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#14 カリスマブロガー③

 密着取材形式で、ぽぽぺぺさんの言葉の記録を取ることになった。そうなった。そうなったんだ。そうなったと思う。そうなったと思いたい。そうなったのは確実だから、思いたいとかじゃない。ぽぽぺぺか? ぽぽぺぺ、じゃない気がする。もっと、パンチのある名前だったと思う。ぱ行だったことは、確実だから。だから、どれにせよパンチがあるか。パンチ集団のなかだから、どれでも激烈パンチだ。ぴぴぷぷだった。絶対そうだ。思い出せた。


「初めまして、ぴぴぷぷです」

「記録屋黒木です」

「よろしくお願いします」

「はい」

 普通の女性だ。普通の基準は、人それぞれなのだが。僕が変だと思っている人が、普通だったり。変だと思っていない人が、普通だったりする。それを言うなら、『僕が変だと思っている人が、普通だったり。変だと思っていない人が、変だったりする』が普通だろう。という人がいるだろう。普通が分からないし。今、何を言っているか、自分でも分からない。


 一般の、20代の女性を描きなさい。そう言われたら、一番描かれそうなタイプの女性だ。それが、普通ということだ。普通という言い方が、良くなかったのかもしれない。一般的や、統計学上のなんちゃら、みたいに言った方が良かった。そう思っている。依頼者のブロガー名からして、目のチカチカの心配をしていた。目チカチカの免疫を高めてから、ここに来た。でも、ショッキングピンクじゃなかった。パステルカラーガールでもなかった。ただの黒ずくめガールだった。


 ぴぴぷぷさんという名前だから、ポップ系だと思ってしまった。それは、謝らなければならない。黒ずくめという言葉から、変な想像をしていた。でっかい樽で、黒酢を作っている人が、黒酢をくめ!と誰かに言っている場面が、頭に浮かんだ。

「これから、動物園に行きます」

「分かりました」

 これから、動物園に行きます、という言葉も、きちんとメモした。想像や妄想をしていても、耳は聞いている。


「言葉は宝物です。僕は空気です。だから、言葉を記録することに、専念させていただきます」

 定型文のなかの定型文。それを、垂れ流した。垂れ流したじゃない。投げ放ったかな。憧れていたやつ。ドラマとかで、かっこよく決めるやつ。流行語の賞とかで、ベストテンとかに入るやつ。なんか、やりたくなるよね。

「なんでよなんでよ。いいじゃんいいじゃん。ナチュラルに過ごすから。会話のキャッチボールしようよ」

 チャラかった。名前通りの思考回路だった。キャッチボール例えを、する人間だった。野球例え人間、かもしれない。


「トイレに行ってくるから、ちょっと待っていてね」

「分かりました」

 その言葉も、すべてスマホに打ち込んだ。流石にトイレまで付いていったら、変態の向こう側だ。女子トイレ付近で、スマホをいじっていては駄目だ。だから、離れた。女子トイレ付近での、スマホ使用はもう、変態のこっち側だ。満員電車とトイレ付近では、手をあけておけ。それが、父の教えだった。昔、夢の中に出てきた第9の父の、大事な教えだ。


 依頼者のカリスマブロガーが、トイレに行っている間。その間に、記録する流れのイメージをしようとした。でも、ハリウッド女優カリス・マブロガーという、脳内だけにいるキャラクター。そのキャラクターの個性を広げていく作業を、気付いたらしていた。若手イケメンラッパーが、彼氏だ。役のために、一ヶ月で20キロ太った。慈善活動に、積極的に参加している。そんな感じだろう。気づいたら、スマホのぴぴぷぷさん言葉記録メモに、ハリウッド女優カリス・マブロガーのプロフィールや経歴をバンバン書いていた。

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