#08 馬鹿な高校生⑦
暇潰しをしようとした。でも、何もない。住宅街だ。住宅しかない。まあ、コンクリートとか、アスファルトとか、アスファルトとかアスファルトとか。そんなものはある。でも、腰を降ろして、ゆっくりできる場所がなさそうだ。無断でドアを開けても、許されるタイプの建物。いわゆる、お店系がまったくない。だから、漕いだ。[足が棒になるまで進めばナントカカントカ]みたいな、ことわざがあった気がする。だから、漕いだ。
喫茶店があった。切っ先みたいな、鋭いものは何もない。なめらかなフォルムだ。ただただ、漕いできて良かった。ここで、暇潰しをすることにした。ちなみに、自分事なのだが、『暇』という漢字は、横から押し倒すように潰せば、キレイに潰れそうだ。ずっと、ボーッと漕いでいた。 だから、ここの前にも、カフェや喫茶があったかもしれない。さっき喫茶あったか?さっき喫茶あったか?さっき喫茶あったか?と、ずっと考えていた。
メモしたものを、まとめることにした。よく分からないものも多い。『美味しさは体調による』『テレビはなんで、ほぼブラックなんだよ』『つかれたつかれたつーかれた』とか、いっぱいあった。これらはどっちだ。チャリ漕ぎ中に、男子高校生が言った独り言なのか。それとも、僕の脳で育った言葉なのか。分からなくなった。
途中の休憩で、頭に詰め込んだものを、一気に書きなぐった。スマホに落とし込んだ。だから、僕の個人的思考も、流れ出てしまったに違いない。まだ、色々書いてあった。曲を聞いて、その歌詞が心に響かないことは、今までたくさんあった。まあ、それしかなかったのだが。何でなのかを考えたとき、メロディ一が脳に染み込みすぎる。歌詞は、水を弾くように落ちてゆく。みたいなものかもしれないと思った。歌詞の詞だけを単体で見た方が、カラダに入ってきやすかった。と書いてあった。これは、男子高校生のヤツだ。
いや、分からない。これはどっちだ。僕の心の声を、メモしていたのかな。まあ、どっちでもいい。今は、僕が今している、職業の存在意義を考えてしまっている。考える、という言葉を国語辞典で調べて、出てきた言葉。その条件に到達するほどは、考えていないと思う。でも、考えずにはいられなかった。珈琲を飲んだ。珈琲という漢字は、なんかいい感じ。そう思った。
帰り道も、同じことをしたい。なんか、自転車で追いかけてなんか、独り言聞いてなんか、覚えてメモって、それでなんか、色々したい。でもコーヒーで、お腹を壊した。コーヒーが、体に合わなかった。知っていた。知っていたけど、喫茶のコーヒーが、特別なコーヒーならな。そんな望みを抱きすぎた。コーヒーの種類は違えど、コーヒーの成分は変わらないのだ。スキージャンプよりも前傾姿勢で、トイレに向かっていた。
このままでは、仕事が出来ない。またまた、ピンチを迎えた。この仕事は、大変なことばかり起きる。トイレに、小一時間いた。それ以上、いたかもしれない。席に戻ると電話が鳴った。自主的ではなく、たぶん外部からの依頼で鳴った。妹さんだった。男子高校生の妹さんだった。かなり喋っている。お喋りな、あのタレントさんと、同じくらい喋っている。妹さんの方が、あきらかに需要がある。記録する需要がある。でも、大変度からいくと、兄の方で良かったなと、心から思った。