にわ!
◇◇◇
酔っ払ったアタマ、よろしくなくてよ。(お嬢様)
……なろう系小説主人公ムーブとやらを、妄想してる場合じゃないかもしれない。
なんやコレ?
うちの意識はある、ハッキリしてるけど、レタス・レディちゃんは、認識してなくない? なくなくない?
てかね、キャベツがどーのこーの言ってるからか、メンチカツ食べたくなってきた。メンチカツなら、スーパー近くのお肉屋さんのメンチ。あれ、超オススメ。あれと、スパークリング澪できゅっと飲るのが夏の醍醐味ってやつね。そういえばーさっき食べてたささみの梅肉はどこよー。
返して! うちのささみ!
返して! 上善! あとひーとーくーちー。
◆◆◆
……。ささみ、ささみとは、なんでしょうか?
先程から、わたくし、物思いに深く沈んでおりました。
けれども、なにやらざわざわと、思考を遮るように、音がするのです。
どなたかの声のような、ですが、わたくし自身の奥底から湧き上がるような。
活動的で、生きる喜びに満ち溢れているような。そっと耳を澄ませます。すると、どうでしょう。まるでわたくしの頭の中に、妖精が住んでいるかのように、はっきりと、声が聞こえたのです。
「いいえ、まだ朝ではないわ。あれはささみよ、梅肉和えの。たとえ夜だとわかっていても、高原キャベツと共に混ぜられた、豚ひき肉のメンチカツを、冷酒と一緒に飲み干すのが、週末の楽しみであったのに……。」
それは、いつか領地で一度だけ観た観劇の舞台俳優のような、悲劇的な雰囲気を漂わせた独白でした。
わたくしは、思わず、声をかけるのをためらって、そっと独白が終わるのを聞いておりました。
◇◇◇
ロミオとジュリエットのシーンにあった気がしたセリフを、週末の楽しみがいきなり変な夢の中に切り替わった悲しみを添えて〜、添えてばかりだな、と、ペラペラと喋っていた。途中から、だんだん気持ちよく舌が回ってきたから、拙者親方と申すは、と、外郎売りの口上をね、ついね、口ずさんでたの。学生時代、演劇部でねー、裏方だったんだけど、台本読みや練習は参加してたからねー。なつい。ところで、だいぶ酔っ払ってんなぁって、ふと冷静になる瞬間ってあるよね? よね? で、そこで気付いたんです、レタス・レディちゃんと、繋がってるって。
◇◆◇◆◇◆
ええと、わたくし、つまり、うちの、頭の中、脳内に、妖精が、直接ッ!、呼びかけて、いつから? 声が混ざって。
ーー暗転。
くるくるくるくる。コポコポ。
コースターはどんどん進んでいきます。
白衣の方々が、わたくしを、【水耕栽培セット】と書かれたところに、置こうとしております。
それにしても、絵本の世界で見た、巨人族でしょうか。
みなさま、とてもとても大きいのです。
それにしても。ここは違う世界にいるようです。
混乱しているのですが、わたくし、考える癖がございまして。
頭の中の妖精は、急に静かになられたわ。
あの大きな手で、掴まれてしまうのかしら。
急に怖さを感じてきました。ああ、わたくしが、繊細な貴族令嬢であったならば、失神してしまえるのに。
わたくし、まだ、意識があるようです。
ーー暗転。