36話「身支度を整えて」
(南側のエリアの宿。宿…多分俺達が最初に泊った場所だと思うんだけど)
夕暮れに近い時間に小走りで移動する少年が一人。その少年は緑色のシャツとその中に薄めた青色の全身タイツがボロボロな服装を着ている。下半身にはグレーの半ズボンを履いた服装を着た髪色が茶色寄りで短く少しツンツンして逆立っている髪型をしている輪道新太。
何の因果かイニグランベ国の城に呼ばれた新太は寿命が縮む経験をしたが、何事もなく城から帰ることが出来た。
そして今は急いで仲間の元へ向かって走り、最初に訪れた南エリアの方に目指して進む。
「それにしてもなぁ~ホントにこのまま出てよかったのかな~変なことにならなきゃいいけど」
思い返せば新太は国の偉い人に喧嘩を売ってしまった可能性がある。これが旅の途中に影響が出ないかが不安で仕方がない。
「お?」
移動している最中に見知った姿が見えてくる。この世界に同じ時期で召喚された男性。大島克己が店の前で品物を見ていた。
ウルフカットの様な髪型で金髪に染めていて、完全ラフな格好で赤いシャツと短いズボンを履いていた。
「克己さん!」
「お?新太君か。大丈夫だったのか?お城に連れてかれたのを見てたけど」
「ん~何とも言えない感じかな」
「何かハッキリしないな~」
「そういやドリオンとか他の皆は?」
「ニーナとロアンは次の旅に備えて買い出し。俺とドリオンは別れて闘技場で戦った装備の修繕。まあ結局は赤字だけどさ」
「装備か…ドリオンが3位だからまだ抑えられたんじゃないの?」
「見てないのか?ドリオンは3位決定戦は辞退したんだ。怪我があまりにも酷かったからな」
「そうだったんだ…」
「でも俺はこの戦いを通して意味があったと思いたいよ。自分の強さを知れたいい経験をしたしな」
結果を残せた訳ではないが克己は清々しい顔で笑っていた。それを見た新太は少しだけ心が救われた。
「それで新太君は次はどうするんだ?」
「今から戻って次の目的地を話し合いと思ってますけど、多分離れ離れになる感じだろうな~って」
「じゃあお互いこの城から出たらしばらく会わなさそうだな。しっかり生き残れよ?」
「そっちも元気で生き残って下さいよ」
生意気そうに返事をしてお互いは手を振って別れる。それはいつの日か成長してまた会えると信じて――。
「それでさ、アラタはあの後何があったのか聞かせてよ」
ベッドの上で枕を抱きしめながら話し掛けてくる短いデニムパンツを身につけ、紺色の上着を羽織って黄色のカチューシャを身に付けた藍色髪をしたリオという少女が新太と別れた後の話を訪ねてくる。
「やっぱ気になるぅ?」
格安の宿に戻ってきた新太は帰ってきて早々触れて欲しくない話題を持ち掛けられる。
「そりゃあ気になるでしょ?もし変な事でもしてたらって思うと今後が怖いんだもん」
(俺と同じこと思ってたんですねえ…あれ?)
気付けばもう一人の仲間。カランの姿が一向に見えない。カランの動きは大体が神出鬼没で変な企みを持っていることが多い。
「一応聞くけどカランは?」
「澄ました顔で『用があるから先に戻ってて。』だと。カランはさ何をしたくて私達に着いてくるんだろうね?」
「別に構いやしねえよ。俺らは利用しあう関係で定着してる――。でも俺はそんな関係が無くなればいいんだけど…むこうはどう思ってるかで分からないからさ。いつかは本音で言い合える関係を築ければいいかなって」
「なるほどね。それじゃあこれからの予定って考えてるの?」
「ざっくりとした感じだと…まずは装備を整えます。目的地まで向かいます。そこでなんやかんやします。終わり?」
「ノープラン過ぎるでしょ」
「だって目的地の場所の名前なんて分かんないんだもん」
パンパンと古ぼけた地図を叩く。ジト目になりながら手を差し出してリオは地図を渡せと手招きをする。
「ねえ…この地図さ。あの人から渡されたんだよね?」
「ああ。土壇場で渡されたからそんなにじっくり見てない」
「この地図。何年前のだろう?今の地図と照らし合わせても違うところがチラホラあるんだよね。古い方には島が載ってあるんだけど、今の方には載ってないし…何より大陸があって今の方にはその大陸が無い…?」
リオの知っている地図では大きく分けて3大陸。そこに離島が連なって有名な島。そうではない島。そこまではいいのだが、古い地図には海が無い部分があり陸地がある。
(これ。数十年前の話じゃない…少なくとも100年以上は前の地図だ。あの人はこんな物をどうやって手に入れたの?)
「とりあえずさ。古い方の地図に丸が3つあるんだよ。イニグランベ国から近い場所から言ってみようぜ」
「それだと、丸に囲まれている島は分からないけど…確かピーシャって街から行くのが近いのかな?」
「よし。明日か明後日準備を整えて出発しよう。今日は俺もう休みたいし」
「そうだね。あ、それで?城で何があったか聞いていい?」
「…怒らない?」
「ん~。内容によるかなっ!」
新太は目を瞑って正座をして正直に起きたことをリオに話す。
全てを打ち明けたタイミングでフードが付いたローブを着て可愛らしい容姿をしていて首までかかったピンク色の髪、そして頭部から獣耳が生えた中性的なカランという人物が取っ組み合いをしている2人に出くわす。
「ガアアアアアアッッ!?やめて下さいリオさんっ!それ以上はいけない!アームロックで俺の麗しくて勇ましい右腕が変な方向に曲がってしまいますのでえぇぇぇっ!!」
「…何があったの?」
「カ、カラン様!お助け下さいませえぇぇ!」
「あ、大丈夫よカラン。多分話を聞いたらアンタもこうするだろうし」
頭に「?」を浮かべながら小さく体を丸めている新太から話を聞く。内容を聞いたカランは冷静を装いつつ新太に近づいて。
「ガアアアアアアッッ!!」
新太の左腕をアームロックで締め上げている――。
「うぅ…痛い。痛いよお~どうしてこんな乱暴な事をするの?」
「貴方が王様に喧嘩吹っ掛けるからでしょうが!」
日付は変わり、3人は街を歩いていた。外れかかった肩を戻しつつこの先に備えて準備をするために店を探していた。
「そういえばさ、優勝賞金の券って交換したのか?」
「ああ。アラタが連れてかれた時にしておいたよ」
「お前それネコババ決めるつもりじゃあねえだろうな?」
「しないよ。てかアラタのお陰で自分の元手は取り戻せたし、全部はお前に渡す」
「え?アラタのお陰って何かしてたっけ?」
「いや俺はしてたよ?優勝した俺のお陰を忘れないで」
「あの闘技場の裏で賭博が行われていたんだよ。それで大穴狙いにお前に賭けてたって訳」
「え?じゃあお前が今まで以上に色々尽くしてくれてた理由ってさ、俺に勝って貰わないと金が戻ってこなくなるのを危惧して行動してたってことか?」
「ああ。お陰様でこの大会の賞金並みに稼がしてもらったよ」
その言葉を聞いた途端。2人は驚いていた猫みたいな表情になっていた。
「よしリオ。奴を抑えろ。俺一押しのプロレス技を掛けるから」
「了解。抑えます」
「何でこういう時だけ2人は協力関係になるんだよ!」
「うるせえっ!何楽して稼いでんだこの野郎!少しはその分け前払う権利はある筈だぞ!」
「ぎゃああああっ!?止めろ!こんな所で目立つ様な事をするな!」
街中で取っ組み合いをしていると、ワラワラと人が集まってくる。流石に囲まれたため3人は直ぐに辞めて急ぎ足でこの場を抜けようとするのだが、何故かその人だかりは着いてくる。
「な、なんで着いてくるんでしょうかねえ?」
恐る恐る着いてくる人達に尋ねてみると、『ガシッ!』と肩を掴まれる。
「貴方!大会で優勝したアラタさんですよね!装備をお探しならうちの店に!」
「いや!うちの方が品揃えがいいですよ!」
「な、なにこれ…新手の押し売り営業?」
「そ、そうか。優勝したアラタが自分の店に来ればそれだけで宣伝になる」
「それに目当てのイベントが終わっちゃってるから、欲しい物も分かってるんだ」
「俺は広告とかなんて興味ねえ!!」
『ガッ!』とリオとカランの手を掴んで集団の中を抜き去っていく。そして直ぐに裏路地に入って後ろから着いてくる人達を撒こうとする。
曲がり角に入った瞬間に上へ飛んで建物の上に登り、完全に撒いて別の裏路地に降り立つ。
「はあ…これじゃあ迂闊に見せを探せねえじゃん」
「もし全域に大会の結果が知られてたら難しいかもね」
「どうしたもんかねえ…ん?そういやここどこ?」
振り切るために走って降り立った場所は薄暗い路地裏。そこにはガラの悪い人が壁にもたれかかっていたり、座り込んでいる人もいる。
「あぁ~やばいかもここ。速く離れましょお二人さんや」
新太は2人の背中を押すようにこの場を後にしようと歩き出す。
「ねえなんかめっちゃ見て来るんだけど…!」
「あんまり目を合わせないでよリオ。まだここら辺は優勝した人の情報は届いていない筈」
トラブルに巻き込まれない様に3人はここも急いで離れる。しかし走っていると怪しげに光っているランプに照らされている扉を発見するリオ。
足を止めたリオに気付いた新太は手を引っ張ろうとするが、同じ所に視線を集めているので新太もリオの見ている視線の先を見てみると、路地裏なのに場違いなインテリアで興味をそそられる建物で、さらに見てみると看板飾ってある。
「何やってんの2人供?」
「あそこ…旅の道具を揃えてある店なんだって」
「なあカラン。こういう路地裏に構えてある店って入っても大丈夫か?」
「稀に法外な代物が置かれてたりするけど…まさかお前行く気か?」
「表は騒がれてまともに店選びがし辛い。なら目立たない場所で揃えられるなら静かに次の場所に向かえる。それにここなら色んな魔道具も置かれてる可能性もありそうだし」
「お前そんな一か八かみたいな感じで旅をしていくの?」
「いつまでもここに居残る訳にもいかないだろ?時間は待ってくれないし…あの人を待たせる訳にはいかない」
例え高額な代物だろうとどうにかやりくりしていくしかない。リオの肩を叩いて歩き扉の前に近づく。
ドアノックがぶら下がっていたため、『カンカン』と音を鳴らしてみると、『ギイィ…』と勝手に扉が開く。
やっぱり引き返そうかと思ってしまったが、カランにああ言ってしまった以上後戻りがし辛い。意を決して中に入る新太とリオは身を屈めながらヒョコヒョコ中を歩き回る。
「う~ん?あ、いらっしゃ~い」
挨拶をしてくるのは、唇にピアスを付け。髪が横になびいている様な髪型で、ノースリーブでパンクファッションの様な服装を着た人物。
「あの~もしかしてこの店の店主さん…ですか?」
「ん?そうだよ~可愛いお嬢さん」
「じゃあここって旅先に使える物とか武器とか置いてます?」
「まあ。置いてあるにあるけど…君達のような子供に使えるかどうかは分からないよ?ここは前に所有していた魔道具。いわば中古品とか扱いきれないから売られた代物ばかりが集まってるの。後はもう分かるでしょ?」
「何すかそれ…いわくつきの代物を取り扱ってるみたいな」
「呪われた奴は無いんだけどさ。まあここには魔力の燃費が悪い奴とか威力の調整がし辛い道具。まあ表の世界じゃあ手に取ってくれない色んな代物を取り扱ってるんだよねえ」
「ふーん。どう思う?カラン」
「結局こっちに聞くのかよ。言っただろ。表側には置いてない代物があるってことはそれこそ希少価値が残って、高値で売られるものなの」
「ほーん。それで?リオは気になる物とかあった?」
「うーん。私は弓を使うから置いてあればいいんだけど…探してみる」
「あれ?坊やは探さないのかい?」
「あ~俺は武器を使おうとすると壊――ぅぐ!?」
自分の置かれている状況を説明しようとした瞬間に新太の口元が手で抑えられる。
「何するんだよ!?カラン!」
「落ち着いて考えろ馬鹿!お前が武器を使った瞬間どうなるのか。そして今お前がどんな立場の人間なのか」
小さな声で注意される新太は顎に指を置いて考えてみるが、正直あまりわかっていない。
「いいか。武器が一瞬で破壊されるなんて言ったら、色んな奴らがお前に興味を持って面倒なことになる。お前はあの大会で優勝したに加えて知名度は知られてるんだ」
「あまりピンとこないけどあり得るんだろうな…この世界なら」
「どうしたのさ?急に2人でコソコソしだしてさ」
「あ~コイツは師匠から拳だけで戦っていくように言われてるらしいんですよ」
「へえ~こんな時代に凄い鍛え方をしてるね。じゃあ欲しい物は旅に使う道具とか服なのかな?」
「ここに服とか置いてあるの?あるなら見たいんだけど」
「まああるよ~中古品とか訳あり商品ぐらいしかないけど」
店主が指を指す方向にハンガーなどに掛けられた衣類コーナーがある。あちこち色んな物を見てみるが、明らかにボロボロな服やら説明文にはメリットよりデメリットが大きい物などが置いてある。
(俺の場合は能力があってもその効力は無くなるから、出来れば能力が無くそのままの素材を扱ってる物があればいいんだけど…)
眺めていると水色の上着が置かれてあり、服の外見がパーカーに似ていたため思わず手に取った。
特に目立った説明欄なんてものは無く、ただの中古品なのかと思い店主に聞いてみる。
「すいませーん。この水色の上着って訳あり商品か何かですか?」
「あーそれはね。その服に使われている絹が寒い時期に現れる蚕の繭から取った素材で作られる代物でね。風が吹けば冷たい空気が流れて暑い時期に着れば気楽に過ごせる!って品物なんだけど――。」
「へ~。夏場最高じゃん!」
「常に冷気が出てしまって体温調節が出来ない。暑い環境に居続けたら繊維が傷みやすいから直ぐに見切られて終わった商品って奴」
「長持ちしないのか~でも他に似合いそうな奴は見当たらないしな…これって一回試着してもいいですか?」
「全然大丈夫だよ~」
許可を貰って上着に袖を通してみると確かに生地はヒンヤリしてて、ずっと冷たい空気が肌に当たって着続けたら寒い。
「しっかりとフードも付いてて首回りも寒いんだけど…」
「知らないよアラタが選んで着たんだから」
「あ、そうだ。カラン俺の荷物投げてくれ」
怠そうな感じで置かれていた新太の荷物を勢いよく投げつける。驚きながら受け止めると中から取り出す物は黄色のマフラー。
この黄色のマフラー以前プロフェヴァルで出会ったホーネスから受け取った代物。それを首に巻いて少しでも寒さを軽減する。
「もうすぐで暑い時期なのにマフラーはどうなの?」
「いいんだよ別に。暑かったら脱いで調節すればいいし大事なのはこれを失くさないことだ」
いつかこの旅が終わったらホーネスにこれを返しに行く。しっかりお互いが成長した姿を見せて。
「すいませーん。この上着下さーい。あ、あと何枚かシャツとズボンぐらいは欲しいか」
「ねえ~アラター!見て見て!」
リオが呼びかけてくる声の方に振り向き見て見ると、金ぴかに光る金色のゴツゴツとした鎧を装備していた――。
「……リオさんや。まさかそれを装備して旅をしていく気じゃあないだろうな?」
「良くない?金色に光ってるから強そうだし、目立ってるから私がここに居るって分かりやすいじゃない?」
「馬鹿かぁっーー!目立つって事は敵とか魔物に居場所を教えてるようなもんじゃねえか!何でそんなズレた考えを持ってるんだよ…」
「でも魔法に補正が掛かる効果があるみたいよ。私にピッタリだと思うんだけど…どうかな?」
笑顔を見せてくる彼女に対して新太も笑顔で答える。
「うん!絶っ対ダメ」
腕を交差して『×』マークを作って否定する。その返答を聞いて新太の肩を持ってリオは新太の体を揺する。
「いいか?魔法面は何とかなるとしてもそんなゴツイ鎧着ても、お前は素早く動けないでしょ?お前のしなやかな動きを殺したら長所を活かせないだろ?だから辞めなさい」
そう説明した時にリオの体を引っ張って、もう一度商品棚の方に戻って試着室に入らせる。
「とりあえずそれ脱いで待ってろ。俺が良さそうなの持ってくるから」
「え~」
「いいから黙って外してろ!」
カーテンを勢いよく閉めて向かう先は鉄製の装備が置かれてあるコーナー。
リオの戦闘スタイルと言えば弓や魔法を使用する中・遠距離を主体とするやり方。避ける際に相手の攻撃が当たったとしても少しでもダメージを軽減出来る。身動きが取りやすい軽装備が望ましいだろう。
「さーてと。どんなのがあるのかな――。」
そうしてあれこれ悩んで選びに選び抜いて厳選した物を試着室の側に置いて着てもらう。そして数分程待っているとカーテンが開けられ新しく着替えたリオの姿が見える。
膝下まで隠す茶色のブーツ。左太腿にガーターベルトを着けている。腰周りには鉄製の防具でその上からは黄緑色の装飾品や足元まで伸びた布。両手には前腕まで隠す黒色の手袋で右腕には護るための鎧。左腕には甲の部分にカバーが付いた軽装備。
胸装備は脇とヘソ部分が見えてしまっているがその他の箇所はしっかりと肌は護られている軽装備。全体的に色合いは黄緑色で揃えて身動きが取りやすいようにさせた。
「なんか、地味じゃない?」
「いいんだよ変に目立っていないんだから。それともまだ不満かい?」
「ううん。これなら動きやすそうだし…それにせっかく選んでくれたわけだしね!」
「おお。本人が問題無さそうなら良かったよい。あとは今後使う武器は自分で選んでくれよ?」
「まあ私が使う武器なんて一つしかないよ。気になってる物があるんだ」
あの鎧を着る前にもう目星を付けていたらしい。あんな物を着こなそうとしているリオを見たため気になって新太も付いていくことにした。
「えーとね。コレ!」
持ち上げた代物はやはり弓。全体的に黒色でとげとげしい洋弓のデザイン。リムに当たる部分に赤い鉱石が埋め込まれている。しかしその弓の構造はどこかに違和感があった。よく見ると矢を射るための弦が無く、新太は心の中で(駄目だこの子…どうしよう…!)と思った。
「リオさん。悪い事は言わない。病院に行こう」
「アンタ私の事を何だと思ってるの?この弓ね説明欄を見たらさ魔力を纏わせるとね…魔力の弦が生成されるのよ!」
リオの言う通り鉱石が光ったの同時に赤い光線の様に真っ直ぐな線が生成される。
「私魔道具の弓とか初めて触ったから、凄い感動してるのよねえ~」
「でもここに置いてあるのって訳あり商品なんだよな…一応話は聞いておこうぜ」
いざ実戦の時に全く使えない武器だったらたまったものではない。一緒に持って行って店主に見せる。
「その弓は魔力で射るために作られた武器でねえ。魔力を通すと弦が生成されて魔力で作った矢や普通の矢を飛ばしたり出来る代物なの」
「説明を聞いている限りだと一見問題は無さそうに聞こえるけど、ほんとにこれは訳ありか?」
「使用者の魔力コントロールが上手くないとまともに矢を飛ばせないのよ。纏わせる魔力が強すぎる。弱すぎると不安定になって真っ直ぐ飛ばない。勢いが無い。完全に使用者が熟練者じゃないと攻撃手段にならない。だからどんどん人気が無くなって日の目を浴びなくなっていた経歴があるのよ」
「じゃあそれって上手く扱えれば、射程距離が際限なく伸びるってことでしょ?威力だって上手く調整出来れば大きな武器になるかも…」
「以外に気に入ってる……。それにするのか?」
「うん――。でもアラタはどう思う?やっぱり他の奴にした方がいいかな?」
「別にお前が気に入ったんなら俺は止めやしないけど、買ったのならちゃんと使いこなすようになってくれよ?」
「うん!任せてよ!」
「うし。じゃあ服とかこの装備買うか!」
「お~!太っ腹!」
ただ装備だけではなく、中に着るための服も何着か買っておかないとボロボロになって着る物が無くなってしまう。それと旅に必要な物もいくつか揃えて会計を終了する。
そして残った新太の残金は――。
「約…6万エル。50万あったのにこの先大丈夫なのだろうか…」
大通りに戻ってきた新太達は壁に寄りかかって空を見上げていた。予想以上に装備やら道具やらで値段が張る物ばかりで、この世界の金額を舐めていた新太は今後買う物はより一層見極めなければと思った。
「あれ?そういえばカランは買わなくてよかったの?」
「ん?君達が着せ替えしている間に色々買っていたよ。もうローブの中に入れてる」
カランのローブは神代器と呼ばれる貴重な代物で、概念すらも操れる魔道具とは一線を越えた物。カランの持つローブには様々な物を中に収納出来る利便性が高い神代器。
「もう入れてあるのか?」
「そうだよ。因みにこれはちゃんと自分の金で買った物だから」
「いや。そう言う事じゃなくて…やっぱりいいや。さあピーシャって街に向かおうか!」
「ん…ねえアラタ。なんかずっとこっちを見てくる人が居るんだけど」
「あ?なに、あれ?」
3人が目線を向けた先にはテーマパークに居そうなクマの着ぐるみ?を着た人間がこちらを見ている。
気付かれたと分かったクマの着ぐるみは3人に無言で走り、近づいてくる。
「「「うおおおおっ!?」」」
3人はその姿に驚いて逃げ始める。
「何アレ何アレ!何で俺達を追いかけてくるの?」
「知らないわよ!新手の敵だという事しか分からない!」
再び路地裏に入り狭い通路で撒こうとするのだが、着ぐるみの身体能力は意外に高く。壁を蹴って移動して先回りをしてくる。
更に別の道。別の道へと進んでいくが段々と狭くなり行き止まりの通路が多くなる。このままではいずれ距離を詰められてしまう。
またしても上へ飛び建物の屋根伝いで逃げるのだが、しっかり新太を追いかけてくる。
「あのクマ。アラタの方に反応して追いかけてきてるな。もしかしたら大会で優勝したアラタを狙いに来たのかもしれない」
「俺を?」
「また何かしたのアラタ?」
「何もした…わけじゃないけど。やっぱりここで倒した方がいいか?」
「この先の旅を安心して行きたいならやっておいた方がいいだろうね」
「せっかく買ったばっかなのに何でこんな事になるんだよ全く!追いかけられる理由?理由…」
今日この時までに起こったことを振り返ってみるのだが、大会で優勝。王様に呼ばれた。店で色んな物を買った。ことぐらいしかない。その中で違和感があったかどうかと聞かれれば身に覚えは無い。
だが。自分にとっての違和感といえばこの国の王様に呼ばれたことが一番の違和感。
「あ。あるかも…した訳じゃない。俺がされた側なんだ…あの王様しっかり根に持ってるじゃねえか!」
「えぇ?王様!?」
新太は今中に着ている緑色のシャツを走りながら脱ぐと、それを腕に巻いて新太は2人から離れ1人で大通りの方に降りて走り抜けていく。
「どうしたんだアイツ?」
「見てカラン。あの着ぐるみアラタを追いかけてるけど、常に一定の距離を保って走ってる」
「完全に追跡用に仕向けられてるってことか。それに中の服を脱いでいたから何かに気付いたんだろうけど。見失わない様に先回りしよう」
リオとカランも新太の動向を見つつ移動を開始する。新太は自身の身に何が起きたのか…そしてこの刺客を送り込んできたのは本当にこの国の王なのか。
新太は歯を食いしばりながら駆け出していく――。
どうもオオモリユウスケです。約2か月出来なくてすみませんでした。リアルが…ね?
今回は次の目的地のための前準備の回になります。時間が掛かってしまった理由の一つにキャラの装備のデザインを決めることに時間を費やしてしまいました。鎧などのデザインを参考にしたのは主にモンハンなどのゲームから決めてこのキャラに合うな。みたいな感じです。
次回はまたすぐに投稿できるように時間を見つけて行きたい…それではまた次回お会いしましょう!




