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#04 馬鹿な高校生③

 依頼者の高校生は、馬鹿。そう思い始めた。今、思い始めたといえば、嘘になる。だいぶ前から、馬鹿だろうなと思っていた。馬鹿という漢字が、読めないほどの、馬鹿だと思っていた。こちらも、馬鹿にしている訳ではない。愛らしく、感じているのだ。スマホは、壊れた時のため、二台用意した。右ポッケにひとつ。左ポッケにもうひとつ。ヤバイ。ヤバイヤバイ。ポッケって言葉が、気持ち悪く感じてきた。ポッケ響き嫌悪症かもしれない。ポッケ響き嫌悪症だ。まあ、そんなもの知らないけど。


 着いた。ついに、着いた。ついつい鼻歌を、歌ってしまっている。楽しくなくても、鼻歌うたうタイプだ。ついつい、【ついつい】言ってしまった。ついつい、【ついついついつい】言ってしまう。それは、昨日から陥っている、事柄である。立派な家だ。門がある。そこに立って、家の一番上を見ようとすると、腰が痛くなる。そんくらいの、高さだ。『ピンポン。ピンポンピンポン』チャイムを鳴らした。


 親が出てきた。若い親だ。母親の方だ。その若い親を、朝日が照らす。

「依頼を承けたものです」

「えっ。どなたですか?」

「記録屋です。息子さんからの依頼でして」

「記録屋? 何ですかそれ?」

 朝早いのに、夜遅い感じで話してきた。夜の落ち着きが身に付いている、母親だった。話は、聞いていなかったらしい。


 聞いていなかったといえば、僕は、校長先生の話を、毎回聞いていなかった。校長が今まで、何を話されたのかを聞かれても、答えられない。答えられる訳がない。だって、一回の話のなかに、『ねっ』という言葉を、100個以上入れてくる校長先生だったから。そんなことは、いい。そんなことは、どうでもいいとして。記録屋のことが、親に伝わっていない。高校生男子は、言っていなかったんだ。


 今の時代に、合っていないのかもしれない。ただ記録するだけなんて。記録するだけなら、誰でも出来るから。初日からつまずいた。チワワだけが、なぜな懐いている。玄関にさっき来たのだが、飼い主より懐いている。僕は記録屋だけど、記録するのは、チワワでも出来そうだ。って出来るかよ。ペンは持てないし、スマホを正確にタッチ出来ないだろう。ちなみに、チワワさんのことをスマホで、チクワって打ってしまったことがある。無意識のうちに。それは、申し訳なかったと思っている。


 チラシを渡した。親に、サービス内容が記された冊子も、渡した。親は、納得してくれた。チワワがずっと足元で、しっぽを振っている。ずっとずっと、しっぽを振って振って、振りまくっている。チラシを渡した後の僕の、集中力を散らしてゆくように。

「この冊子読んだけど、いいサービスだね。息子が頼んだんだね。どうぞ。入って入って」

 察しがいい。冊子を読んで、素直に受け入れてくれた。


 母親も、チワワさんも、落ち着いた感じだった。上品な感じだった。ゆったり、記録屋をできると思った。長く長く歩いて、ようやくリビングに着いた。でも、男子高校生は、バタバタしていた。忙しなく動いていた。朝はバタバタタイプだった。朝バタタイプは、記録しにくい。バタバタしているのに、一言も独り言を言わないタイプだ。もちろん、普通の言葉も発しなかった。スマホは、ずっとずっと、何も打つことがなかった。

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