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#18 カリスマブロガー⑦

 象の鼻に乗るパントマイムを、ずっとやっている。依頼者さんは、かなり想像力が豊かなのか。どこかで、披露するための練習か。その二択だろう。どこかで披露するためにやっていても、こんなに長くやっていたら、どこかで疲労するだろう。こっちも、かなり疲労がたまっている。長い時間のなかで、言葉を拾う仕事だから。少しツラいけど、これで依頼者のヒーローになれれば、それでいい。韻踏んじゃった。


 像になりたいと、ほんの少しは思っている。動物ではない方の、ゾウだ。硬い方のゾウだ。会社とか会社とか会社とか。会社とかにある、あのゾウだ。まあ、動物のゾウの足の裏なんかは、硬そうだけど。会社に、動物のゾウがいないとも、言い切れないけど。まあ、うまいこといけば、銅像になれるのが人生だ。しかし、そんなうまくはいかない。もし僕に、銅像になる案が挙がったとしても。どうぞー!と言ってくれる人は、誰もいなそうだ。絶対いない。自分で作るのも、なんか違う。


 銅像じゃなくてもいい。プラスチックでも、何でもいい。ロウ人形でも、ワラ人形でも、何でもいい。灰色のやっすい素材で、作ってもらってかまわない。ゾウだけに。とにかく、像なら何でもいい。依頼者に、少ししか動きがない。言葉がない。近くに僕がいるのに、気にする素振りもない。だから、こうやって言葉遊びが、盛んに出来ている。『ドウブツ言葉アソビ』という、未来装丁案まで、出てきてしまった。もうダメかもしれない。これでは、仕事に集中できない。


 そうだ。ゾウの鼻で、ビンタしてもらえばいいんだ。そうすれば、気合いが入りそうだ。でも、同時にヒビも入りそうだ。骨のヒビのことを考えていたら、日々のことがフラッシュバックしてきた。そして、ゾウに闘魂を注入してもらわず、普通に行こうと決めた。自ら、気合いを入れるしかない。依頼者は、ピタリと直立したまま動かなくなった。まさに、銅像みたいだった。銅像だった。


 言葉は宝物です、私は空気です。それを、決め言葉にしていた。それを、この依頼者にも、吹き込んだ。吹き込んだというか、普通に言った。だから、なのかもしれない。僕が空気だ、という情報が、脳の隙間に入り込んだのだろう。だから、ほとんど喋らなくなった。そうかもしれない。僕も、変な感じになっていた。でも、もう大丈夫だ。そんな気がする。僕を今、正気に戻してくれたのは、ゾウかもしれない。ゾウ? そうかもしれない。


 思い出したかのように、馴れ馴れしく話し掛けてきた。依頼者が、普通に話し掛けてきた。

「ゾウの鼻には、骨がないらしいですよ」

「そうなんですね」

「知らないんですけどね」

「えっ、どういうことですか?」

「賭けに出たんですよ。5割ですから」

「そうですか」

 依頼者は、使える情報の無さに、震えていたのだろう。初めに会った時よりも、弱々しい印象だった。ゾウが全力で鼻から息を吹けば、飛んでいってしまう。それほどに。


 依頼者が、丁寧になっていた。丁寧の【寧】の真ん中あたりの線を、曖昧にしてしまうような人。というような印象だった。でも今は、心の部分も、下の横たわった目の部分も。しっかり書きそうだと思っている。今は、一週間あるうちの、まだ一日目だ。その一日目の、残り時間はまだある。この仕事に、違和感を感じてしまった。改善の余地がある。一日限定にするとかしないと、気持ちが持たない。心が持たない。家に帰ったら、コアラやナマケモノや、ハシビロコウみたいにする。ソファから、一歩も動かないぞ。怠けるぞ。

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