失恋生活四十五日目
実を申せばミケは宇宙猫、子供だった私がなんとか星雲でスキップしていた時に段ボールに捨てられているミケを発見したのが出会いだった。
私は気を失いながらミケとの出会いを思い出していた。
『シャー!!』
『え? 拾って欲しいの?』
『シャーーー!!』
『コレがアナタの説明書ですって? 読んでって言われても……、ふむふむ、キャットフードは一週間に一度必ず与えましょう。じゃないとこの子は宇宙を滅ぼしちゃうので……、マジで? でも確かに気性が荒いわね』
『シャシャーーーー!!』
『ちょ、ちょっと!! 私のアホ毛は危ないから触っちゃダメ!! 猫じゃらしじゃないんだってば、スタンガン機能が備わっているから感電……』
『シャーーーーー!? にゃにゃーーーーー!!』
『しちゃった……。もう、言わんこっちゃない、大丈夫?』
『にゃー』
『アハハ、くすぐったいってばー。舐めないでよー』
うーん、スタンガンを使って素行を矯正してあげたのにミケは昔のヤンチャを取り戻してしまった。
私とミケは地球の十倍の重力がある星で修行をした、一度死んでそこに住む『お尻がかいーおー』と呟く親父ギャグ好きな偉い人に修行をつけて貰ったアンデット仲間。
適当なボールを七つ集めて生き返ってるからもう生き返れないのよねー。
どうしよう?
そうやって私は腕を組んでウンウンと唸り出した。この状況をなんとかすべく色々と案を出してみよう。
その一、ミケを一度殺してから生き返らせる。
却下ね、そのためには宇宙のどこかで本場の適当なボールを七つ集めなくてはいけない。ミケは一度生き返ってるから適当なボールでは生き返れないのだ。
そうなると適当なボールの元祖とも言える惑星を探さないといけない。
そのためには宇宙の帝王と呼ばれる宇宙人と戦わないといけないから却下ね。
そのニ、ミケを敢えてこのままにする。
却下ね、だってほら……。
「シャーーーーーーー!!」
ちゅどーーーーーーー……ん!!
ミケが口からエネルギー弾を放って地形を変えちゃった。もはや一軒家が見る影もなく崩壊しかかっている。そして巨大化したモテルパパと組み合うミケ。
それこそプロレスの試合の如くガッツリと組み合う。
「むんむんむーん!!」
「シャーーーーー!!」
そして一旦距離を取ってモテルパパは光線でミケを攻撃していた。
モテルパパが腕を十字にして出した宇宙光線をミケは最も簡単に跳ねのけてるわ。昔読んだミケの説明書通りに宇宙を滅ぼしそうな勢いね。
となるとやっぱりその三ね。
モテルパパの提案通り尻尾を切り落としてミケの巨大化を解いてからキャットフードを与える。これしかないか……。
でも暴れまくってるミケにどうやって尻尾を切るって話よ。寧ろ逆の方がいいんじゃないの?
ふむ、意外と名案かも。
私は床に座って数本アホ毛を脱着させて、ソレらを組み立てていく。するとそんな私の作業が気になったのか、ヒョコッとモテルくんが私の手元を覗き込みながら話しかけてきた。
いやーん、フラれたからって宇宙市一番のイケメンと会話しちゃったー。ここは名誉挽回でカッコいいところをモテルくんに見て貰う絶好の機会じゃん。
「鯖井さんはアホ毛で何を作ってるの?」
「ふふふ、私のアホ毛はドローンにもなるのよ。コイツでミケの口にキャットフードを運ぶの」
「でもコントローラーが無いんじゃないの?」
「ふっふっふ、それも既に解決ず・み。天気予報氏はまゆ毛の・ず・み」
私が鞄をゴソゴソと漁ると中からドローンの充電器とコントローラーが出てきた。勿論充電には馬理衣作の自家発電機も欠かせかい。
私が道具を取り出すついでに鞄から出るは出るは。
ヘリコプターでしょ? ヨットでしょ? 簡易シャワールームでしょ? それに簡易キッチンに簡易竈門、……あれ? 出てくるもの全てが私の無人島での努力を否定してる気がするするんだけど。
まあいいか。
てへぺろ。
私はモテルくんと話せた嬉しさからフンフンと鼻歌混じりに充電作業の準備に取り掛かった。するとアホ毛ドローンは見る見るうちに充電がチャージされていく。
そしてその後ろではミケとモテルパパが相変わらず死闘を繰り広げていた。
そんな状況でモテルパパの実の息子であるモテルくんは恐ろしい言葉を口にしてきた。私はその言葉を耳にして驚きのあまり鼻水を垂らしながらすごい速度で彼に視線を向けてしまった。
「鯖井さん、もしかして親父ってオナラした? なんか鯖井さんよりキツい匂いがするけど」
「うぐっ!! ……さっきすっごいのしたけど、どうして?」
「親父のオナラって猛毒なんだよね。フグの毒なんて可愛いと思えるくらいの」
「……ほげ?」
「だから、はい。ガスマスク渡しとくよ」
モテルくんは爽やかな顔付きでアホヅラを晒す私にガスマスクを手渡してきた。だけどモテルくんはマクスを装着しようとする素振りを見せない。
どうして?
「……モテルくんは……マスクしないの? シュコー……」
「俺はオナラの中で生まれたから生まれながらに免疫を持ってるんだよー。はっはっはー」
はっはっはー、じゃなーーーーーい!!
モテルくんはとんでもな事実をサラッと口にして配達にと持ってきてくれたキャットフードを私に渡してくれた。私はポカーンと言った表情のまま数秒間ほどその場から動けなくなってしまった。
私は涙を堪えながらドローンの操作を開始するのだった。
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