はちわ!
夏休みに終わると言ったな?
あれは、嘘だ。
◆◆◆
巻き込まれたサミーさん。妖精の悪戯。
大掛かりな、移転。
……おそらくは、そう、禁じられた闇魔法の仕業でしようか。ふむ。
わたくし、物思いに耽ると、周りの物事が一切、耳にも目にも入りませんの。
はっと気付いた時には、わたくしのドレスは完璧な姿でした。
魔導盛装の、完全正装の姿になっておりましたの。
……この姿に成る事が叶うのは、元の世界でしたら、ある条件を達しなければ、ならなかったはずです。
それこそ、聖女の御力を使うような、神の奇跡を起こす事。
わたくし達の世界では、聖なる水を尊き存在として、『清らかなる冷たき流れを司る』女神様を敬っております。
清らかかつ、冷たき流れを操ることこそが魔法であり、より女神様への信仰が強く、清らかな乙女が、光の流れをもたらす、聖女となりますの。
その逆は闇ですわ。穢れ、停滞、熱き汚泥、恐ろしき渇き。
禁じられた闇の魔法に対抗できますのは、聖女の御力のみですの。
その聖女の御力が、わたくしのドレスに掛かったかのようですわ!
……今、わたくしの中には、わたくしと、サミーさんの魂がおります。
もしや、サミーさんこそが、聖女なのでは?
わたくしは、他の令嬢方を見回します。
やはり、わたくしのように、魔導盛装の、完全正装の姿の方は、おりません。
サミーさんが、聖女。
そして、やはり、わたくし達の世界で、闇の力が発現した可能性が、高いですわ……!
わたくしの魔力が、高まるのがわかります。
この力を使って、まずは周りの状況を把握しなくては。
「天空の高原レタス」
ふわっとした感覚があり、わたくしのドレスが、まるで風船のように浮かびました。
風の魔法……。わたくしには、無かった力ですわね。
そのまま、ふわふわと飛び、ラボの中をぐるりと見て回ります。
そして、おかしなことに気付きました。
本棚、薬品棚、工場に流れる水、水耕栽培。
レタス、キャベツ、ニラ、緑の野菜。
ぐるりと回って戻りました。
ここには、どこにも出入り口がないのです。
「サミーさん、ちょっと、ご相談させてくださいませ。」
わたくしは、祈るようにして手を組み、そのまま眠りの魔法を自分に向けてかけました。
……脳内会議とやらを、始めるために。
サミー…本名、佐藤雅美。
異世界といえば、名前を名乗ると隷属されちゃう!?と心配になって、適当にササミから名乗る。雹が頭にぶっ刺さって、生と死の狭間にいる。
そのため、過去の自分の世界にいる、と思っている。
ぶっ刺さってから、時間がそれなりに経過している。
いつ終わるのだろうか、と作者も心配している。