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#10 馬鹿な高校生⑨

 また、始まってしまった。一時間以上の、自転車の長旅が。記憶力を発揮する場所が。記憶力があるのは、かなり嬉しい。木置く力とかいて、キオクリョクと読むやつなら、いらない。本当にいらない。覚える力の方で、よかった。木を置いても、特にすごいとは思われないから。でも、石をバランスよく積み上げるヤツがある。ロックバランシングだ。それみたく、木を積み上げるやつの力なら、欲しい。ちょっと、欲しい。


 ここには、美女ばかりだ。可愛い人が、一緒に下校している。気を取られては、駄目だ。木を取られたら、木バランシングが出来なくなる。そっちの木じゃないよ。気の方だよ。ひとりでボケて、ひとり突っ込んでいた。可愛い人がいるけど、タイプすぎて、自転車から落ちないようにしないといけない。下が、硬そうなコンクリートだから。コンクリートか。それとも、コーンクリートなのか。


 男子高校生の高校の、校歌を口ずさんでいた。【♪広い世界のその中で 楽しく楽しく過ごそうよ 敵などまわりにはいないよ 敵はすべてこの胸のなかに】みたいな歌詞だった。すべて、覚えてしまっていた。男子高校生が、自転車で何回も、口ずさんでいたから。今も男子高校生の、独り言は止まらない。色々考えていても、独り言は記憶できるものだ。


 硬貨を口でなめなめした。という言葉が、頭に現れてしまった。これはいけない。硬貨を口でなめなめじゃない、校歌を口ずさみの方だ。これは、しっかりしないといけない。今度は、コーンクリームスープが頭にいる。なんでだ。飲みたくなってしまったのか。すぐに理由はわかった。あのときの、コンクリートだ。コーンクリート論争を、ひとりでやったときのヤツだ。


 記録屋黒木って、名前にしたよな。そこの記憶が、あいまいになってる。他の名前にしたかもと、少し思ってしまった。クロキではなくクロギだけど、みんな分かってくれてるよね。男子高校生の独り言を、今はずっと記憶している。耳がかなりよくなった。というか、耳が元から良かったのか。分からないが、とにかく良く聞こえる。幽霊の声まで聞こえそうなほどに。


 コンビニに寄って、そこで男子高校生の独り言の記憶をメモした。スマホにメモするスピードも、速くなった気がする。今日の夕飯はなんだろう、とか言ってた。今日は動画をたくさん見るぞ、とか言ってた。しょうもないものばかりだ。でも、男子高校生らしくてなんか、ぴっこりした。ぴっこりではない。ぽっこりか。ぽっこりでもないか。そうか、ほっこりだ。僕は男子高校生に、ほっこりしたのだ。


 ついに着いた。ついに着いた。ついに着いた。ついに着いたことが嬉しくて、ついに着いたって、何回も脳内で叫んでしまった。なんか僕にとっては、いい経験になる仕事だ。色々気づけた仕事だ。記憶力や耳の良さに、気付けたのは良かった。そのあと、男子高校生へ、文章データにして、一日分のメモを送った。かなり喜んでくれた。感謝の言葉が山ほど、送られてきた。

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