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#15 カリスマブロガー④

 記録の流れなんて、決めなくていい。とにかく、言ったらメモ、言ったらメモの精神だ。そう思った。そう思ってしまった。そう思ってしまったけど。決めなかったら決めなかったで、なんで決めなかったのか。そう、思うかもしれないし。でも、決めたら決めたで、決めたことが無駄だったな、と思うかもしれなくて。もう、どうでもよくなった。もう、どうでもよくなった。


 トイレから、依頼者が帰ってきた。「ただいま」と、小2の帰宅時みたいに戻ってきた。だから、小2の子の親みたいに、落ち着きを全面に出しながら「お帰りなさい」と言った。それを、メモしてメモして、メモした。今は、スマホのメモ帳にメモをしているが、少しおかしくなってきた。なんか、変になってきた。メモ帳という文字が、常に画面の上の方にある。その文字を見ていたら、メモという二文字が、未知の記号に見えてきた。


 最近はたまにある。今まで、何十年使い続けてきた文字が、急に異形に感じることが。[何十年]という言葉の『十』も、変に見えている。デジタル文字として、入力して気づいた。少し、横棒が上にある。ド中心で交わっている、完全なる交差点タイプかと思っていた。でも、違った。飛行機タイプだった。『十』という漢字は、上から見た飛行機だった。


 依頼者は、どんなネタも逃したくない人だ。歩いている今も、そんな会話をしている。名前が、全部半濁音の女性は、ネタ命らしい。けど、『ネタ逃したくないよ』という無駄な言葉が、四割を占めてる。ネタ逃したくないよ、と何回メモしただろうか。『ね』と入力すると、予測変換にもう『ネタ逃したくない』が現れる。一番左の一番上に、現れる。だから、楽で楽で仕方ない。


 動物園に着いた。気付いたら、架空ハリウッド女優のカリス・マブロガーのプロフィールを、ぴぴぷぷさんに重ねていた。若手イケメンラッパーが彼氏。役のため一ヶ月20キロ増。慈善活動に積極的に参加。まあ、イメージはある。でも、実際のぴぴぷぷさんは、そんなことないだろう。慈善活動は、していそうだが。動物園の外で、最後に言った言葉は『ネタ逃したくないよ』だった。そして、動物園の中で、最初に言った言葉は『ネタ逃したくないし』だった。


 『ね』と出せば『ネタ逃したくない』が出る。簡単すぎる。全然目立っていない。僕のタイピングスキルが、全然役に立っていない。こんなんじゃ、誰でも出来てしまう。このままでは、予測変換に、スタンディングオベーションしなくてはならなくなる。依頼者さんは、普通にキリンを見ている。普通の休日といったところか。たぶん、いつもと変わらず、依頼者は過ごしてくれているだろう。


 めちゃくちゃ喋ってる。夜の通販に出てきて、かなり早口になってゆく。あの人みたいに。あの人みたいに早口だ。本当のぴぴぷぷさんのことが、少しだけ見えた気がした。少しだけ分かった気がした。動物が好きなのだろう。たくさん急に、喋り始めた。メモする量が、急に増えていった。でも、ツラくは感じなかった。前回の特殊な依頼が、対応力を生んだんだ。キリンに、メモを覗かれた気がする。でも、なんの問題もない。だって、ほぼ『ネタ逃したくない』しか書いていないから。

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