失恋生活三十九日目
チュドーン、チュドドーン!!
私のアホ毛ビットが縦横無尽に一軒家を飛び交う。
「ファーーーーーーーー!?」
「レレレーーーーーーー!?」
マンモスとティラノサウルスは泣きながら頭を抱えて必死に逃げる。ドシドシと足音を立ててアホ毛ビットから逃げ回る。
ティラノサウルスは兎も角として、マンモスが二足歩行してるのは凄いわね。
慌て出したティラノサウルスの姿をチャンスと見たのかミケが、ブンブンと斬鉄剣を振り回す。
「にゃにゃーーーーー!!」
おお!! ミケがティラノサウルスの尻尾をなます斬りにしていく。なるほど、ティラノサウルスの尻尾でマンガ肉の悲願を達成しようというのね!?
私がキラリと涙をこぼしてミケに親指を立てる。
ミケもそんな私に親指を返す。感動の一瞬、私はミケのファインプレーに思わず感動してしまった。
そして同時にショックを受けて体を硬直させてしまった。
ミケが折角切り落としたマンガ肉がドバドバと床に落ちていく……、そうです、ヌタウナギの粘液まみれの床に私の夢が転がっていく。
「ノーーーーーーーー!! マンガ肉がーーーーーーーー、私の夢がーーーーー!!」
ミケも何してくれてるのよ。私も思わずショックのあまりヌルヌルに粘液の上で膝を突きかけたじゃん。
そして私は完全に忘れていた、ミケがヌルヌルやニュルニュルに強いと言うことに。ミケは「にゃー」と一仕事を終えた後のように満面の笑みで額の汗を拭って粘液まみれになったマンガ肉を拾う。
そして……私に向かって……これまた素敵な笑顔でその肉を……差し出して来た。
「波ッ!!」
「にゃにゃーー!? にゃーにゃにゃーーーー!!」
あまりの拒絶反応に私は咄嗟にミケに向かってエネルギー弾を放っていた。ミケも咄嗟の出来事に一応回避するもプンプンと怒りだす。
そしてミケは肉を手から離して「にゃー……」と呟きながら腰を落とし腕を不規則に動かす。ミケの後ろに羽の生えたお馬さんが見える?
そうだった。忘れていた、ミケは古代ギリシャをモチーフにした漫画の世界に異世界転移した経験を持った猫だった。
ガシャンガシャン!!
ミケの全身にどこからともなく現れた鎧が装着していく。そして全ての鎧が装着しきるとミケはカッコつけているのかポーズを取った。
ミケは完全に悦に入ったようで「にゃー……」と声を漏らしながら集中力を高めていった。
それと同時にミケのちっちゃい宇宙が高まっていく。そしてそのちっちゃい宇宙が極限まで高まりを見せると、ミケはマッハの肉球パンチを私に向かって放ってきた。
「にゃにゃにゃにゃ、にゃーにゃーにゃにゃ!!」
またしても猫の鳴き声が伏字となってくれました。
そうです、『アレ』です。
中学生たちが学業を疎かにしてまで世界各国でギリシャ神話をモチーフにした戦士の修行をするアレ。金とか銀とか銅とか、銅の戦士の少年の代名詞とも言える必殺の『アレ』です。
「良い度胸ね、ミケ!! 私のアホ毛ビットはすでに展開されてるのよ!!」
「にゃにゃにゃーーー!!」
ミケは「俺は昔、女神様を助けるために黄金の戦士と戦った経験があるんだにゃ!!」と言ってます。ミケも今回は気合が入ってるじゃん。
あれ? あれれ?
私はアホ毛ビットを展開しつつミケのマッハ肉球をガードしている。つまりミケの拳圧に耐えている訳です。
そして床一面にはヌタウナギのヌルヌル粘液が広がっている。
え、嘘!? ミケの勢いに負けて粘液で滑り出しちゃった? ミケは? ミケだって私のアホ毛ビットの攻撃をガードしてる筈じゃん。
ミケだってヌルヌルの上で踏ん張ってる筈でしょ?
「にゃ」
「肉球でヌルヌルを踏ん張ってるーーーーーー!?」
ミケは不敵な様子でニヤッと笑みを浮かばせながら狙い通りと言わんばかりに私の方を見ていた。
……何ですって? これもミケにとっては計算のうちだって言うの!?
「にゃにゃーーーーー!!」
「食べ物は大切にしろって言われたって!! って、ギャーーーーーー!! 勢いに負けて後ろに滑っちゃうーーーーーーー!?」
私はミケのものすご勢い拳圧に負けてヌルヌル粘液の上を滑っていった。そしてこのまま進めば後方にはヌタウナギとミミズの大群がいる。
オワタ、私は完全に終わった。
このまま行けば私は間違いなくヌルヌルのニュルニュルまみれ。私はどうしようも無い状況に全てを出し切って灰になったキュピーンタイプの如く呟いた。
「大きなヌルヌルが付いたり消えたりしている……。はは、ニュルニュルかなあ? 違うなあ、ニュルニュルはもっとバアッて動くもんなあ。ヌルヌルするなあ、ここ出られないのかな?」
もはや諦めた。
そんな時だった。
ガシッ!!
「ギャーーーーーーー!!」
後方に滑る私を抱き止める腕の感触を覚えたのだ。抱きかかえてくれる腕がテカテカするなあ、凄く不快感を覚えるの。
だってこの部屋で私を抱き止められる腕なんてミケ以外にはあの人しかいないじゃん。
「むんむんむーん!!」
いつの間にか後方に移動していたモテルパパが私を受け止めたのだ。当然だけどモテルパパは絶賛感電中な訳で。そうなったら私だって一緒に感電してしまう。
つまり私の悲鳴の意味はソレです。
勿論葉っぱ一枚のモテルパパへの拒絶の意味もあるけど。
すごくビリビリするんだけど、モテルパパから高圧電流が伝わってくる。私は「むんむん?」と言いながら首を傾げるモテルパパに操られるように感電しながら白骨を晒して強制的に色々なポーズを取っていた。
モテルパパは敵でしょうが!!
どうして感電しながらモテルパパと社交ダンスをしないといけないのよ!!
「にゃー……」
そんな私にミケは「ばっちい」と呟いた。
全部アンタのせいでしょがーーーーーーーー!!
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