??
嫌だ。死にたくなんてないっ!!! 私は生きていたい。
あまりにも苦しくて、意識がボーッとしてきた。そのまま地面に倒れた。
***
ふと、目を覚ますと見慣れない天井。横を見るとこじんまりした空間でなにかの作業部屋のようだ。
私、生きてる???
扉が開き、現れた人物を見ると目を丸くしてしまった。
「起きたか」
赤色の短髪。細くキリッとした藍色の瞳。耳には雪の結晶のようなピアスをつけている。黒茶のフードに革ブーツ。手には古い本を持っていた。
無愛想に眉間に皺を寄せているが、かなりのイケメンで女子からモテそうだ。
いや、実際にはモテてるんだけど。
私はその彼を知っている。アニメだとサブキャラで薬屋としてメインキャラたちを陰ながらサポートしていた。
名前は確か……リアム・カーソン。夢小説には名前は出てきたが登場はしてこなかった人物。
人を引き付けないオーラがミステリアスで前世では人気のキャラだ。
リアムが私の寝ているベッドの横にある椅子に座る。
「……あ、貴方が助けてくださったんですか?」
私は重たい口を開いた。
「助けた訳じゃない。ただ、俺の店の前で倒れてたのが邪魔だっただけだ」
勘違いするなと睨まれる。
おお、この無愛想な物言い!! 生で聞けるとは思わなかった。やばい、もっと聞きたい!!
と、内心で萌えながらも息を切らしヨダレが出そうになるのをグッと堪える。
何を隠そう、私はリアムの声優の大ファンだ。なので、リアムの声を聞くとどうしてもニヤけて、油断すると溶けそうになって尊死しそうになる。
「歩けるか?」
「あっ、はい。なんとか」
必死に興奮を抑え、笑顔で起き上がってお礼を言おうと口を開いた次の瞬間だった。
いきなり手首を捕まれ、引っ張られる。
訳が分からず混乱していると乱暴に扉を開けたリアムはそこから私を突き飛ばす。
運がいい事に運動神経が抜群のアニスの身体は反射的に足に力を入れ、踏ん張る。
「なっ、いきなりなにするんです!?」
リアムの方を向いて、声を荒らげると、リアムは鼻で笑った。
「商売の邪魔なんだよ。元気になったならどっか行け、じゃあな」
バタンっと扉を閉められ、私は開いた口が塞がらなかった。
確かに倒れる前よりは元気になったけど、だからって追い出さなくても。
周りを見渡すと、路地裏だった。薬屋の裏側なんだろう。
それにしても、声が好みなだけに恨めないのが悩ましい。
今日は宿屋に戻ってどうするかをじっくり考えようかな。
幸いなことに、宿屋のチェックアウトはしてなかったからそのまま朝まで泊まった宿屋に泊まれる。
手続きしなくて良いから、少し楽……、正直疲れたし。
***
宿屋に戻って部屋の鏡を見るなり絶叫した。
そう、それは……私が猫になっているからだ。しかも獣人ではなく完全に猫の姿。
宿屋に戻り前にすれ違う人達が微笑ましい目で見たり、驚いた顔をしているのはそのせいか。
普段とは目線が全然違ってたり、電気をつけるのだって一苦労だった。
それは疲れてるから、そんな気がしてるだけだと思ってたけども、違ってたのね……。
「にゃぁ」
……ダメ。人の言葉が喋れない。どうりで、いつもと見えてる世界が違ってたり、扉を開けるのも一苦労だった。
身体が軽くなって身軽さが増したことを喜んでいたというのに、人じゃなくなってる??
その設定は夢小説では無かった。もしかしたら書かなかっただけでそういう設定があったのかもしれない。
ゴロンっとベッドに寝っ転がって、あまりにも布団がふかふかで気持ちが良くなって喉を鳴らした。
ハッ!?
……本当に猫みたいじゃない。ズーンって落ち込むが、急に来た眠気には抗えずそのまま深い眠りに落ちた。
***
目が覚めたら、人に戻っていた。
もしかしたらこれは全て夢なのかもと思ったが、その日の夜もその次の日の夜も猫になった。
これは……もう、明らかにあの魔物の魔法を受けてからこんな体質になってしまったのだろう。
この街で魔法に詳しいと言ったら、一人しかいない。薬師のリアム・カーソンだ。
あんな出会い方して、変な別れ方もしたから……あまり乗り気じゃないけどーー仕方がない。
このまま夜に猫になると色々と不便だし、かなり大変。おかげで別職探すにしても夜も働けなくちゃ、たいした報酬は貰えない。
昼間、私は薬屋の前にいた。
リアムが経営している薬屋だ。この前、私がベッドで寝ていた場所は薬屋の裏側。リアムが休憩に使っている部屋だった。
息をのみ、頬をぺちっと軽く叩き「よしっ!」と気合を入れる。
追い出されてもめげないように。
お店の中に入る。棚に薬がズラっと並んでいる。前に進むとカウンターが見え、リアムが本を読んでいた。
私に気付くとパタンっと本を閉じた。
「また来たのか」
眉間に皺を寄せたリアムを見て、ヨダレを通り越して鼻血が出そうになった。
思わず鼻を押さえた。声っ!!! 声がぁぁぁぁ!!!
尊い、好きすぎる!!! 感動で涙が出そうになる。
「……どうした?」
リアムは私に近寄ってきた。
私を心配(不審に思った)して、近寄ってくるなんて、カッコよすぎ!!
美声で顔もイケメンなだけに尊いが増し、興奮してしまう。
だが、興奮を必死に抑えて口を開いた。
「な、なんでもありません。貴方に相談したいことがありまして」
「相談?」
「はい。ある依頼で魔物討伐した先で魔物により魔法を受けてしまい、それ以降夜には猫の姿になってしまう体質になったんです」
「……聞いたことがないな」
「魔法に詳しい方は貴方しかいないと街の人達も言っていたので、貴方ならばと思ったんですが……」
興奮を抑えたため、若干震えた声になった。
ニヤつきを隠すために口元を抑えていると、リアムが勘違いしてきた。
「この魔法が解けないと思っているのか? 良いだろう! 薬師として、魔法を解除する薬を作ってみせよう」
バカにしてるとか、見下してるとかでは無かったんだけど……結果オーライね。
正直、説得にもう少し時間がかかるかと思ってた。
「但し、条件がある」
安堵していると、リアムは腕を組んだ。
リアムが“条件”を言おうとした時だった。薬屋の扉が開いて、顔面蒼白な女性が立っていた。
見たところ、冒険者のようだ。動きやすい服装だし、手には魔術師用の杖を持っていた。
「リ、リリリリ……リアム様!!!? 恋人はいないと仰っていたではありませんか!! 誰ですか、このちんちくりんな女!」
リアムの近くまで来た女性は、キッと私を睨み、ビシッと指さした。
「……ちんちく……りん」
些細な中傷に少しショックを受けているが、アニスはちょっとお洒落を頑張れば綺麗な子よ! っと内心思ったが、喧嘩するために薬屋に来たわけじゃないので、怒りを抑えた。
リアムは私をじーっと見ると、何を思ったのか、いきなり腰を抱いてきた。
リアムは私の耳共にそっと唇を寄せる。
「動くなよ」
いきなり耳共で美声を聞かされ、思考停止しそうなぐらい頭が真っ白になり、首を縦に振るしかなかった。
「……そうだな。あの時は恋人はいなかったが、今はこいつが俺の恋人だ」
「そ、そんなの嘘だわ!! 私は信じないんだから」
怒りで肩を震わしている女性。
ちょっ、ちょっと待って。えっ、恋人……??
誰が誰と???
推し声が近くで聞いているあるためにまともな考えが出来ずにいた。
リアムは私に囁いた。息が耳にかかる度に乙女心を刺激……いや、オタク心を刺激されて気を失いそうになる。
耳がぁぁぁ!!! 天国にいるような気分だわ。
私はあまりにも幸せすぎて内容を聞いていなかった。
「おい、聞いてるのか?」
少し不機嫌そうに小声で言われ、我に返った私はリアムを見た。
「あんた名前は?」
「ア、アニス……アニス・マクレーン……です」
リアムをまともに見れなくて目を逸らすが、リアムはそんな私に気を留めることはせずに腰を引き付ける。
「えっ、あ……あの???」
戸惑っていると、頬に柔らかいものが当たる。それと同時に悲鳴が聞こえた。
その柔らかいものがリアムの唇だというのに気付くのに数秒かかってしまった。
「あ? もしかしてお前、聞いてなかったのかよ」
リアムが私が聞き逃したのをもう一度言おうとした時だ、頭上から大量氷の槍が出現した。
「……認めない。私は絶対に認めないし、許さない!!」
氷の槍を出現させたであろう女性は怒りで我を失っていた。
「ちょっ、落ち着いて!! こんな狭いところでそんな魔法使ったら……」
言い切る前に頭上にある氷の槍が降り注いだ。
この槍をなんとかしようとしたらリアムに抱き締められた。
「動くなよ。動くと怪我する」
「は……はい」
リアムは結界魔法を発動した。氷の槍は結界に触れると霧のように消えていく。
氷の槍が完全に無くなると、結界を解き、私から離れ、女性を睨んだ。
「彼女には手を出すな。もし、怪我でもさせてみろ、女でも容赦はしない」
そのセリフは私……アニスに惚れているかのようなセリフだった。
女性は涙目になりながらも悔しそうに唇を噛み締めて、慌てて薬屋から出ていく。
私は力なくその場に座り込んだ。
「大丈夫か? ああ、あと、勘違いはするなよ。俺はお前を守ったんじゃない。薬品を守っただけだからな」
いや、その言い訳は無理があるでしょ。あの結界だって薬品ではなく、リアムと私を守るように貼ってあった。
薬品を守るためなら、部屋全体に結界を大きく貼るはずだ。
素直じゃないというか、なんというか。
「ええっと、大丈夫ですよ。わかってますので、それよりも……さっきのは?」
「本当に聞いてなかったのか。アニス、魔法を解除する間だけでもいいから俺の恋人になってくれないか」
リアムはしゃがみこみ、私と目線を合わせた。
「状況がよく分からないんですが」
「お前も見たろ。偽物でも恋人作らないと、ストーカー行為をよくされるんだよ」
「……偽物なら私じゃなくても」
「気付いてないのか?」
「何がです?」
「……イーサンという名を聞いたことないか? 昔、孤児院で一緒に遊んだのにな」
イーサン?? って、あっ、私……じゃない、夢主のアニスが十歳になる頃に貴族に引き取られ、孤児を出てった子!?
「訳あってリアムと名乗ってる。まぁ、お前のことは初めは気付かなかったけどな。名前を聞いて思い出すぐらいだし。でも、偽物でも恋人にするなら昔っから知ってる奴が良かったしな」
アニメの設定だと、イーサンはとある伯爵邸のご令嬢を助けたことにより気に入られて使用人となっている。
しかし、孤児育ちのイーサンをよく思わない令嬢の婚約者が嘘の罪を被せてた。
意心地が悪くなったイーサンは屋敷を出て、その後の消息は不明。
死んだという噂もあるし、闇落ちして魔王の配下になったとも噂されている。
そのイーサンがまさかリアムだったなんて。
「で、どうなんだ? 一応報酬も用意するが」
「!? ど、どのぐらいでしょう?」
「まぁ、こんなもん」
リアムは私の耳元でボソッと小声で言う。私は息を呑み、ゆっくりと頷くと、リアムは「変わらないのな。孤児にいた時から金貨や銀貨に目が無い」とククッと笑う。
仕方ないじゃない。生きていく上で必要なモノなんだから。思ってたよりも報酬が良かったし、これもお金……いや、孤児院のために恋人のフリをするしかないと思った。
リアムは満足そうにゆっくりと目を細めた。
私はリアムを知らなくてはいけない気がする。
孤児の頃はあんなにも愛想良かった彼が今では無愛想になってるだなんて、きっと何かあったはず。
優しさは変わらないのが救いだけど。
ーーそれはアニスとしての記憶からわかる。アニスの初恋がイーサンだったのだから。
こうして、私とリアムの奇妙な偽物の恋人ごっこが始まったのだった。
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モチベが上がります!!